ブロードウェイ女優になる事を夢見る若き女性は、主役の代役として成功しスターの仲間入りを果たすが、愛する老プロデューサーに捨てられてしまい、ようやく愛を告白した若き脚本家を受け入れられない。

ピューリッツァ賞受賞者で「百万長者と結婚する方法」(マリリン・モンロー主演映画にもなった)の原作者としても有名なゾーイ・エイキンスの人気戯曲の映画化であり、ローウェル・シャーマンが監督した。

「若草物語」に出演する直前のキャサリン・ヘプバーンが主演し、ダグラス・フェアバンクス・ジュニアアドルフ・マンジューが共演している。

生涯に四回アカデミー主演女優賞を受賞したキャサリン・ヘップバーンが初めて主演女優賞を受賞した作品である。

 

 

あらすじ

第一幕 イーストンの事務所にて、シェリダンの新作「ブルースカイ」の打ち合わせ中。
イーストンとシェリダンは俳優を呼び込み、役を振っている。そこへ仕事を探しに新人女優エヴァ・ラブレスがやって来て、老優ヘッジスと出会う。ラブレスはヴァーモント州フランクリンのアマチュア劇団で自信を付け、ニューヨークへ出て来たばかり。世間知らずの自信家だが、どこか魅力を感じる女の子だった。

第二幕 「ブルースカイ」のブロードウェイでの初日が終わって
雨が降る中、ラブレスは喫茶店でコーヒー一杯を頼み粘っている。そこへヘッジスが通りがかり、ラブレスに声を掛ける。ラブレスとヘッジスは何度か会っていたが、ラブレスが小さな役でしくじってからは遠ざかっていた。ヘッジスはラブレスを誘って、イーストンの初日打ち上げに出掛ける。そこはセレブだけに許される空間で、着た切り雀のラブレスは惨めな思いをする。ところが劇作家のチャールズ・ヴァン・デューセンが一杯飲ませた途端、空腹だったために酔ってしまい、多勢の先輩俳優の前でハムレットとジュリエットを演じて眠ってしまう。
ところが翌朝、イーストンからシェリダンは呼び出される。昨晩イーストンはラブレスと間違いを起こしたので、シェリダンに間に立って何とか収拾して欲しいと言う。彼女が枕営業をしたになら良かったのだが純粋に心から愛していた故なので、イーストンはすっかり気を咎めたのだ。ラブレスを秘かに愛していたシェリダンも打ち拉がれる。

 

第三幕 一年が経ち、いよいよシェリダンの新作「金の枝」(ゴールデンバウム)が初日を迎える
主演女優リタ・ヴァーノンの楽屋。開幕直前にリタは賃上げ要求をして、イーストンやシェリダンを怒らせて決裂する。シェリダンはイーストンに代役としてラブレスを起用することを提案する。
一か八かの代役舞台は大成功した。しかしイーストンはラブレスが女優として独り立ちしても女性として見てくれなかった。ヘッジスは新人賞は朝顔のようなもので、太陽が上り切る前に萎むことが多いと戒める。シェリダンは愛の告白をしようとするが、ラブレスがそれを遮る。
シェリダンが出て行った後、かつてスターだった衣装係ネリーが入って来る。ラブレスはネリーに、栄光って空虚なものと言う。「私はシェルダンと幸せになれるかしら」「なれますとも」「でも今はダメ。これからはやりたいことをやるの。みんながチヤホヤしてくれるもの」
そしてネリーを抱きしめて、「一瞬でも輝いて生きられるのであれば、朝顔のように萎れても後悔はない」と叫ぶのだが、ネリーは私の二の舞に結局なるわとがっかりしている。

今日のセリフ

シェリダンが告白して去っていき、ネリーがラブレスの楽屋に入って来る。

L : Shut the door, Nellie.
N : Are you ready to dress for the street now, my dear?
L : No, not yet, Nellie.
I just want to be alone with you. Success seems so empty.

N : Yes, my dear.
There’s only one thing in life that means anything.
I’ve found that out.

L : Joseph told me just now that he loved me.
And I begged him not to say it.
And now I wish I hadn’t because I’m lonely.
Lonely now in the moment I’ve lived for and dreamed for.

