戦後の東京を舞台に米軍崩れのマフィアの暗躍を描いた作品で、ハリー・クライナーが脚本を書き、サミュエル・フラーが監督したアクション映画。撮影はジョー・マクドナルド。
主演はロバート・スタック、ロバート・ライアン、共演はシャーリー・ヤマグチ(山口淑子)、キャメロン・ミッチェル、ブラッド・デクスター、早川雪洲。カラーのシネスコ映画。
あらすじ
富士山麓でアメリカさながらの列車強盗事件が起こり、アメリカ軍の小火器が 奪われ、日本の乗務員と米軍軍曹が殺される。東京警視庁のキタ警部は、アメリカMPのハンスン大尉と捜査に乗り出す。
数日後、強盗団のうちウェッバーが撃たれて死ぬ。ハンスン大尉は所持品からスパニアという男の手紙を発見する。やがて東京に来るらしい。またナゴヤ・マリコという女とウェッバーと秘密結婚しているらしい。
来日したスパニアはマリコに会い、ウェッバーが殺されたことを知る。ハンスン大尉の頼みでスパイとして、スパニアはサンディの組織するギャングの仲間入りをした。そのときにサンディから傷ついた仲間をが邪魔になるので殺すと聞く。
ギャングが東京湾工場を給与を強奪した際、スパニアが偽名でMPであることをマリコに教え、ハンスン大尉への連絡を頼む。
サンディたちは銀行の現金輸送車を襲う計画をたてるがマリコが事前にMPへ知らせる。日本の警察が動いているのを察知して、サンディは計画を断念する。
サンディは密告者が計画から外したグリフに違いないと思い込み、彼を消してしまう。
ところが警察側の内通者によりスパイがスパニアであったことがバレてしまう。
サンディは急遽、立案中の真珠強奪作戦を実行するが、それはスパニアに対する罠だった。
スパニアは真珠店で捕らえられ、銃撃戦の最中に警察のの手で始末される手筈だった。
しかしチャーリーが手間取って警官隊に射殺され、サンディは屋上の遊園地に逃げ込むが、スパニアに撃たれて死ぬ。
雑感
ウィリアム・ケイリー監督の1948年フィルム・ノワール「情無用の街」を日本に舞台を移してのリメイク版。
1955年時点で日本にいた民間アメリカ人は多かったが、大体が貿易商でありギャングだったわけではない。
スタジオ収録はアメリカ、ロケは日本の名所で行ったので、室内シーンと屋外シーンの雰囲気が違う。
室内シーンは古代中国の竹文化と日本が入り交じっている。俳優も日系俳優を使っているせいで、日本語が多少下手だ。
米国俳優らが、あぐらを掛けないため椅子を使うのだが、中国のようなきちんとした椅子ではなく、日本サイズの小型椅子を使っている点は笑えた。
この手の映画で、勘違い度は比較的少ない方だと思う。これ以上日本を正しく描写するためには日本人監督を使って「トラトラトラ」のように日米合作にしないと無理だ。
冒頭の富士山麓での列車強盗シーンは、富士山麓電鉄(現富士急行)でのロケ。1955年2月の三日間、外務省、運輸省の要請で、運休して貸切で撮影を行なったそうだ。しかも当時の富士山麓電鉄はその名の通り電気鉄道であり蒸気機関車は走っていなかった。そこで国鉄からわざわざ蒸気機関車を借りてきて走らせた。色々批判があったそうである。でもインバウンドの宣伝になって良かったと思う。
企画段階では、ゲイリー・クーパーが主演スパニエ役に当てられていたが、ロケ中に日本人が騒ぐと思われたので、ビクター・マチュアに置き換えられ、最終的に余り知られていなかったロバート・スタックに決まった。
早川雪洲の声はリチャード・ルーによって吹き替えられている。だから日本人なのに日本語が訛っている。
山口淑子のハリウッド映画デビュー作。(既にアメリカのドラマ出演経験あり)
スタッフ
監督 サミュエル・フラー
製作 バディ・アドラー
脚本 ハリー・クライナー 、 サミュエル・フラー
音楽 リー・ハーライン 、 ライオネル・ニューマン
撮影 ジョー・マクドナルド
キャスト
サンディ・ドーソン ロバート・ライアン
エディ・スパニエ ロバート・スタック
ナゴヤ・マリコ 山口淑子 (シャーリー山口とクレジット)
グリフ キャメロン・ミッチェル
ハンソン大尉 ブラッド・デクスター
キタ警部 早川雪洲
ウェバー ビフ・エリオット
セラン サンドロ・ギグリオ
叫ぶ女性 エイコ・ハナブサ
ジョン ハリー・ケイリー
ウィリー ピーター・グレイ
フィル ロバート・クオリー
チャーリー デフォレスト・ケリー
スキッパー ジョン・ドゥーセット
叔父ナゴヤ テル・シマダ (島田晃)