RKOのドア・シャーリーが製作した政治ラブコメ映画。
エストニア出身でジュニー・ターヴィタエのスウェーデン語版戯曲をもとにして、アレン・リヴキンローラ・カーが共同脚本を書き、H・C・ポッターが監督した。
主演はロレッタ・ヤングでこの演技でアカデミー主演女優賞を受賞した。共演はジョセフ・コットン、エセル・バリモア、チャールズ・ビックフォード。白黒映画。

あらすじ

スウェーデンからの移民ホルムストローム家は、ミネソタの荒れ地を開拓して小麦農場を経営している。
娘カトリンは看護婦志望で、親兄弟と離れて州都セントポールに向かう。ペンキ屋のアドルフが帰ると言うので、その軽トラックに便乗する。しかし夜になって、酒に酔ったアドルフが事故を起こした。トラック修繕代は、アドルフが持っていないというのでカトリンが出した。そのため2人は仕方なくモーテルの別室に泊まった。夜中にアドルフがちょっかいを出したが、気丈なカトリンは撃退した。

翌朝、起きてみると、アドルフは一人で発ってしまっていた。カトリンは修理費で金を全部使ってもう無一文だったので、セントポールまでヒッチハイクして行った。そこで彼女はミネソタ州の上院議員グレン・モーレイの邸でメイドとして働いて、看護学校に入る学資を貯めた。彼女は、政治家の間に入っても物怖じせず、ズケズケと主張を展開し、それが理に適っているので有名になった。

2ヶ月後、既に冬になっていたが、カトリンは学資が貯まったので、退職したいとグレンに言った。グレンは別離を惜しんだ。そしてカトリンに奨学金を出すから大学で政治を学んではどうかと奨める。カトリンの心は動き、承諾する。

グレンの母が風邪を拗らせたから、グレンがヨーロッパへ視察旅行へ出かける間、彼女の世話を看てくれと頼む。グレンがようやく帰国したとき、急死した下院議員の補欠選挙が行われることになった。党委員会は、フィンレイを候補に立てる。
しかしカトリンは、地元民だったので様々な彼の醜聞を知っていた。彼の立候補発表会では、旧悪を暴いた。カトリンは、モーレイ家にいられなくなるが、喜んだ反対党はカトリンに立候補を求める。モーレイ夫人も、フィンレイに胡散臭さを感じていたので、彼女を喜んで選挙に送り出す・・・。

雑感

第一次世界大戦後、女性の政治参加を促すため、米国ではウィルスン大統領が1919年に憲法改正して、元々州ごとに認めていた婦人参政権を連邦レベルで認めた。だから、それから30年近く経って、この映画は公開されている。
しかし、1946年に婦人国政参政権が認められ衆議院選挙で戦後最大となる39名の女性議員が生まれた日本では、旬の映画として公開されただろう。

昔、UHF局で一度観たのを覚えている。今回改めて観たが、だいぶん覚えていた。頬骨の張った34歳のロレッタ・ヤングが、当時バリバリの現役だった越路吹雪に似ていると思ったものだ。ジョセフ・コットンが相手役だったのは忘れていた。

暁テル子の歌「ミネソタの卵売り」(1951)と言う題名は、当時作詞家佐伯孝夫のもとにミネソタ州出身の友人が来ていたせいという説が有力だ。
筆者は、早稲田大学仏文科卒業の佐伯孝夫が、この映画「ミネソタの娘」を観て、ミネソタ娘の勇敢さに感銘したという説を採りたい。ミネソタが特別、卵の名産地であったわけではないと批判される。しかし冷寒地ミネソタは北海道に似た農業地帯で、開拓民は大柄の北欧移民である。彼らは、余った卵は売るに決まっている。何より映画でグレンがカトリンの実家に初めてやって来た時、カトリンは鶏にエサをやっていた。

スタッフ

製作  ドア・シャーリー (RKOラジオの撮影所長)
監督  H・C・ポッター
脚本  アレン・リヴキン、ローラ・カー
原案  ジュニー・ターヴィタエ
撮影  ミルトン・クラスナー

 

キャスト

カトリン(家政婦)  ロレッタ・ヤング (アカデミー主演女優賞受賞)
グレン・モーリー上院議員  ジョゼフ・コットン
モーリー夫人  エセル・バリモア
執事クランシー  チャールス・ビックフォード
新聞記者バージニア  ローズ・ホバート
ノーディック  トム・パワーズ
ペンキ屋アドルフ  ライス・ウィリアムズ
ストヴェン医師  ハリー・ダヴェンポート
スヴェン(兄弟)  レックス・バーカー
父ホルムストルム  ハリー・シャノン
ジョンストン  サーストン・ホール
フィンリー候補  アート・ベイカー
母ホルムストルム夫人  アンナ・Q・ニルソン

***

両党伯仲した選挙戦の最中、フィンレイ選挙事務所にアドルフが訪れて来た。目的は、カトリンの醜聞を売ることだった。グレンや党幹部たちは聞く耳を持たなかったが、フィンレイは彼を買収して、モーテルでの件を新聞記者バージニアに面白おかしく書き立てさせた。選挙戦終盤になって、醜聞が出回ったので、カトリンは選挙を諦めて田舎へ帰る。

彼女の後を追って来たグレンは、カトリンと愛を確かめ合う。彼女の父に結婚の許可をもらいに行くと、曲がったことが嫌いな人で、まず選挙を戦い抜けと激励される。モーレイ夫人はフィンレイに酒を飲ませ、アドルフを別荘に保護していることを知る。さらに彼自身は、党の方針に反して白人至上主義の考え方の持ち主であることも聞き出す。
グレンとカトリンの兄弟は、アドルフを捕らえて、放送局で新聞に書いてあることは嘘だったと放送させる。フィンレイは、党の立候補を外され、カトリンは両党の公認を得て当選した。
そしてグレンと相たずさえてワシントンの国会議事堂に向かう。

ミネソタの娘 The Farmer’s Daughter (1947) ドア・シャーリー・プロ+ヴァンガード・フィルム 製作 RKO配給 セントラル映画社国内配給(1948年日本公開)

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