神戸港を舞台に、女組長、新興暴力団さらに港湾警察が絡むアクション映画。 
内田弘三が脚本を書き石井輝男が監督した。音楽は渡辺宙明。カラーのシネスコ作品。
主演は久保菜穂子、宇津井健。共演は天知茂、中山昭二、高倉みゆき、三原葉子、星輝美

あらすじ

神戸の波止場事業で海堂組と竜神組は対立していた。海堂組は三代目女親分ゆりが仕切っていて、竜神組は剛田が先代から譲り受けることになっていた。京子が仲居をしている料亭で竜神組組長剛田の襲名式が行われ、大親分が集ったが、ゆりに連絡は届かなかった。京子の亭主で、ゆりの子分広は怒って竜神組になぐり込む。竜神組の客分「ハリケーンの政」は、なぶり殺しにされる寸前に広をかばった。ゆりは千虎に赴き襲名式に招待のなかった理由を糾し、剛田は千葉の大親分の失笑を買った。

竜神組は、海堂組が請け負ったオリエント商事の荷を強奪する。剛田はオリエント商事の委任状を手に入れ海堂組に支払を迫る。ゆりは博打で資金の調達をしようとするが、負けたため剛田に自分の体を与える約束をさせられる。政は、海堂組の相談役の彦太郎にいかさま博打の証拠を渡した。彦太郎は証拠を持ち、剛田と掛け合い、島を明け渡す代わりに代金500万円を支払うことを約させる。


しかし剛田は睡眠薬をゆりに飲ませて、眠ったところを犯す。穏健派だったゆりは怒り、ついに海堂組と竜神組は第三突堤で決闘を行うことになる。しかしその時警官の制服に身を包んだ「ハリケーンの政」が現れ、剛田達は海上ギャング事件の犯人として、逮捕される。ゆりも騒ぎを起こした責任者としてお縄を頂戴する。

一年後、刑期を終えて出所したゆりは、皆に出迎えられる。堅気になったゆりは、海堂産業初代社長として広、道代らとともに出直す。


雑感

「女王蜂」シリーズの第二弾、前作に続き久保菜穂子が女親分役として主演を張る。久保は柳生神陰流家元の出身で新東宝第一期生に選ばれたエリート。今から考えると163cmという背丈は小柄なのだが、当時としてはパンツ・ルックがお似合いのスタイル抜群で売っていた。賭場での片肌脱ぐシーンは彼女のお約束だ。

彼女の味方は中山昭二三原葉子、高倉みゆき。女親分に絡む謎の男役に宇津井健が扮する。宇津井に岡惚れの娘にデビューしたばかりの星輝美。この二人のダンス(ツイスト)シーンが笑える。宇津井健は馬術部出身だからリズム感はあるはずなのだが、ダンスはダメだ。宇津井健のアクション・シーンにしたって不器用さが現れている。これは渡哲也に近いものがある。
敵役は天知茂菅原文太。天知茂はまだ27歳なのに初老役で、まるで「明智小五郎」シリーズでの変身した老人だった。子分役の菅原文太はデビューしたての頃で棒読み演技で下手くそ。ところが二年ほど役者を勤める内にものになってしまった。考えてみれば宇津井健、天知茂、菅原文太が画面に揃うなんて新東宝以外であるだろうか。

しかし俳優の奇異さが感じられないほど、石井輝男監督の奇妙な演出が目立つ。ラストの決闘シーンは、真夜中に行われたはずだが、実際は昼間にカメラにフィルターをかけて薄暗いモノクロのような効果を出している。どう見たって、真夜中でなく日の出前の朝方にしか見えなかった。
また新東宝は予算を掛けていないから、ダンサーの振り付けもおそらくリハーサルもせずに撮っている。だから全然合っていない。

舞台が港と言うことで、なじみが深い。神戸港に関しても上組が江戸時代に神戸での沖仲仕の免許を受けて勢力を広げはじめたが、株式会社になったのは1965年のことである。上場したのが1971年だ。上場前は地元Yとの紛争が絶えなかった。同じように元々は沖仲仕の「組」組織だったのに堅気の運送株式会社に転身した会社はいっぱいある。堅気になったからといって仕事をして行くに当たってYとの縁は、切っても切れないものだ。

主題歌は久保菜穂子の「嘆きの女王蜂」(作曲は大倉貢社長の実弟近江俊郎)だが、実演はない。でも他の映画で歌っているシーンがある。

キャバレーのシーンで、ゲスト出演の高島忠夫(久保菜穂子と同期の新東宝一期生)が見事なクルーナー唱法を聞かせる。

スタッフ

製作 大蔵貢
企画 佐川滉
原案 牧源太郎
脚本 内田弘三
監督 石井輝男
撮影 吉田重業
音楽 渡辺宙明
主題歌 「嘆きの女王蜂」唄:久保菜穂子、作詞:松井由利夫、作曲:近江俊郎
劇中歌 「結婚しましょう」唄、作詞作曲:高島忠夫

キャスト

海堂ゆり 久保菜穂子
ハリケーンの政 宇津井健
剛田昇 天知茂
広   中山昭二
広の女房京子 三原葉子
彦太郎の娘道代 高倉みゆき
剛田の手下譲次 菅原文太
彦太郎  佐々木孝丸
アケミ 星輝美(新人)
箱屋勇造 林寛
留吉 国創典
小沢 近衛敏明
サブ 大江満彦
中盆 広瀬康治
歌手 高島忠夫

 

 

 

 

 

 

女王蜂の怒り 1958.12 新東宝製作・配給

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