真珠湾攻撃が始まり、同時に日本陸軍は南方作戦を開始した。マレー半島からの英国勢力の排除を目的としたものがマレー作戦である。北から上陸し、1942年2月にはシンガポールの英軍を陥落させた。その戦闘に巻き込まれ日本軍捕虜となって運命を翻弄された英国人女性の実話に基づいた作品である。

SF小説「渚にて」を著したイギリス・オーストラリアの人気作家ネビル・シュートの原作大河小説(1950)の前半部分をジャック・リーが監督した。主人公はヴァージニア・マッケンナ、ピーター・フィンチ、ケンジ・タカギ(日本生まれの日本人だが戦前に英国籍取得し、戦時中は日本軍捕虜となる)。
この作品は56年度英国興収ランキング三位になった。1982年にテレビシリーズとしてリメイクされたが、そこでは小説の後半も加えて、原作の完全なドラマ化を行った。主演ブライアン・国際エミー賞やロギー賞で多数受賞している。

 

あらすじ

 
太平洋戦争の1942年マレーに日本軍が迫り、シンガポールに退避命令が出るが、逃げ切れずジーンら数人が日本軍捕虜になる。女性収容所の移されるため、港まで80キロを歩いてシンガポールへ渡る船に乗る予定だったが、はるばる港に着くと乗船を断られる。マレーには女性捕虜収容所を十分用意していなかった。おかげで様々な収容所を訪ねて回るが、たらい回しされる。そんなときジーンはオーストラリア人捕虜のジョーと出会う。彼は薬品を差し入れしてくれる。それからも機会がある毎に、ジョーと逢瀬を重ねる。ジョーは故郷のアリス・
炎天下のせいで産後の肥立ちが悪かった夫人が三人の幼子を残して死んでしまう。やがて雨期に入ると、汚染された水で子供たちも亡くなる。そのとき「軍曹」と呼ばれていたタカギ警備兵は自分の子供を亡くしたように悲しんでくれた。

 
ジョーは彼女たちに栄養を付けてもらおうと鶏を盗むが、日本軍にバレて処刑されるという。ジーンはジョーの最後を見られず、その場を去り、次の収容所を探すのだった。軍曹の体調が悪くなり、ある村で休ませてもらう。ジーンに、胸ポケットに隠していた子供の写真を見せてもらった軍曹は、心置きなく逝った。
警備兵が居なくなり、ジーンら生き残った女性は、村の農業を手伝うから、匿ってほしいと願い出る。
3年後、英国は勝利し、村に隠れていたジーンは解放されロンドンに戻った。親戚が死んで遺産がころげこんだことから、ジーンは一念発起してマレーシアに行って井戸を掘る決意をする。そして井戸を掘り当てたとき、ふとジョーのことを思い出す。ジョーを知っていた人に尋ねると、ジョーは処刑されず病院に入って、戦後は解放されてオーストラリアの故郷に帰ったという。ジーンはジョーこそが運命の人と信じて、行方を探す。
 

雑感

A Rape of Malaya という扇情的な副題がついていたから見るのは躊躇ったが、実際に見ると日本兵にも悪い奴、セクハラ大好き野郎、無関心な奴、単純に良い人がいることを描き分けられている。もちろん日本兵役は日本人だけでなく、日系二世や中国系も起用されているから、ときどき日本語が覚束ない。
この作品がカンヌ映画祭に参加することになりピーター・フィンチは渡仏したが、直前に英国側が忖度して降りたと言うのが真実らしい。(非公式上映はされたそうだ)確かに政治色がある映画は国際映画祭に相応しくないが、この程度の誤差や立場の相違なら問題ないのではないか。
 
しかし当時、英語を話せる将校がこんなにたくさん居たのだろうか。その割にみんな偏っている気がした。外国留学していじめられたからかな。途中で西洋美人エレンを愛人か娼婦にスカウトした将校は、自分のためにしたのではないだろう。大佐あるいは将軍クラスの命令だろうな。従軍慰安婦がまた一人生まれた。

 
ほとんどの日本将兵は、外人女性に好奇な目を向けこそすれ、基本的にはコミュニケーションできないから、臆病で無関心。その中で女性の荷物を率先して持ったりして一行の便利屋扱いされた高木軍曹が女性皆に愛されたのは心温まった。女性陣は全員ずいぶん上から目線だったが。
 
尚、実話はスマトラ島で起きたことらしい。

スタッフ・キャスト

 
監督 ジャック・リー
製作 ジョゼフ・ジャンニ
原作 ネヴィル・シュート
脚色 W・P・リプスコーム 、 リチャード・メイスン
撮影 ジェフリー・アンスワース

 
ジーン ヴァージニア・マッケナ
ジョー ピーター・フィンチ
軍曹 ケンジ・タカギ
菅谷大佐 トラン・ヴァ・ケ
ミス・ホースフォール ジーン・アンダーソン
フロスト夫人 マリー・ローア
エレン モーリーン・スワンソン
エビー ルネ・ヒューストン

 

マレー死の行進/アリスのような街 A Town Like Alice 1956 イギリス製作 BCFC=新外映配給

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