様々な問題を抱えるニューメキシコに住む一家がミスコンに出場する娘のためにカリフォルニアまで出かけて家族の絆を取り戻す名作ロード・ムービー。
ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリス夫妻の監督デビュー作品。サンダンス映画祭で公開するとフォックス・サーチライトが同映画祭史上最高額で買い取ったそうだ。
主演はグレッグ・ギニア、トニ・コレット、スティーブ・カレルらで、共演アラン・アーキンがついにアカデミー助演男優賞を受賞した。
また、初脚本を書いたマイケル・アーントがアカデミー脚本賞を受賞している。
あらすじ
妻シェリルはプルースト研究家でゲイの兄フランクの自殺未遂を聞いて病院に駆けつけた。軽傷で済んだが、手首の包帯が痛々しい。しばらくシェリルの家族と同居することになる。
娘オリーブは子供だけが出場できるミス・サンシャイン・コンテストに明日出場できることになり、張り切っている。振付は、誰もまだ見ていないが、老人ホームでヘロインを吸って追い出された祖父が付けてくれた。長男のドウェインは、空軍士官学校に入学できるまで無言の行を貫いている。父リチャードはコーチング本を売り出そうと必死になっているは、売れ行きが捗々しくない。
兄を一人にしていけないと、妻は全員で参加することを提案し、夫と長男の反対を押し切る。翌日全員で出発するが、ワゴンカーのクラッチの調子が悪く、故障がちで人間関係までギクシャクしている。とくに夫は面と向かって、兄に負け犬と言う。ところが夫に出版プロデューサーから電話がかかって来て、契約を切られる。それで生活設計が狂い妻と言い合いになるが、祖父は一生懸命チャレンジした人間が勝ち組なのだと諭す。その日はモーテルに泊まって、翌日出発しようとすると祖父が死んでいた。ヘロインの過剰摂取が原因だ。しかしオリーブを時間通りに会場へ行かせるには、葬儀屋に回っている暇はない。仕方なくシーツに遺体を包み、トランクに入れて出発する。今度は長男ドウェインが色弱であることに気付き、パイロットの夢を絶たれたと車中で暴れ出す。幸いオリーブが慰めて落ち着いたが、集合時間に4分遅れてしまう。それをねじ込んで何とか出演させることができるが、周りの出演者は、スラッとした子ばかりで、特技も子供とは思えないものばかりだ。ところが祖父が振り付けたオリーブのダンスはストリップダンスだった。ブーイングが起きる中、オリーブは祖父の弔いと信じて熱演している。最後は家族も壇上に上がり、一緒になって踊ったが、主催者から警官を呼ばれて注意される始末だ。
それでも一家の連帯感は以前より強くなり、笑顔になってアルバカーキの帰途につく。
雑感
面白いだけのコメディではなく、少しほろ苦で登場人物が皆成長していくのがとても良い。サンダンス映画祭向きだ。
芸達者なメンバーをキャスティングできたことが、このプロデューサーの勝利だろう。トニ・コレット、スティーブ・カレル、アラン・アーキン、グレッグ・ギネスはみんな名のある俳優であり、それなりのギャラを持って帰るものだ。だから予算は800万ドルとなってしまい、ロードムービーにしては決して安くはない。
しかしフォックスの子会社が太っ腹なところを見せて高額で買い取って、さらに世界興行収入が一億ドル越えという好成績。最も喜ばしいのは、ついにアラン・アーキンにオスカーをもたらしてくれた。まさか出演を決めた時は、この映画が大ヒットすると思っていなかったろう。
スタッフ・キャスト
監督 ジョナサン・デイトン 、 ヴァレリー・ファリス (夫妻)
製作 マーク・タートルトーブ 、 デイヴィッド・T・フレンドリー 、 ピーター・サラフ 、 アルバート・バーガー 、 ロン・ヤークサ
製作総指揮 ジェブ・ブロディ 、 マイケル・ビューグ
脚本 マイケル・アーント (アカデミー脚本賞)
衣裳デザイン ナンシー・シュタイナー
音楽 マイケル・ダナ
挿入曲 デヴォーチカ
配役
長女オリーヴ アビゲイル・ブレスリン
父リチャード グレッグ・キニア
長男(連れ子)ドウェーン ポール・ダノ
祖父グランパ アラン・アーキン (初のアカデミー助演男優賞)
妻シェリル トニ・コレット
妻の兄フランク スティーヴ・カレル