今夏お送りするポワロ新作四作品のうち、もっとも俳優にお金がかかっている作品だ。なにせデビッド・リーン監督の傑作「ライアンの娘」の主役だったサラ・マイルズが出演している。もう60過ぎだが、野村芳太郎監督「危険な女たち」(原作は同じホロー荘の殺人)の北林谷栄とくらべると、まだまだ若い。

 

 

ヘンリエッタ役はメーガン・ドッズ。アメリカの若手美人女優である。ドリュー・バリモア主演「エヴァーアフター」でシンデレラの義姉役をやったのを覚えている。このドラマのヒロインは彼女だ。邦画「危険な女たち」では池上季実子にあたるわけだ。

 

クレア・プライスは、まるでドリュー・バリモアの演じたシンデレラのようなタイプだ。あるいは耐えて忍ぶ、「危険な女たち」の大竹しのぶか。(大竹と比べて、クレアはオーラがない。おかげでメーガン・ドッズとうまくバランスを取っていた)ジョンの妻であり、殺人現場で銃を持ってるところを発見されて、彼女が一番先に疑われた。しかし証拠不十分で逮捕されない。

 

リゼット・アンソニーは、グラマー女優ヴェロニカ役だ。ジョンの元恋人であり、再び彼の目の前に現れる。日本では藤真利子が演じたが、タイプは全く違う。

 

目立たないが、最後に幸せをつかむミッジ役はキャロライン・マーティンだ。相続人エドワードはヘンリエッタを愛していたが、最後にミッジに乗り換える。しかし「危険な女たち」和由布子の方が、印象に残った。

 

エドワード・ハードウィック は髪の毛は薄くなっているが、「シャーロック・ホームズの冒険」二代目ドクター・ワトソンである。小沢栄太郎が「危険な女たち」では演じていた。

 

執事役の名優エドワード・フォックスは、かつてフレデリック・フォーサイス原作フレッド・ジンネマン監督の傑作映画「ジャッカルの日」の主役を演じていた。今回は重厚な演技に終始する。しかしアテレコがイマイチ合っていなかった。

 

 

このドラマを成功作ではないにしろ、失敗作にもしなかったのは、名のある俳優を犯人や被害者に使わなかったことが原因。脇に回したおかげで、ずいぶん芝居に重みが出た。ただしアフレコは、もう少し考えてほしい。いかにもみんなで庇い合いをしてるのが、見え透いていた。

 

 

スタッフ:
脚本 ニック・ディア
演出 サイモン・ラングトン
撮影 ジェームズ・アスピナル
制作 マーガレット・ミッチェル

 

キャスト:
ポワロ   デビッド・スーシェ (ベルギー人の探偵)
ルーシー (藤田弓子)   サラ・マイルズ(ホロー荘の夫人)
ヘンリエッタ    メーガン・ドッズ (ジョンの愛人で彫刻家)
ジョン    ジョナサン・ケイク(医師)
ガーダ    クレア・プライス (ジョン夫人)
サー・ヘンリー    エドワード・ハードウィック (ホロー荘の主人)
ヴェロニカ    リゼット・アンソニー (映画女優でジョンの元愛人)
ガジョン    エドワード・フォックス(執事)
ミッジ    キャロライン・マーティン (ルーシーの従姉妹)
エドワード    ジェイミー・デ・カーシー (相続人)

 

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演出・脚本などのスタッフを大幅に入れ替えた4作品のうち、もっとも良かったのは、やはり「杉の棺」である。最初に読んだときも犯人がわからなかった。メロドラマでありながら、本格的な妙味も楽しめる傑作である。

 

他の作品は、犯人当てが簡単すぎる。もっとも怪しい人間が犯人だという、クリスティの定番だ。

 

「ナイルに死す」は原作からして中途半端な旅情ミステリーである。またこの作品は演出、コスチューム、メイクが気に入らなかった。脚本家より制作全体の失敗だ。

 

五匹の子豚」は「ナイルに死す」と同じ脚本家だが、二回見て初めて良さがわかった。ただしルーシー役は不適当である。

 

ホロー荘の殺人」は視聴者を誤った方向に誘導したいがため、わざわざ名優を使った。しかしミーガン・ドッヅが美しかったから、すべてが許される。

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名探偵ポワロ 「ホロー荘の殺人」 2004

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