舞台美術家の妹尾河童が、阪神淡路大震災で廃墟と化した神戸の街再興を願って、1997年に戦中戦後の神戸を描き大ヒットした自伝的小説を、16年後に降旗康男監督が映画化した。
主演は水谷豊、伊藤蘭夫妻、子役に歌舞伎出身の吉岡竜騎花田優里音を起用している。
背景美術や空襲シーンなどにVFXを多用しているので、「三丁目の夕日」みたいな雰囲気がする映画である。

 

あらすじ

戦前の神戸市。Hこと肇少年(吉岡竜輝)は、仕立屋を営む父(水谷豊)、クリスチャンの母(伊藤蘭)、妹(花田優里音)との四人家族で好奇心旺盛な子供に育った。Hは早くから欧米の文化に触れて自由な雰囲気をまとっていた。
しかし戦争の足音は次第に神戸にも近付き、仲良くしていたお兄ちゃん(小栗旬)が特高に逮捕され、おとこ姉ちゃん(早乙女太一)が招集拒否で首吊り自殺したり、外人のお得意様が皆帰国したりする。
ついに昭和16年12月8日真珠湾に攻撃してアメリカに宣戦布告する。Hは神戸第二中学(兵庫高校)に進学し、軍事教練を受ける。父も仕立て屋を辞めて消防署に勤め、母は隣組の班長になった。全てはクリスチャンであることに対する世間の風当たりを少しでも小さくするためだった。
やがて敗戦の色が濃くなり、兵庫や長田も軍需工場が近いこともあって空襲を受けて、実家は焼け落ちてしまう。
昭和20年8月15日、終戦となった。敗戦のショックで父は抜け殻のようになってしまう。そんな父を見ていて少年Hも絶望感を感じるが、闇市で神戸人のたくましい様を見て、僕も生きていかなくてはと思う。幸い、父も再びミシンを踏むようになり、Hはペンキ屋の小僧として働き始める。

 

雑感

VFXが自分には合わないので、残念ながらあまり好きではない。全13回のテレビアニメの方がずっと良かった。(実際はNHKの「週刊子どもニュース」で前後編に分けて放送された)

水谷豊が個性を強く出すタイプの役者なのは知っていたが、伊藤蘭まで一緒になって型にはまったお母さんを演じていた。

その中で長男役の吉岡竜騎の演技に注目した。この映画だけで歌舞伎の世界に戻ったが、大きく成長してから映画の世界にもたまには戻ってきてもらいたい。

北海道の田舎者が原作に対して批判をしつこくしていた。

原作は阪神淡路大震災からの復興を願って書かれたフィクションである。

戦争に負けてそれまでの価値観が破綻したから、私は共産党に入りましたという話では無い。

この映画の場合は降旗康男監督があらゆる資料を検証した結果、直すべき所は直したうえで脚本や時代考証を行っている。

スタッフ

監督 降旗康男
製作総指揮 早河洋
原作 妹尾河童
脚本 古沢良太
撮影 会田正裕
VFX 戸枝誠憲
音楽 池頼広

 

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配役

妹尾盛夫 水谷豊
妹尾敏子 伊藤蘭
妹尾肇 吉岡竜輝
妹尾好子 花田優里音
お兄ちゃん 小栗旬
オトコ姉ちゃん 早乙女太一
田森教官 原田泰造
久門教官 佐々木蔵之介

 

 

 

少年H 2013 クリーク・アンド・リバー制作 東宝配給 1997年に話題となった小説を水谷豊夫妻主演で

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