N : I wish I’d listened years ago…..when someone told me he loved me.

L : Nellie, I could make him happy.
N : Of course you can, my dear.

L : And he could make me happy too. Certainly he can.
Nellie, they’ve all been trying to frighten me.
Trying to frighten me into being sensible, but they can’t do it.
Not now. Not yet.

They’ve got to let me be as foolish as I wanna be.
l… I wanna ride through the park.
I want a… I want to have a white ermine coat.
And I’ll buy you a beautiful present.
And Mr. Hedges…
I’ll buy Mr. Hedges a little house.
And I’ll have rooms full of white orchids.
And they’ve got to tell me that I’m much
more wonderful than anyone else.

Because Nellie… Nellie, I’m not afraid.
I’m not afraid of being just a morning glory.
I’m not afraid. I’m not afraid.
I’m not afraid. Why should I be afraid?
I’m not afraid.
<End>
キャサリン・ヘップバーンが女優の狂気を見せる芝居だ。呆気にとられる。

ヘレン・ウェアの表情の変化が良い。

 

雑感

原題である“Morning Glory”とは、「朝顔」(普通名詞)のことである。朝顔は新人賞を取るような女優も、朝顔が日が昇ると萎れるように、大方消えていなくなるということの隠喩だ。当者は原題を逐語訳して、映画の内容と関係ない邦題にした。
字幕も配慮が足りない。たとえば、ラブレスがヘッジスに英語を教えてという段で、言語のスクリプトを読めばスラスラと入るのだが、字幕では高校国語の家庭教師になってくださいと言ってようで軽く聞こえる。ここは単なる英語というより、シェークスピア英語や19世紀末の上流階級の英語をマスターしたいというラブレスの心情を考えて訳すべきだ。
2010年映画”Morning Glory”(主演ハリソン・フォード、レイチェル・マクアダムス)の邦題を「恋とニュースの作り方」にした担当者の爪の垢でも飲んで欲しい。

この作品に出てくる情事は、昨年来アイドル界でとやかく言われている枕営業(Casting Couch)とは違う。それは女の子にとって純愛だったんだけど、その気持ちが重くて相手に受け入れてもらえず仕事も回してもらえなかったのだ。
ところが偶然から、彼女は女の幸せを放棄してスターの座を得るが、これで本当に良かったのだろうか。スターなどいつまでも続かないものだからと世間の人は心配する。
「それでも私は恐れない、スターの孤独を」。それがスターとして生まれてきた人間の運命なのよ。
ここでのラブレスを見ていると、「ガラスの仮面」の北島マヤを思い出す。まだ結末を知らないが、女優を選べば幸せにはならず、愛を選べば女優にはなれないだろう。

 

芝居がはねてイーストンとヘッジスが去って、衣装を解かないラブレスの楽屋にシェリダンと二人きりのシーン。

Sheridan: You look tired.
Lovelace: I am.

この二行目の” I am. “ だが、キャサリン・ヘップバーンの重低音ボイスを、終幕のここで初めて聞かされる。しかもずっとハイトーンで通してきて慣れたところで、突然ズドーンと重低音が響く。シェリダンと二人きりになって女優の仮面を脱ぐところだ。

スタッフ

監督:ローウェル・シャーマン 
製作:パンドロ・S・バーマン
原作戯曲 ゾーイ・エイキンス
脚色:ハワード・J・グリーン
音楽:マックス・スタイナー
撮影:バート・グレノン

キャスト

新人女優エヴァ・ラヴレイス:キャサリン・ヘプバーン (アカデミー主演女優賞)
劇作家ジョゼフ・シェリダン:ダグラス・フェアバンクス・ジュニア
製作者ルイス・イーストン:アドルフ・マンジュー
リタ・ヴァーノン:メアリー・ダンカン
老俳優ロバート・ハーレイ・ヘッジス:C・オーブリー・スミス
大女優リタ・ヴァーノン:メアリー・ダンカン
脇役女優グウェンドリン・ホール:ジェノヴァ・ミッチェル
衣装係ネリー・ナヴァル:ヘレン・ウェア

勝利の朝 Morning Glory 1933 RKO製作・配給 キャサリン・ヘップバーンが初めてアカデミー主演女優賞を受賞した作品

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