日本独自のノーカット版(219分)で見た。(オリジナルは160分版)
ノーカットって、得したように感ずるかもしれないが、実際に見てみると、時間が延びた分だけ意外と情報量が薄くなって、最終的には見て損したな、と言う気になるものだ。
この映画もご多分に漏れず。二時間半の枠に収まっている方が、ずっと映像美あふれる、象徴的な良い映画になったと思った。
ベルトルッチ監督の映像美を追求する姿勢には感服したが、それを3時間半も見せられると、さすがに辛い。
坂本龍一の音楽は「シェルタリングスカイ」同様にバブリーな音楽を展開している。
美しさでは天下一品だ。
しかし現代に聞き直すと、心に響いてこないのは何故だろう。
いかにも映像も音楽も、日本的なバブリーなバージョンと言えよう。
 

清朝最後の皇帝溥儀が辛亥革命によりその座を追われるが、日本により満州国の皇帝として復帰する。
それは関東軍の傀儡政権でしかなく、皇帝とは名ばかりのものだった。
そして太平洋戦争が終了し、溥儀はソ連から中国共産党に引き渡される。
十数年間監獄に繋がれるが、後に釈放される。
文化大革命で世の中が揺れ動く最中、庭師として平和な晩年を送る。
 

 

ストーリーは単線でなく、誕生からのエピソードと監獄生活とを複線で描いている。
ストーリーは日本人の知らない話があるわけじゃなし、追っても仕方がない。
あくまでも映像美を楽しめばよい。
ストーリーで楽しみたければ、李香蘭の話や男装の麗人川島芳子の話の方が、何倍も面白いだろう。
 

香港映画や中国本土の映画で普通の中国人を見慣れているから、中国人がおっとりした英語をしゃべるのには違和感があった。
ベルトルッチは中国をステレオタイプで見ているのかもしれない。
もっとも日本も中国も宮中はおっとりしてるのかもしれないが。
 

ジョン・ローンは南方系の顔だ。
彼が北方系満州族の皇帝を演じるのも、引っかかるものがあった。
坂本龍一の甘粕大尉も実際とはかなり違っていた。
関東軍マニアには文句のあるところだろう。

ラストエンペラー 1987 イタリア

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