ヘレン・ケラーと同時代にフランスにも三重苦を克服した女性がいた。そしてその影にはやはり障害者教育に命をかけた女性がいた。
監督は脚本を兼ねるジャン・ピエール・アメリス。
主役はイサベル・カレー。共演は自身も聴覚に障がいを持つアリアナ・リボアール。
あらすじ
19世紀末、フランス・ポアティエ。
目や耳に障がいを持つ少女たちを受け入れてきた修道院付属学校に、両親が談判している。三重苦の娘マリーを受け入れて教育を受けさせたいのだ。しかし院長は生来の三重苦は不可能だと考えていた。そこへ修道女マルグリットが現れ、マリーを受け持ちたいという。彼女自身、重い病を抱えていて医者に見放されていた。
少女マリーが学校にやってきた。マリーは一切教育を受けてこなかった。マルグリットとマリーは、血のにじむ激しい戦いの8ヶ月を過ごす。そして、マリーはついに物に名前があることを理解し、次々に言葉を吸収していく。
しかし病に冒されていたマルグリットは、療養に出なければならない。マルグリットのいない間にマリーはイライラして退行が見られるようになった。マルグリットは療養所の医師の反対を押し切り、修道院に戻りそこでマリーに死ぬことにより人間とは何かを教える決意をする。
マルグリットが戻ってきた瞬間、マリーは拗ねていたが、マルグリットが倒れると、率先して彼女の介護をするようになる。そうやって日々を過ごしているうちに、マリーは死というものを理解していく。
やがてマルグリットは亡くなる。マリーは諦めて気丈にしていた。そして新しい季節が来る頃、マリーはマルグリットに代わって、新入生のお世話をするようになる。
雑感
アメリカのヘレン・ケラーより少しだけ後の人だが、生きている期間は重なっていた。
これが、ヘレン・ケラーとサリバン先生の物語との違いは、先生が身を以て死を教える点だ。実際はすぐ死んだわけではなくて、マリーが成人した後に亡くなっているから、死を理解したのだろう。マリーも三十三歳で亡くなっている。
この作品は字幕版を見るべきである。吹替え版だと、聾唖者の手話による会話に対して吹き替えをつけてしまい、健常者のように見せるからである。
スタッフ
監督 ジャン=ピエール・アメリス
脚本 ジャン=ピエール・アメリス 、 フィリップ・ブラスバン
プロデューサー ドニ・キャロ
撮影 ヴィルジニー・サン=マルタン
キャスティング タティアナ・ヴィアル
プロダクション・デザイン フランク・シュワルツ
音楽 ソニア・ヴィダー・アサートン
キャスト
シスター・マルグリット イザベル・カレー
マリー・ウルタン アリアーナ・リヴォアール
修道院長 ブリジット・カティヨン
ウルタン氏(父) ジル・トレトン
ウルタン夫人(母) ロール・デュティユル
シスター・ヴェロニカ マルティーヌ・ゴーティエ
シスター・ヨセフ パトリシア・ルグラン
シスター・エリザベス ソニア・ラローズ
シスター・ブランディーネ ヴァレリー・ルルー