現在ロングセラーを続けている。読んでみると、これがかなり面白い。昭和24年の国鉄下山総裁の轢死事件を掘り下げている。
他の下山事件関係の著作との違いは、著者の祖父が事件の関係者だったこと。普通こういうドキュメンタリーは、取調調書や検事調書の(飽き飽きするような)事実の羅列が多い。
しかし、この本は違う。新聞記者の書いたものと違い、身内と会話するだけで取材できてしまう。直接、関係者から生証言を得ているので、推理小説を読んでいるようだ。
ただし、この事件はほとんどの証人が偽証している。しかも100%の偽証ではなく、50%の偽証なのだ。半分は本当であって、半分が嘘だ。
したがってここに書かれている「最後の証言」も、そうかもしれない。実行犯をイニシャルで、拉致犯の一人を実名で指名しているが、指名の理由はやはり関係者の証言である。物証は全くない。
また著者は、黒幕の「政治家」が誰かを推理しているが、その安直さに疑問を感ずる。
なぜ黒幕は政治家でなければならないのか?彼は犯人グループを知っていたと考えられるが、はたしてフィクサーだったのか?
もしこの事件が国鉄の○○がらみの犯罪ならば、政治家ではなく、▲▲家の方が怪しいだろう。しかし名指ししてしまうと、未だ差し障りがあるの人なのかもしれぬ。そこで敢えて政治家の名前を挙げたのではないか。
またこの下山事件と、同じ年の真夏に起きた未解決事件である、三鷹事件、松川事件との関係を説明していない。国鉄に関わる、これほどの大事件が、それぞれ独立な事象だったのか?
この本のおかげで、下山事件は一層謎が深まった。

下山事件 最後の証言 祥伝社 2005

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下山事件 最後の証言 祥伝社 2005” への2件のフィードバック

  1. 「下山事件」最後の証言 柴田哲孝著

    昭和24年7月6日午前0時24分、上野発松戸行の最終電車第2401Mが、定刻どおりに北千住駅を発車して、東武ガード線を通過した頃、運転手が点々と散乱する赤い肉塊を発見する。おりから雨が降り出する中、鉄道員や警察関係者らが約90メートルに渡り飛び散った遺品と肉片を調べはじめる。
    「国有鉄道総裁 下山貞則」
    と書かれた名刺を発見し、この5つの部分に切断された無残な轢死体が、昨日から三越本店で失踪していた初代国鉄総裁の下山だったと騒然とす�…

  2. 「下山事件」最後の証言 柴田哲孝著

    昭和24年7月6日午前0時24分、上野発松戸行の最終電車第2401Mが、定刻どおりに北千住駅を発車して、東武ガード線を通過した頃、運転手が点々と散乱する赤い肉塊を発見する。おりから雨が降り出する中、鉄道員や警察関係者らが約90メートルに渡り飛び散った遺品と肉片を調べはじめる。
    「国有鉄道総裁 下山貞則」
    と書かれた名刺を発見し、この5つの部分に切断された無残な轢死体が、昨日から三越本店で失踪していた初代国鉄総裁の下山だったと騒然とす�…

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