1993年秋にソマリアで起こった「モガディシュの戦闘」を、監督リドリー・スコットが映画化した。敵地に取り残されて絶望的状況に置かれた兵士たちの姿を描いた戦争映画。
監督リドリー・スコット、製作ジェリー・ブラッカイマー。
主演ジョシュ・ハートネット、共演ユアン・マクレガー。
あらすじ
1990年代に入り、アフリカ東部の半島にあるソマリアで内戦が激化する。南部部族のアイディード将軍は首都モガディシオを征服した後、国連が少数部族に配給した食料を強奪した。
1992年12月にブッシュ大統領が米国海兵隊が展開している間は、アイディード派は動かなかった。クリントン大統領が就任して一部を撤退させたため、アイディード将軍は6月に国連パキスタン兵24名を虐殺する。
1993年10月3日、前線司令官ガリソン少将は、アイディード派幹部の会合での逮捕を狙って、陸軍レンジャー部隊とデルタフォースを派遣する。
昼過ぎに作戦開始して16時前になってようやく米軍ヘリ隊は目標に到着し、降下した米兵は侵攻を開始する。ブラックホークに乗っていたエヴァースマン班も降下するが、ソマリアの強襲により、ブラックバーン新兵が一人落下してしまう。エヴァースマンは負傷した彼を救助し、デルタ隊はアイディード派が会合を開いていたビルに侵入した。
しかし敵の攻撃に遭ったブラックホークが1機墜落し(We got a Blackhawk down!)、戦況は一気に悪化する。計画通りならとっくにジープに拾われて基地でコーヒーを飲んでいるはずだったエヴァースマンは墜落事故の生存者確認のため、徒歩で墜落地点に移動するが、生存者は二名いた。
その墜落地点周辺にはソマリア民兵も続々と到着して、対戦車ロケットグレネードRPG-7を使ってブラックホークをさらに1機墜落させ、ついに本格的市街戦へ突入してしまう。
残された隊の脱出を図るため、デルタの古参兵フートが基地から志願兵三人の部下を連れて再出発した。
二機目の墜落機にはパイロット二名が生存していたが、民兵が蟻のように集ってきて、結局一名が殺され、もう一名は人質になった。
ガリソン少将は全車両を投入し、国連パキスタン軍にも応援を依頼して兵士を避難させることを決定する。
17時50分、イスラム教のお祈りのため、民兵は静かになり、その隙をついて、数人の米兵がエヴァースマン班と合流しようとするが、銃撃されスミス伍長が大腿動脈切断の重傷を負う・・・。
雑感
ジョシュ・ハートネット(エヴァースマン班長)が目立っているが、誰が主役というわけでもなく、群像劇である。
初めの30分は静かだったが、そこからは休むことなく戦闘シーンの連続だった。
ユアン・マクレガー(グライムズ)の役柄は、普段デスクワークしかしたことのない男が、初めて実戦に投入され活躍してしまい、自らの凶悪性に目覚めるということか。実際に2000年、6歳になる実娘を強姦して逮捕されている。
エリック・バナが演じたフート軍曹は階級こそ意外に低い(デルタ第一軍曹)だが、テロに対するスペシャリストで暗殺はお手の物だ。この人が画面に登場するだけで、007のように安心感が得られた。
計画の失敗理由は、レンジャー部隊の練度の低さ、気の緩みが挙げられる。しかし最大の原因はビル・クリントン民主党政権や政治側が、作戦をできるだけ目立たないものにしようとして低コストで済ませようとした政治的せこさのせいだ。その結果、思ったよりも何十倍も高いものに付いてしまった。これ以後、戦争はAI戦争やロボット戦争の形を取る。
また、いまだにソマリアの統一は成し遂げられていない。
アイディード将軍は結局、バックについていた武器商人アリ・アトに裏切られ暗殺される。それを見届けてからサム・シェパードが演じたガリソン少将は退官する。
スタッフ
監督 リドリー・スコット
脚本 ケン・ノーラン
原作 マーク・ボウデン
製作 リドリー・スコット、ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 サイモン・ウェスト、マイク・ステンソン、チャド・オーマン、ブランコ・ラスティグ
音楽 リサ・ジェラード、ハンス・ジマー
撮影 スワヴォミール・イジャック
キャスト
エヴァースマン二等軍曹(レンジャー) ジョシュ・ハートネット
グライムズ特技下士官(レンジャー) ユアン・マクレガー
マクナイト中佐(上官) トム・サイズモア
フート軍曹(デルタ) エリック・バナ
サンダーソン軍曹(デルタ) ウィリアム・フィクナー
ネルソン特技下士官 ユエン・ブレンナー
ギャリソン少将(司令官) サム・シェパード
スティール大尉 ジェイソン・アイザックス
ブラックバーン上等兵(新兵) オーランド・ブルーム
トゥオンブリー特技下士官 トム・ハーディ
デュラント准尉(パイロット) ロン・エルダード
シュミット衛生兵 ヒュー・ダンシー
ビールズ中尉 ヨアン・グリフィズ
ネタばれ
エヴァースマン班長は、基地に連絡するがスミス伍長の収容を行えないと言われる。代わりに衛生兵が処置を行っていたところを、ソマリア民兵にRPGで急襲される。あわやのところでフートの部隊が合流してソマリア民兵を撃退する。
夜戦が起きたことを知らされたガリソン少将は、赤外線ストロボを敵陣に放り投げて、それを目印にヘリから機銃掃射した。
やがて米軍の全車両が投入されるが、時すでに遅くスミス伍長は亡くなった。午前2時、エヴァースマン班長が潜伏する場所に救出用装甲車両が到着する。負傷者を車両に乗せて、レンジャーが背後を守りつつ撤退することになる。
しかし午前5時ごろ装甲車について行くも、エヴァースマンらは遅れてしまい殿を守る形になる。必死の思いでパキスタン軍基地へ辿り着くとと、エヴァースマンはやっと息をつく。
今回の作戦は当初目的を失敗してしまい、ソマリア人が1000人、米軍兵士が19人死亡した。クリントン大統領は世論の反対に押されて、ソマリアから兵を完全撤退した。