原作は古いタイプのドキュメンタリーではなく、作家がとても近くで見ているようなリアリティを感ずる傑作犯罪ノンフィクション。トルーマン・カポーティが犯人の立場になるほど、犯人たちに同情して深く食いつき取材を重ねた結果の産物だ。以後、幾多のドキュメンタリーの傑作が生まれるが、この作品を超えるものはない。
監督と脚色はリチャード・ブルックス、音楽はクインシー・ジョーンズがジャズを使っている。
主演はロバート・ブレーク、スコット・ウィルソン、共演はジョン・フォーサイス。
あらすじ
1959年11月の深夜、カンサス州西部でクラター家の4人が惨殺された。警察のデューイー刑事らは、ただちに捜査を開始する。なかなか手がかりが掴めなかったが、懸賞金が付いたので服役中のウェルズがディックにクラター家の金庫について聞かれたことがあると証言した。このディックと友人ペリーの2人が捜査線上に浮上した。そしてペリーとディックは、ラス・ベガスで別件逮捕された。彼らはクラター家にあるはずの金庫を狙ったのだが、そんなものは無かった。クラター氏は小切手を主に使っていたからだ。そこで彼らは発作的に一家を虐殺してしまった。検察はついに殺人罪で起訴した。1960年3月裁判が開始され、直に死刑の宣告を受けた。その後、彼らは再審請求を重ねたが通らず、1965年4月二人は相次いで絞首刑に処せられた。
雑感
セミ・ドキュメンタリーの犯罪映画は好きなので、この映画もドストライクだった。ジメジメした日本映画と違い、乾いたアメリカ映画は義理人情が絡まないので良い。
ただ初めて見たとき、死刑判決が出てから死刑執行までの時間が30分ほどあったので、何か冗長さというか違和感を感じていた。
その理由は「カポーティ」を見て分かった。
実際は彼らの再審運動にカポーティが深く関与したのだった。本当はより詳しく映画でも描いてほしかったのだろうが、脚本を書いたリチャード・ブルックス監督は敢えて淡々と客観的に脚色した。
名脇役だったロバート・ブレイクはイタリア系であってネイティブアメリカンの血が混じっているようには見えなかった。ただもう一人の犯人役スコット・ウィルソンよりずっと目立っていた。
残念ながら、妻を殺した罪で刑事事件は無罪になったが、民事事件で有罪になり、ショービジネスの世界から姿を消した。
スタッフ・キャスト
監督・脚色 リチャード・ブルックス
原作 トルーマン・カポーティ (「ティファニーで朝食を」の原作、映画「名探偵登場」に出演)
撮影 コンラッド・ホール
音楽 クインシー・ジョーンズ
配役
ペリー ロバート・ブレーク
ディック スコット・ウィルソン
デューイ捜査官 ジョン・フォーサイス
新聞記者 ポール・スチュワート