谷崎潤一郎原作小説「卍」を増村保造に次いで横山博人が映画化したもの。脚本馬場当
主演は樋口可南子、高瀬春奈。共演は原田芳雄

あらすじ

刑事の妻園子は食器店で銀のスプーンを万引し、その現場をOL光子に目撃される。このことを明らかにされると、夫に迷惑がかかる。園子は光子にこぼしたミルクを舐めろと言われた通りにすると、光子はエスカレートしていく。園子は体を重ねて抵抗するうちに、いつの間にか二人は肉体関係を結んでいた。
光子と関係にどっぷり浸かってしまった園子は、夫剛を避けるようになる。園子の変化に不審を抱いた剛は、妻を尾行し、光子のマンションを突きとめた。翌日剛は園子を連れて光子のマンションに押しかけるが、二人はお互いに知らないとスッとボケる。
鎌倉へ行って二人の愛はますます深まり、一緒に墓に入ろうとまで誓いあい、生理まで合わせるようになる。
ついに園子は自宅に堂々と光子を上げるようになった。剛は「お前たち、レズだろう」と怒っても、園子は完全に開き直ってしまう。

毎晩、剛、園子、光子は左から川の字に並んで寝る生活が始まった。剛は絵を描く趣味があった。部屋には奇妙な絵が飾られていた。剛はそれを少女が殺された部屋の風景だと光子に教える。光子は気味悪がりながら興味を持ち、その部屋へ剛に連れて行ってもらう。そしてそこで光子と剛と関係を持つようになる。やがて園子もその事実に気付く。
三人はこの奇妙な関係から自分だけが排除されるのではないかと疑心暗鬼になり、不眠症に襲われる。そして夜、取調ゲームを始めた。その中で各人は気持ちをぶつけ合うようになる。
しかし最後に光子が妊娠を告白し、園子は自殺する。
通夜の夜、剛と光子は虚しさを感じながらもセックスしかやることがなかった。

雑感

原作、あるいは映画前作のラストは3人揃っての心中である。共に妻だけが生き残った。
今作品は逆に、夫と妻の愛人が生き残るパターンだ。正直言って、この終り方は恐ろしい。園子が間にいなければ、愛し合ってもいないのに、動物のようにセックスし続けるしかないラストが虚しすぎる。これでも別れられるなら良いが、子供が生まれてくるのだから人生真っ暗ではないか。

樋口可南子は1978年にポーラ・テレビ小説「こおろぎ橋」で清純派としてデビュー。一転して1980年代は「戒厳令の夜」(五木寛之原作)「北斎漫画」「卍」「ベッドタイムアイズ」でヌードを披露。痩身なので色気の全くないヌードだった。
一方、高瀬春奈は早稲田の一文を卒業し1977年に朝ドラ「いちばん星」でデビューするが、病気で途中降板。それ以来開き直って太めのヌードで映画、グラビアなどで活躍する。1960年代に春川ますみがいたポジションだったのだが、最近はあまり見なくなった。

スタッフ

企画 伊藤俊也 、 中西宏
プロデューサー 呉徳洙 、 古知屋正裕
脚本 馬場当
監督 横山博人
撮影 中島徹
音楽 林光

キャスト

志藤光子   樋口可南子
柿内園子 高瀬春奈
柿内剛  原田芳雄
法月  鹿内孝
尾崎祥子 中島ゆたか
ハーレーダヴィッドソンの男  梅宮辰夫
志藤千草 小山明子

 
卍 1983 横山博人プロ製作 東映セントラルフィルム配給

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