◎総合評価
Ultrasone から比較的まともな(大人しい音がする)ポータブル開放式ヘッドホンとして発売された Edition 11である。木のハウジングが魅力的だ。もちろんS-Logic Plus搭載機だ。
良い点は、S-Logicの効果で前から音が聞こえることだ。これはありそうでなかなかないことなのだ。でもスピーカー的な音ではない。聞いたことのない鳴り方である。開放式だから、少なくとも変態的な密閉式Edition8系や5系とは違う。
ジャズ・ボーカルあるいは声楽、管弦楽向きだ。
なおケーブルは、自作してもらったMogami2922のバランス・ケーブルである。
このコネクタは、標準でないとヘッドホン側の癖が悪くたまに勝手に外れる。これは評価点に現れない欠点である。
◎部門別評価
満足度 3
デザイン 5
高域 4
中域 4
低域 4
音漏れ 2
どこといって悪いところは見当たらない。かと言って絶対無比という点もない。
ただし上には上がいる。上位機種Ultrasone社のEdition15と比べると、E11は人工的な反響音が多すぎてややうるさい。霧の中で音楽を聴いているような気になり、少しぼんやりしている。E11のハウジングが木材であることも、関係していると思う。
◎ジャンル別に確認しよう。ソースは全てハイレゾ、プレイヤーはウォークマンNW-WM1Zだ。
交響曲
○クリュイタンス全集からベートーベン交響曲第九番「合唱付き」クリュイタンス指揮ベルリン・フィル(ハイレゾ)
フランス人指揮者らしい明るい音作りだが、やはり煙がかかったような演奏だ。音場感はHD800S程ではないが、かなり広い。特に管楽器は高さと奥行きに壮大さを感じる。
声楽曲
○カルロス・クライバー指揮ウェーバー作曲オペラ「魔笛」演奏ドレスデン国立管弦楽団(ハイレゾ)
かなりダイナミックレンジを意識した演奏のようだ。クリュイタンスほどには、感激しなかった。
打楽器
○芸能山城組演奏、管弦楽組曲「AKIRA」(DSD)
唯一所有するDSD11.2MHzの音源。
パーカッションにDCフェーズリニアライザーを合わせると、かなり迫力を感じる。ただし上位機種E15と比較すると、体に響くということがあまりない。
ジャズ
○宮沢昭カルテット「木曽」から表題曲(ハイレゾ)
霧を被ったような音にサックスはぴったりだ。
ジャズ・ボーカル
○Julie London アルバム「Julie is Her Name」から「I’m in the Mood for Love」(ハイレゾ)
古い録音だが開放式だから全く気にならない。暖色系の音だ。
男性ボーカル
○柳ジョージ&レイニーウッド、アルバム「YOKOHAMA」から「雨に泣いてる」(ハイレゾ)
ギター、ピアノやベース、バスドラはいい感じで鳴っている。
シンバルは大人しい。
女性ボーカル
○荒井由実、アルバム「Yuming Brand」から「あの日にかえりたい」(ハイレゾ)
演奏に抑制が掛かって、ボーカルを引き立てている。いいと思う。
ロック
○Asia の「Alpha」をハイレゾで聞く。
ヘッドホンが弱いドンシャリなので、ロックの場合イコライザはドンシャリにした方が良い。プレイヤーがソニーだから、カラフルには聞こえないが、悪くはない。ASIAみたいなプログレ崩れのハードロックには、開放式も合っている。ただしやはり少し過剰なリバーブを感じる。