ロバート・ドーナットとマデリーン・キャロルが主演して、アルフレッド・ヒッチコックが監督するスパイ映画。原作はカナダ総督で冒険小説家ジョン・バッカンの小説で、チャールズ・ベネットが脚色している。
共演はルチー・マンハイム、ゴッドフリー・タール、ペギー・アシュクロフト等。白黒映画
あらすじ
カナダ人ハネーは暇つぶしにロンドンのイーストエンドにある劇場に入った。舞台では記憶術を身につけたミスタ・メモリーという芸人が客から出され質問に答えていた。突如一発の銃声がした。恐怖に凍りついた観客は舞台出口に殺到した。ハネーは自分に寄り添ってきた女に助けを求められる。ハネーはひとまず自分のアパートに誘う。女は国際スパイで、イギリスの国防機密
を外国に売ろうとしているスパイを追跡中、敵に感づかれたという。敵幹部はスコットランドにいる小指の無い男だとも言った。ハネーが寝ている間に女が刺殺されていた。「スコットランドへ行って」と言うと女は絶命した。ハネーは女殺しの容疑者にされてしまった。スパイ自身を捕らえて身の潔白を証明しようと決心する。
ハネーは列車でスコットランドに向かったが、事件を掴んだ警察は車中を捜索し始めた。ハネーはある女性パメラに助けを求めるが、パメラは彼を警官に引き渡そうとする。彼は扉から外に逃げた。殺された女から聞いた名前はジョーダン教授だった。ジョーダンに会うと彼こそ小指の無い男で、自殺しろと勧められた。
ハネーは逃げ出して、選挙運動会場に跳び込み、スピーチを打った。しかし彼を殺人犯と思っているパメラと出会い、居合わせた警官にハネーを引き渡される。ところが警官は彼女とハネーを一つの手錠に掛けて何処かへ拐おうとする。彼らは教授の部下だったのだ。
ハネーはパメラと手錠で繋がれたまま逃げ出して、駆け落ちカップルに化けて宿屋に泊まった。ハネーが眠っている間に手錠を抜いたパメラは外で、スパイの部下が電話で喋っている内容を聞いた。パメラはハネーに電話の件を話した。どうやらロンドンの劇場で誰かが落ち合うらしい。
夜になってハネーはロンドンのパラディアム座へ行った。舞台にはミスタ・メモリーが出ていた。ボックス席にはジョーダン教授がいた。ハネーはスパイたちがよく言う符号である「39夜」とは何かと訊ねる。「それは或るスパイの名称で某国の秘密を……」と答え出した瞬間、銃声と共にミスタ・メモリーは倒れる。銃を発射した教授は警官隊に取り押さえられた。メモリーは「教授から英国防空網の秘密を暗記させられ、今夜国外へ連れて行かれる筈だった」と語って亡くなった。
雑感
アルフレッド・ヒッチコック得意の巻き込まれサスペンス映画。
タイトルがなぜ「三十九夜」になったのか不思議だ。原題は「三十九階段」である。死刑台の13階段と混同させないためだろうか。
ロバート・ドーナットは好きなタイプではない。マデリン・キャロルは美人なのに、出番は後半中心だ。
のちにラルフ・トーマス監督によりリメイクが作られる。
スタッフ
原作 ジョン・バッカン
脚色 チャールズ・ベネット
監督 アルフレッド・ヒッチコック
撮影 バーナード・ノウルズ
キャスト
リチャード・ハネイ ロバート・ドーナット
パメラ マデリーン・キャロル
スミス嬢 ルチー・マンハイム
ジョーダン教授 ゴッドフリー・タール
クロフター夫人 ペギー・アシュクロフト
クロフター ジョン・ローリー
ジョーダン夫人 ヘレン・ヘイ
判事 フランク・セリア
ミスター・メモリー ウィリー・ワトソン