「女はそれを我慢できない」というとアン・ルイスの歌を思い出すそうだが、私は大信田礼子の初期ヒット曲あるいは池玲子のカバー・バージョンを思い出す。何れにしてもこれらの曲は映画の邦題をパクっているのだ。
アニメーター出身の監督フランク・タシュリンだから、誰でも楽しめる音楽コメディ映画だ。当時のロックンロール映画は基本的にモノクロだったが、この映画は奮発してシネマスコープで上映されてヒットした。
舞台「七年目の浮気」でトニー賞を受賞し、同名映画でマリリン・モンローと共演したトム・ユーウェルと、IQ=163、バスト=102cmでマリリンのフォロワーだったジェーン・マンスフィールドが主演である点も捨て難い。1956年のマリリンではこの役を引き受けなかっただろう。ジェーン・マンスフィールドはこの年の活躍でゴールデングローブ賞新人女優賞を受賞した。
あらすじ
かつての敏腕マネージャー、トム(トム・ユーウェル)はジュリー・ロンドンと別れて以来、彼女の幻影に悩まされて毎夜酒浸り。
ギャングの親分マードック(エドモンド・オブライエン)に、巨乳美人ジェリー(ジェーン・マンスフィールド)をデビューさせるために、雇われる。彼女はマードックのお気に入りであり、手を出すなと言われる。
ところが、彼女はひどい音痴でデビューを中止するようマードックに忠告する。実は彼女も歌手になるのは嫌だったので、トムに感謝感激し、次第に二人は愛し合うようになる。
しかしマードックはエディ・コクランがテレビで歌っているのを見て、こいつでも歌えるのだから、ジェリーをデビューさせろとトムに命ずる。
そしてマードックが獄中にいたとき作詞した「ロック・アラウンド・ザ・ロック・パイル」を別の歌手に歌わせて合いの手をジェリーに入れさせてレコードに吹き込ませ、そのレコードを含めたジュークボックスを町中の酒場にとりつけた。
露骨な売り込みが功を奏し、彼女はスターになる。面子がたったマードックはトムとジェリイの関係を許してくれる。
しかしジェリーの初舞台にマードックと因縁がある同業者ホイーラーが乗り込んできた。これに対してマードックは舞台に立ち、「ロック・アラウンド・ザ・ロック・パイル」を熱唱する。すっかり魅了されたホイラーはマードックを歌手としてスカウトする。
その後ジェリーはトムと結婚引退して結婚した5人の子供を産む。
雑感
この映画の見所はバックステージものだから音楽映画でもある事だ。従って次々と当時のロックンロール、ロカビリー、R&B、ボーカルの大スターが登場する。
・リトル・リチャード
・ジュリー・ロンドン
・ファッツ・ドミノ
・ジーン・ヴィンセント
・プラターズ
・エディ・コクラン
・アビー・リンカーン。
これだけ並べば単なる音楽映画でなく、もはや歌謡映画というべきだ。とくにジュリー・ロンドンがトム・ユーウェルの妄想の中で “Cry Me A River” を何回もお色直しをして歌うシーンは、素晴らしい。音楽は夫になるボビー・トゥループが音楽を担当しているが、二人が結婚するのは1959年である。
その後のジェーン・マンスフィールドはアメリカではお色気女優のレッテルがなかなか取れないので、ヨーロッパへ出稼ぎをしていた。ソフィア・ローレンがいるパーティで、似たタイプのジェーンが話題を独占するため、ホモセクシャルのクリフトン・ウェブと組んでポロリをやったのだ。しかし良い脚本が手に入るたびに妊娠して降りざるを得ないのは残念。おかげで三人の夫に対して五人の子供を得た。これはこの映画と同じ人数である。
その後の交通事故を起こして亡くなるはよく御存知だろうが、子供が道連れにならず良かった。
トム・ユーウェルはあまり映画と相性が良くなかったのか、主役級で出ることはなくなった。やはり彼は舞台人だったのだ。
他にエドモンド・オブライエンがギャングのボスから人気歌手に転身する役で出演。
スタッフ・キャスト
監督・脚本・製作 フランク・タシュリン
原作 ガーソン・カニン
脚色 ハーバート・ベイカー
撮影 レオン・シャムロイ
音楽 ボビー・トゥループ
作曲・指揮 ライオネル・ニューマン
配役
トム トム・イーウェル
ジェリー ジェーン・マンスフィールド
マードック エドモンド・オブライエン
ジュリー・ロンドン 本人
マウシー ヘンリー・ジョーンズ
ホイーラー ジョン・エメリー