1945年1月に「バルジ大作戦」で連合軍(米英軍)に敗戦したナチスドイツはフランスを放棄してドイツ国内に逃げ込んだ。ライン川西岸都市(デュッセルドルフ、ケルン、ボン)も諦め、ベルリンに籠城すべくライン川に掛かる橋を次々と落としていった。そうして最後に残った橋がレマゲン鉄橋である。ところがドイツの職人が作った橋は堅固過ぎた。この橋を挟んでのナチスドイツの撤退戦を描いたのが、この映画である。この小さな戦いがドイツ軍の勝利で終わっていれば、東西ドイツの国境線はライン川になっていただろう。
監督は「タワーリング・インフェルノ」のジョン・ギラーミン。主演はジョージ・シーガル、ベン・ギャザラ。共演はロバート・ボーン、ハンス・クリスチャン・ブレヒ。
あらすじ
フォン・ブロック将軍に呼ばれたクリューガー少佐は、レマゲン鉄橋を破壊する前にできるだけ多くのドイツ兵をライン川東岸に運ぶように命令を受ける。ところが、現場に到着すると、書類上の火力も火薬も兵力も既に無かった。そこで限られた火薬だけで素早く効率的に橋を爆破することに作戦を変更する。しかし米軍のカッティングエッジ(先陣)は既にメッケンハイム市街地を越えてレマゲンに到達しようとしていた。米軍も当初はレマゲン鉄橋爆破を目的としていたが、シナー准将が敵戦力を見て自軍戦車部隊で押し切れると考え、歩兵中隊による作戦目的を爆破から確保へと急遽変えてしまった。そこで橋の上で銃撃戦が始まる。ドイツ軍は無事に火薬を配置し終えてスイッチを入れ、大爆破が起きる。ところが欄干を壊したが橋本体は残ってしまった。ドイツ軍伏兵に部下のアンジェロ軍曹を殺されながら、ハートマン中尉は生き残り、橋を渡り切る。
雑感
史実では対岸に一番乗りしたのは、中尉でなく軍曹だったらしい。
テレビ版では目立たないが、上映版やDVDを見るとカール・シュミット大尉(ハンス・クリスチャン・ブレヒ)が重要な役だと分かる。映画の設定では、元校長でありレマゲン市民から先生と愛されていて、彼らを道連れに玉砕できないと最後にハートマン中尉(ジョージ・シーガル)に対して白旗を揚げる。
クリューガー少佐(ロバート・ボーン)は当初、親衛隊が逃亡兵を射殺する様子を見ていて情けなくなるが、自分が指揮する撤退軍が追い詰められた時、思わず逃げ出すドイツ兵を射殺してしまい、一般ドイツ人に吊し上げられる。そこから逃げ出して本部に帰るが、撤退の失敗の責を問われ処刑される。史実では撤退軍の指揮官5人中4人が処刑されたそうだが、1人は連合軍捕虜になったため処刑を免れている。これがカール・シュミットに当たる人物だと思われる。
ハンス・クリスチャン・ブレヒは他にもアメリカ映画でのナチス悪役に多用されている。さらにヴィム・ヴェンダース監督作品にも重要な役でしばしば出演していた。
最後に錯乱したハートマン中尉だけが生き残り、アンジェロ軍曹(ベン・ギャザラ)が戦死するのが、ベストな終わり方だったと思う。しかし1968年制作という時代を考えると、ベトナム戦争の厭戦気分を盛り上げることは避けたかったのだろう。だから両方とも生かしてハッピーエンディングにしたのではないかと思う。
また、この映画からオペレーション(軍事作戦行動)における目標設定の重要性が分かる。現場に行き着くまでは、いくつかのオプションを持っていた方が安全だ。直前になって予想外の作戦変更があった場合、チーム全体にそれが伝わず、現場が混乱する恐れがある。
この映画の作戦に感しては、米軍はスピード重視だったために、青二才の大隊長(バーンズ少佐)が適格なオプションを設定できず、現場に混乱が生じてしまった。
ちなみにレマゲン鉄橋はルーデンドルフ橋とも云われた頑強な橋で、関東大震災後に建てられた今の永代橋(隅田川)の原型である。米軍戦車隊が通り過ぎた後、修繕中に崩落して、米軍兵士20余名が犠牲になった。
スタッフ・キャスト
監督 ジョン・ギラーミン
製作 デイヴィッド・L・ウォルパー
脚本 リチャード・イェイツ、ウィリアム・ロバーツ
原案 ロジャー・O・ハーソン
撮影 スタンリー・コルテス
特殊効果 ローガン・フラジー
音楽 エルマー・バーンシュタイン
配役
ハートマン中尉 ジョージ・シーガル
アンジェロ軍曹 ベン・ギャザラ
クルーガー少佐(独) ロバート・ヴォーン
カール・シュミット大尉(独) ハンス・クリスチャン・ブレヒ
バーンズ少佐 ブラッドフォード・ディルマン
シナー将軍 E・G・マーシャル
フォン・ブロック将軍(独) ペーター・ファン・アイク