(○)村尾昭、山本英明松本功が共同脚本を執筆し、佐伯清が監督して、終戦直後の浅草を描いた1010侠映画。撮影は星島一郎

主演は高倉健。昨年から始まった「日本侠客伝」シリーズ、同年4月に始まった「網走番外地」シリーズに続いて、三本目の高倉健主演シリーズとして開始された。

共演は池部良、三田佳子、菅原謙次、江原真二郎、梅宮辰夫、松方弘樹、水嶋道太郎。カラー映画。

ストーリー

終戦直後の昭和21年東京・浅草。日本の任侠は、アメリカの影響を受けて大きく変わろうとしている。テキ屋である神津組に代わって、新興ヤクザの岩佐率いる新誠会が闇物資のルートを抑え、その縄張りで闇屋が軒を並べるようになっていた。
悪どい新誠会のやり方に、警察はテキ屋の親分を集め自粛を求める。神津組四代目源之助は、特に岩佐のやり方に反発した。
岩佐にとって眼の上のタンコブとなった源之助は、新誠会と思しき男に銃で暗殺される。イキリたった乾分達は新誠会に殴り込もうとするが、神津組の兄貴分江藤は、喧嘩を起すのは相手の思う壺だと戒めた。

数日後、神津組の寺島清次が5年ぶりに復員する。親分の遺言を聞いた清次は、江頭の強い勧めもあり遺志通り五代目を継ぐ。しかし、5年間離れていた恋人綾は、今では西村組の女将になっていた。
露天商の商品仕入に奔走する清次たちを、新誠会は露天商を横取りするなどして妨害する。ジープの政は、恋人ユキと一緒にいるところを袋叩きに会う。五郎は娼婦美代に入れ上げ、新誠会の島田との間でトラブルを起こす。それが元で新誠会の連中に殺される。通夜の最中、神津組客分の風間は美代の顔を見て驚く。彼女は風間の戦争中行方不明になった実の妹であった。彼女が結核を患っていることに気づいた風間は、病院に入院させた。

新誠会は露天商から集めた資金で土地を購入しマーケットを建てようとした。しかし、神津組から移籍したり西村組配下の露天商は資金を集めた上でマーケット予定店舗から外した。それを聞いた浅草の親分衆は、清次にマーケットを作らせるため金策し、神津組に土地を購入させることに成功した。清次はこれを機に時代遅れになったテキ屋稼業から足を洗い、商人は問屋と直接取引をすべきだと考えた。
西村組二代目親分西村は、けじめをつけて来るといい、新誠会に殴り込む。綾は、いくら言っても聞かぬ夫に最後は燧石で景気を付けて送り出す。しかし、多勢に無勢のため、新誠会の前に惨殺された。風間の妹美代も病状が重く、病院で亡くなり、風間は天涯孤独になった・・・。

雑感

戦後まもなくの浅草闇市の話だ。リアリズムを追求した東映映画「仁義なき戦い」(1973)の菅原文太と比べると、長ドス=日本刀を握る高倉健の背中の唐獅子牡丹に男の美学を感じた。
その好対象に着物に拳銃を持つ池部良がいて、二人の間の友情が光る。
二人の中堅とベテランがいるのだから、松方弘樹を最後まで生き残らせて見せ場を作らせる必要はない。敢えてやるなら、梅宮辰夫を生かしておき、最後に死なせた方が良かった。

テキ屋とは、露天商のことでもあるが、この映画では露天商に商売する場所の提供し商品を卸す人間のことを指す。関東では、こちらの意味で使われている。

興味深いのは、ここ描かれた戦前のテキ屋神津組が、戦後のテキ屋商売に限界を感じて、土建業に進出したことだ。どうせ地主との関係は借地人になるから、ひとまずはマーケットの家賃を商店主からもらい、安い地代を地主に払うビジネスモデルで成長し、昭和30年代の好景気になってから郊外開発がらみで会社を大きくしたものは多かったと思う。

主題歌は、「日本残俠伝」という歌と表示されているが、高倉健の歌「唐獅子牡丹」の歌詞違いである。色々と権利関係があるから、ややこしいことになっていたみたいだ。

珍しく、六代目三遊亭圓生師匠が重要な役で登場している。圓生ファンは必見。

 

スタッフ

企画  俊藤浩滋、吉田達
脚本  村尾昭、山本英明、松本功
監督  佐伯清
撮影  星島一郎
音楽  菊池俊輔
主題歌  高倉健「日本残俠伝」

キャスト

寺島清次  高倉健
西村綾(かつての恋人)  三田佳子
西村恭太(テキ屋西村組組長)  江原真二郎
川田源之助(テキ屋親分)  伊井友三郎
川田輝男(息子)  中田博久(キャプテンウルトラ)
江藤昌吉  菅原謙二
風間重吉(客分)  池部良
福永繁  中山昭二(「ウルトラセブン」キリヤマ隊長)
ジープの政  松方弘樹
小沢ユキ(政の恋人)  梓英子
ゼロ戦五郎  梅宮辰夫
風間美代(客分の妹)  水上竜子
遠山六兵衛  潮健児
大谷(親分衆のまとめ役)  六代目三遊亭圓生

岩佐徹造(新興ヤクザ)  水島道太郎
羽賀明  山本麟一
カストリの安  亀石征一郎
日の出の辰  室田日出男
瀬川  関山耕司
島田  八名信夫

神津組のマーケット用地に建設工事中のバラックから不審火が出た。中を彷徨いていた新誠会の乾分をその場で射殺したが、神津組側も二人の犠牲者が出た。
清次はついに堪忍袋の尾が切れて、工藤に後事を任せて、風間と新誠会に殴り込みを掛ける。後から政も加わった。風間は若頭の羽賀と拳銃の相撃ちになり死んだ。清次は、岩佐を叩き切って警察に御用となる。
マーケットは工藤の指揮の元で、無事完成した。今後を祝うかのように綾の目の前で鳩が飛び立つ。親分の清次は、いずれ刑務所を出てくるようだ。綾はその日が待ち遠しい。

 

昭和残侠伝1965.10 東映東京製作 東映配給 – 高倉健さんの「昭和残俠伝」シリーズ第一弾

投稿ナビゲーション