牧師の父を見殺しにされた娘が復讐のため、詐欺師と組んで新興宗教を起こす。盲目の青年が彼女のインチキな教えに騙されてしまうが、彼の純粋さに彼女は忘れていた父の教えを思い出す。
監督はフランク・キャプラ、主演は若くしてブロードウェイのアイドル・スターになり、映画界入りしてすでに何本か主演作品を撮っていたバーバラ・スタンウィック。白黒映画。
日本公開は1932年。
あらすじ
聖書を暗記しているほど敬虔な牧師の娘フローレンスは父親を亡くし路頭に迷っているところを、詐欺師ホーンズビーに説教度胸を見込まれてインチキ伝道師に仕立て上げられる。
ホーンズビーはフローレンスをラジオの伝道番組に出演させ大衆を幕屋(サーカスのようなテント小屋)に呼び込み、公開説教を行わせ奇蹟の数々を見せていた。しかし全てが仕組まれたものだった。
彼女は大衆を騙しているのが嫌でしようがなかったが、ホーンズビーは献金、寄付金を集めてパーティー三昧の楽しい毎日を送っていた。
第一次世界大戦で盲目になった元飛行士ジョンはラジオでフローレンスの番組を聴き感動し自殺を思い止まる。ジョンは大家のヒギンズに連れられ命の恩人フローレンスの幕屋を訪れる。そこで初めてフローレンスとジョンは出会い、雨の夜にジョンを送って行こうと彼の部屋を訪れたフローレンスは、彼の純粋さに父の面影を見る。
現場マネージャーのウェルフォードがホーンズビーを脅迫して賃上げを要求した後、謎の死を遂げる。フローレンスは薄々ホーンズビーが誰かにやらせて殺したと思ったが、ホーンズビーが恐ろしくて何も言えなかった。
ジョンとフローレンスの秘密の交際は続き、ついにジョンは求婚した。しかしホーンズビーは警察から身を隠す必要から、フローレンスに二人でリビエラに逃げようと言い出す。弱みを握られていた彼女はジョンに別れを告げるが、ジョンは幕屋の彼女の部屋を訪れ一芝居打つ。フローレンスはジョンの企てを見抜くが、おかげで大衆に真実を告白する勇気が湧いた。
集まった観客にフローレンスが話し出したとき、舞台袖から火が上がる。ホーンズビーが逃げ出したときに失火したのだ。フローレンスは観客を誘導して避難させるが自らは逃げ遅れる。ジョンは声を頼りに火の中をフローレンスの傍らに行って抱き上げ、火傷をしながら屋外へ避難する。
その後、フローレンスはホーンズビーから解放されてジョンを病院に入れた後、救世軍に参加する。ジョンは退院するが、視力が戻るかもしれないと医師に言われる。そして改めてフローレンスに求婚するのだった。
雑感
24歳のバーバラ・スタンウィックが若々しい。幼さが残り表情は固いが、堂々と主役を張っている。
IMDBの評価は7点台で意外に高い。と言うのも数年前までスキャンダルとして取り上げられていたニュースを主題にしたからだ。
実は「奇蹟の処女」(The Miracle Woman) と言われた実在の伝道師エミー・センプル・マクファーソンを基にした話で1927年末に “Bless, You Sister” という題名で舞台化された後、脚色され1931年にフランク・キャプラにより映画化された。
ラジオ伝道師の祖であるマクファーソンはヒーリング能力を持っていると言って人気を得た。しかし1926年にベネチアで溺死したと報道され、数週間後メキシコで発見されると自分は誘拐されたと主張した。この誘拐事件が狂言であり愛人との逃避行だったとして、詐欺事件の被告となり最高裁でようやく証拠不十分で無罪となるが、大衆の熱狂を失う。しかし映画上映後も西海岸を中心に信者が残り、人気は絶えなかった。戦時中に睡眠薬のオーバードーズで亡くなっている。享年53歳。
スタッフ
監督 フランク・キャプラ
原作戯曲 ジョン・ミーハン 、 ロバート・リスキン
脚本 ジョー・スワーリング
台詞 ジョー・スワーリング 、 ドロシー・ハウエル
撮影 ジョセフ・ウォーカー
キャスト
フローレンス バーバラ・スタンウィック
盲人ジョン・カーソン デイヴィッド・マナース
詐欺師ホンズビー サム・ハーディ
大家ミセス・ヒギンズ ベリル・マーサー
運動員ダン・ウェルフォード ラッセル・ホプトン
シンプソン チャールズ・ミドルトン