半開放式ヘッドホンで、高インピーダンス600Ω。音圧感度は102dB。ヘッドホンアンプ必須という今時珍しいヘッドホンだ。ポータブル使用ではかなり厳しい。しかしそれなりのアンプを使えば、十分に鳴る。平面駆動ヘッドホンと比べると、はるかに使いやすい。
問題は価格が時間と共に高級ヘッドホンだったはずなのに、中級になっていること。後発で密閉式のT-5p 2nd Gen. に販売価格の高さで追い付かれ、追い抜かされた。

満足度 4 (不満は少ないが、世間のヘッドホンはさらに進んでいるのに、旧態依然だ)
デザイン 4 (小さくて耳にフィットしやすい。しかし革製イヤーパッドからベロアに変えたので1点減点)
高域 4(少しだけ尖った感じ。さすがに密閉式の T-5p 2nd Gen. と比べると優しく聞こえる)
中域 4 (ボーカルには定評があった。しかし平面駆動ヘッドホンの音を聞くと、値段なりに聞こえてしまう)
低域 3 (切れ味はあるが薄く、フォステクスの密閉型と比べるとビートの強さを感じない)
音漏れ 3 (半開放式は開放式とあまり変わらないぐらい音が漏れる)

ケーブルはBeyerdynamic 発売の標準バランスケーブルで、XLR 4pin -> 3.5mm x 2。接続部は押し込まないと、うまく接触しない。
組み合わせるアンプのベストは、当然Beyerdynamic の上級ヘッドホンアンプA-2だろうが、ドイツ製はゼンハイザーしか持っていない。だから多少音が緩くなって、辛めの評価になってしまうが、ご了解をお願いします。なおボリューム位置は一般に8時から8時半だ。

このヘッドホンは低音が薄くて、中音が前に出るタイプだから、ボーカルの評判が高い。そこでハイレゾでボーカル曲を中心に聴く。

まず AC/DC のアルバム “Back in Black” を聞く。悪くないんだけど物足りない。ボーカリストのボン・スコットが事故死してブライアン・ジョンソンに変わった最初のアルバムだからかもしれないが、ボーカルの後ろにいるフィル・ラッドのドラムスと近づきすぎて、音が分離していない気がする。先代のT-1 を聞いたときの印象はバンドやスタジオ全体の音場が狭く感じたのだが、T-1 2nd Gen. は特定の楽器間の距離が狭く感じている。ギターとの距離は広い。おそらく真ん中の奥行きが薄っぺらいと思う。インスト曲であれば横幅は十分広いので、オーケストラ以外ならば良いと思う。ボーカルとドラムの位置関係からこのヘッドホンは、ロックは苦手だと思う。

次に薄幸の美人ジャズ・シンガー Beverly Kenney のアルバム “Like Yesterday”、二曲目に「センチメンタル・ジャーニー」を含むものだ。これはバックのリード楽器、ピアノトリオと程よい距離を保ちながら定位する。ただし女性ボーカルが若干腰高に聞こえ、さらに口の位置が少し近いと思う。腰高の方は、ウィスパーボイスだから、仕方ないと思う。ケーブルを変えれば何とかなるだろうが。ジャズ・ボーカル全般は得意だと思う。ウィスパー・ボイスが苦手なだけだ。

カーペンターズの “Singles 1969-1981” の前半。ソプラノボイスから一転してカレンの声はアルトだが、このヘッドホンにはこっちの方がしっくり来ている。女性ポップ歌手の多数派を占めるアルト・ボイスをうまく響かせるためには、ソプラノの響きを軽くするのは仕方がないのかな。

ここで我が家の女性ボーカルのエースというべき Ultrasone Edition15 (open type) にオーグラインのバランスケーブルを繋いだもので「マスカレード」を聴き比べよう。これを聴いた途端に T-1 2nd Gen. が低音不足のせいで、あっさりした音だと分かる。

次にHifiman Aria と聞き比べよう。値段はE15よりこちらの方がT-1 2nd Gen. に近い。ケーブルは Hifiman He6se に付属のバランスケーブルだ。ビニールチューブで覆われていて代理店も中身を決して教えてくれない謎のケーブルである。最近鳴らしていなかったのだが、それでもボーカルが堂々と前に出ている。やや自己主張が強すぎてカレンが熱唱歌手になってしまうが、ボリュームを10時から9時半に下げると、歌手と客席の距離が遠くなる。

単独でT-1 2nd Gen. を聴く分には良い音なのだが、より上のヘッドホンと聴き比べると、差が明らかになる。あえてT-1 2nd の良い点を挙げると、条件付きだけど、シンプルな演奏をスタジオに近い雰囲気で楽しみたい場合に良いだろう。

最後に器楽曲も聴いておきたい。Lee Morgan の名ジャズ・アルバム ”Candy” だ。これも単独で聴く分には何の問題もない。気楽に聴ける優秀なヘッドホンだ。
これをE15で聞くと、最初からスネアがすごいことになる。中盤からのベースソロも目立ちまくっている。完璧にジャズを間近で演奏してるのが感じられるのは、E15だ。
Hifiman He6se に Beyerdynamic 標準バランスケーブルを繋ぐとどうなるか。かなり音圧が弱いのでボリュームは1時ぐらいまで回る。遠い音だが、ステージでジャズを演奏しているように聞こえる。解像度が全域にわたって高いから、高域中域低域どれも差はないと思う。
器楽曲については、T-1 2nd Gen. で十分と言える。ボーカルが良いというのは今では通用しない。

ヘッドホン Beyerdynamic T-1 2nd Generation

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