ミケランジェロ・アントニオーニエンニオ・フライアーノ、トニーノ・グエッラが共同脚本を執筆しアントニオーニが監督した、夫婦の破綻を描いたイタリア映画
ベルリン国際映画祭グランプリ受賞作である。

出演者にはジャンヌ・モロー、マルチェロ・マストロヤンニ、共演はモニカ・ヴィッティベルンハルト・ヴィッキが参加している。白黒映画。

あらすじ

作家ジョヴァンニと妻リディアは、文芸評論家で病床にあるトマゾを見舞に行った。病棟に上がると、入院患者の女が現れジョバンニに声をかける。医師に尋ねると、トマゾの余命はわずかだと言う。トマゾはジョヴァンニ夫妻と親しくしていた。実はトマゾはリディアを愛していたが、彼女がそれに気づいたとき既にジョヴァンニと結婚していた。やがてトマゾの母親が現れた。

二人は病室を辞した。妻を先に行かせて、ジョバンニは興味を持った先程の入院患者の部屋を訪れた。女はジョバンニを部屋に引き摺り込み、裸になった。色情狂だったのだ。ジョバンニも面白がってなされるがままにしていたが、看護婦が突然入ってきて発情した患者に折檻を始めたので、ジョバンニは逃げ出した。
リディアに追いつくと、ジョバンニは飛んだ目にあったというが、リディアはお見通しだ。
リディアの心に不安が徐々に広がっていた。夫への愛を見失い、今トマゾまで失おうとしている。彼女の心にポッカリと一つの穴があいた。

二人の乗った車は近代的なミラノの街をゆく。ある建物の前で車は泊まる。そこでジョヴァンニのサイン会が開かれる。
暇なリディアはミラノの裏街を歩いた。郊外の虚な家並みは彼女の心をそのまま映していた。ジョバンニが先にアパートに帰ってしまい、リディアを探す。リディアは不良の喧嘩を仲裁したり学生のロケット打ち上げ実験を見学していた。リディアは自宅に電話をかけて、車で迎えに来てとジョバンニに言う。

その夜、二人は大会社社長ゲラルディニのパーティーに行った。会場でジョヴァンニは、ゲラルディニの娘バレンチナの奔放さに興味を持つ。
一方リディアは病院へ電話しトマゾの死を知った。夫とバレンチナが接吻しているのを物陰から見ても、何の感情も湧かない。
結局、ジョバンニもリディアも新たな相手を求めたが、何もできないまま朝がやって来た・・・。

 

雑感

ミケランジェロ・アントニオーニ監督としては、分かり易い作品の部類に入る。
若い頃の情熱も時と共に冷めるものだ。子供がいれば話も変わるが、そう言う男に限って子供ができなかったりする。
作家のようにわかった風の男ほど、浮気をするが、妻の扱いは雑になる。
ラストで、妻が手紙を読むが、それを書いた本人が「誰がこれを書いた?」と聞くのだからおかしい。
最後に男はいつものように気の無いセックスで心を満たそうとするが、女はいつもの義務感で夫にお付き合いしている。女はそういう風に体を乗っ取られることを内心嫌で嫌で仕方がないのだ。

モニカ・ヴィッティにとってはアントニオーニ監督の「情事」(1960)と「太陽はひとりぼっち」(1962)に挟まれた作品。
アントニオーニ監督とは当時から付き合っていて優遇された感があるが、愛の不毛を演じさせたら超一流だ。
この作品では、ジョバンニに迫られるが、意外と固くて最後の線まで許さない。

トマゾ役のベルンハルト・ヴィッキはドイツの反戦映画「橋」の監督でもある。

スタッフ

監督、脚本  ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本  エンニオ・フライアーノ、トニーノ・グエッラ
撮影  ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽  ジョルジョ・ガスリーニ

キャスト

リディア(ジョバーニの妻)  ジャンヌ・モロー
作家ジョバーニ  マルチェロ・マストロヤンニ
大富豪の娘バレンティナ  モニカ・ヴィッティ
評論家トマソ  ベルンハルト・ヴィッキ
友人ロジー  ロジー・マツァクラッティ
色情狂の患者  マリア・ピア・ルツィ 
大富豪ゲラルディニ  ヴィンセンツォ・コルベラ 
ロベルト(リディアに色目を使う)  ジョルノ・ネグロ

 

***

二人は邸にあるゴルフ場のような庭に座り込んだ。リディアはトマゾの死をジョバンニに伝えた。それからトマゾが自分を愛していたが、何もしないで、ただ見てるだけだったことも告げる。
そしてリディアは手紙を読んだ。どこかの男の激しい熱情が書かれていた。ジョバンニは誰の物かわからなかった。リディアは、貴方が結婚前にくれたものよと言った。
二人の間には冷々する風が吹いた。ジョヴァンニは愛をとり戻そうとリディアを激しく抱いた。リディアは「愛してないと言って……」、それに対してジョバンニは「いや言わん」。
男と女の空虚な行いが続けられていった。

 

 

 

夜 La Notte 1961 エマヌエレ・カスート製作 伊ユナイト映画配給 東和国内配給 アントニオーニ監督のベルリン国際映画祭グランプリ受賞作

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