長きに渡った治世末期のヴィクトリア女王と英領インドの青年の知られざる実話を映画化。
監督はスティーヴン・フリアーズで、百十年ぶりに明らかになったムスリムの日記をもとに書かれたシュラバニ・バスの原作をリー・ホールが脚本化した。
主演は大女優ジュディ・デンチと「きっと、うまくいく」のアリ・ファザール

 

あらすじ

ビクトリア女王即位50周年記念式典のためインドから派遣されたアブドゥルは、その率直さをビクトリア女王に気に入られ女王の従者に取り立てられる。女王は彼の母国語がヒンディー語だと思っていたが、彼はムスリムでウルドゥー語が母語であり、女王に言語や文化を教える。女王はますます彼に魅了され、ムンシ(師匠)の称号で呼ぶようになる。
アブドゥルに妻がいたことが分かるが、女王は家族を英国に呼んで、ワイト島にある離宮オズボーン・ハウスの別邸に住まわせる。そしてアブドゥルにインドの寸劇を披露させて、閣僚や廷臣に見せる。それを見て皇太子バーティーはアブドゥルの排除を図ることになる。
アブドゥルの粗探しを始めたバーティーは、女王にセポイの乱の原因をヒンディー人であったと嘘を吐いていた事を知る。実は上級ムスリムのセポイ兵が食事に豚肉を食わされると思って反乱を起こしたのが起源だった。今度こそ女王はアブドゥルに怒鳴るが、結局は許す。
バーティーはアブドゥルが淋病であり、彼の身分の低さを指摘するが、そして宮廷内で孤立している事を身分が低いからだと考えて、ナイトの称号を与えると宣言する。これには全ての使用人が反対する。そこで女王は妥協してコマンダーの称号を与える。
アブドゥルは英国にやってきて以来14年が経った。女王は死の床にあった。女王はムンシと話したいと言われ、最期の言葉を交わす。
女王が崩御されるとバーティーがエドワード7世として即位し、アブドゥルが宮廷にいた証拠を全て焼却してしまう。アブドゥルはインドへ帰国して、故郷アグルに帰り、タージマハールにあるビクトリア女王像に毎日参っていた。そして女王が亡くなった八年後、アブドゥルも亡くなる。

 

雑感

 

ビクトリア女王が、パキスタン人のムスリムを従者として重用していたのは事実。多分インド支配を強固なものにするために、女王なりに気を使ったのだろう。
異民族との融和を求めるのは、女性君主ならではの気配りだろう。
息子のエドワード7世は、排他主義者だったから英国連邦は弱体化するのだ。

 
映画としては、プライドの高い英国人がムスリムを師呼ばわりする女王を嫌がるのは当然として、淋病である事を明らかにしたこともプロの評価を下げたと思う。私も必要があったかと疑問だ。

スタッフ・キャスト

 

監督 スティーヴン・フリアーズ
プロデューサー ティム・ビーヴァン 、 エリック・フェルナー 、 ビーバン・キドロン 、 トレイシー・シーウォード
原作 シュラバニ・バス
脚本 リー・ホール
撮影 ダニー・コーエン

配役

ヴィクトリア女王   ジュディ・デンチ
アブドゥル・カリム    アリ・ファザール
皇太子バーティ(エドワード7世)   エディ・イザード
モハムド      アディール・アクタル
サリスベリー伯    マイケル・ガンボン
サー・ヘンリー    ティム・ピゴット=スミス

 

ヴィクトリア女王 最期の秘密 Victoria & Abdul 2017 BBCフィルムズ製作 ユニバーサル・インターナショナル配給 ビターズ・エンド=パルコ国内配給

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