(○☆)亡くなったばかりのヘンリーは、地獄の門番「閻魔大王」の前で彼が地獄に落ちるに相応しいことを証明するため、彼の人生について語る。
レスリー・ブッシュフェケテの原作「誕生日」に基づいてサミュエル・ラファルソンが脚色し名匠エルンスト・ルビッチが監督したソティスティケイティド・コメディ。撮影はエドワード・クロンイェイガー。
主演はドン・アメチーとジーン・ティアニー。
共演はチャールズ・コバーン、レアード・クリーガー、マージョリー・メイン。
テクニカラー作品。
国内初公開は1990年で配給はブレノンアッシュ。
ストーリー
閻魔大王の元に、ある日地獄に落ちても構わないというヘンリーが現れる。閻魔は彼に生きてきた人生について聞く。
裕福な家庭で甘やかされて育ったヘンリーは、フランス人のメイド、イヴェットに筆下ろしの手解きを受ける。そのために彼女は解雇されるが、ヘンリーの女性に対する才能が花開く。
26歳になったヘンリーは、ニューヨークにやってきた田舎娘を見染める。ところが、彼女はカンザスの畜産業者の娘で、しかも堅物の従兄アルバートの婚約者であった。ヘンリーはそれでも構わず、マーサに求愛する。そして、二人は駆け落ちし結婚する。
10年間2人は幸せに暮らしたが、ある日浮気がバレてマーサはカンザスの実家に戻ってしまう。列車で一緒になったアルバートも一緒だ。皆が寝静まったころ、秘かにマーサを訪ねたヘンリーは彼女を説得するのに苦労するが、祖父のヒューゴが助け舟を出したので再びマーサを略奪してニューヨークに帰る・・・。
雑感
戦時中のハリウッド映画だったため、日本でなかなか公開されなかったが、平成になって初めて劇場公開されてヒットした、エルンスト・ルビッチ監督唯一のカラー映画。
主人公のヘンリーは、至って健康で妻を愛していると同時に多くの女性を愛した艶福家。一度は離婚を考えた妻マーサも、最期まで彼を支え続け、息子を立派に育てた。
ドン・アメチーは、意外に若いころは二枚目俳優として人気があった。この作品は、映画界入りしてから8年目の作品。中年期に映画から離れた時期もあったが、晩年に「コクーン」(1985)でアカデミー助演男優賞を受賞した。
ジーン・ティアニーは、ブロードウェイから映画界入りしてすぐ主演級になり、1940年代の代表的ピンナップ女優に育った。しかし1950年代後半に精神を害し自殺を試み、しばらく病院に入っていた。その後は健康を取り戻し現役に復帰し、1991年(享年71歳)に肺気腫で亡くなる。
ヒューゴは、一族の中で孫ヘンリーを最も理解し悪戯も大好きな祖父であった。チャールズ・コバーンにピッタリの役だ。
この映画の原題「Heaven Can Wait」は、映画「天国から帰ってきたチャンピオン」と同じものだが、両者は全く別の戯曲に基づいている。
この「天国は待ってくれる」の方は、「天国から帰ってきたチャンピオン」のような、人生はやり直しが利くという意味は全くない。
それだけにファンタジー性を排除していて、男の一代記として優れていると思う。(65)
スタッフ
製作 エルンスト・ルビッチ
脚本 サムソン・ラファエルソン
原作 ラディスラウス・ブスフェケテ
撮影 エドワード・クロンジェガー
音楽 アルフレッド・ニューマン
キャスト
マーサ: ジーン・ティアニー
ヘンリー・ヴァン・クリーヴ: ドン・アメチー
ヒューゴ・ヴァン・クリーヴ(ヘンリーの祖父): チャールズ・コバーン
閻魔大王: レアード・クリーガー
ランドルフ・ヴァン・クリーヴ:(ヘンリーの父) ルイス・カルハーン
バーサ・ヴァン・クリーヴ(ヘンリーの母): スプリング・バイイントン
ストレイブル氏(マーサの父): ユージン・ポーレット
ストレイブル夫人(マーサーの母): マージョリー・メイン
アルバート・ヴァン・クリーヴ:(ヘンリーの従兄) アリン・ジョスリン
フランス人家庭教師兼メイド: シグネ・ハッソ
ペギー・ナッシュ(ショーガール):ヘレン・レイノルズ
***
15年後ヘンリーとマーサの息子ジャックは、ショーガールのペギーに恋する。そこでヘンリーは2万5千ドルの手切金で別れさせる。その上で個人的な興味からペギーを誘うが、相手にされなかった。彼は、つくづく自分の年を実感し、こんな年寄りでも愛してくれるマーサに対して感謝する。
ヘンリーは、25年目の結婚記念日に久しぶりにマーサと二人でダンスを踊る。しかしその時にはすでに病魔がマーサを蝕んでいて、数ヶ月後にマーサは病死する。
60歳になったヘンリーは、「役員報酬を増額してくれ、若い娘を身近に置きたい」と言うが、今や立派にヘンリーの跡を引き継いで社長に就いたジャックは若い女はダメだと言う。
70歳になったヘンリーは、病床についてもスケベ心は残っていた。そして、イカす娘が夜勤看護婦に入った晩、彼は興奮しすぎて昇天するのだった。男性として、何と素敵な最期だろうか。
閻魔大王に話終わったヘンリーは、それでも最も愛しているのはマーサだったと言う。そこで閻魔は、ヘンリーをマーサが待っている天国に送る。