張込みは映画やドラマ、もちろん原作でも読んでいるが、何度でも聞きたい朗読だった。
渋いのだ。
有川博という役者が、これほどまでに朗読がうまいとは思わなかった。
間の取り方が凄い。
またほとんど主役の刑事のモノローグドラマである点も、この短編を朗読向きにしている。
女のセリフが、ほとんど出てこないのだ。
主役柚木刑事の温情に対して、「それでよかったのか」と、いつまでも疑問が残る。
それがこの作品の余韻だ。
テーマだって不偏なものがある。
前途を絶望した犯人が昔の女のところに現れる。
彼女は不幸な結婚をしているものだから、一瞬にして焼けぼっくいに火がつく。
しかし情死寸前のところで刑事が・・・
「だった」で押し切る、清張の文体も、凄いと思った。
図書館で借りて聞く値打ちはある。
(懐音堂から転載)
松竹映画「張込み」の主役高峰秀子を、イメージしながら、読んでいるような気がする。

張込み 松本清張 新潮CD

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