田舎ヘピクニックに出かけた一家の歓楽と娘の成長を描く。

ギ・ド・モーパッサンの原作を、ピエール・ブロンベルジェ製作、ジャン・ルノワールの監督・脚本で中編映画化が企画された。

撮影はクロード・ルノワール(弟)、音楽はジョゼフ・コスマ。編集はマルゲリート・ルノワール(愛人)が担当。

主演はシルヴィア・バタイユ、共演ジョルジュ・ダルヌーアンドレ・ガブリエロなど。上映時間は40分。白黒映画だが、デジタルリマスタリングして見やすくなった。

あらすじ

1860年の夏、パリに暮らすデュフールは金物商である。ある日曜日、彼は隣の牛乳屋から馬車を借りて、明るい妻、認知症の義母と美しい娘アンリエットそして娘の許嫁である使用人アナトールを連れ立って、田舎へピクニックに出かけた。デュフールは都会で成功した享楽主義者のようで、ぶくぶくと太っている。妻は底抜けに明るい。娘がブランコに乗っている姿は無垢であるが故に官能的だ。一方、アナトールは主人の顔色ばかり見ていて、娘と釣り合わない。

彼らは近くのレストランに注文して、草原に立つ木のそばで食事する。
昼食後、デュフールとアナトールは昼寝して、夫人と娘は青年アンリとロドルフに舟遊びに誘われる。ロドルフは女好きの優男でアンリエットを狙っている。アンリは奥手で、やはりアンリエットに興味を持っているが、ロドルフに隠している。

ロドルフはデュフールにウグイ釣りの穴場を教えると、上機嫌になったデュフールは妻娘が舟遊びをすることを許す。そこで舟に乗り込むと、なぜかロドルフは夫人と一緒になり、アンリとアンリエッタと乗り込んでいる。ロドルフは根が女好きだから夫人に舌の浮くような世辞を言って喜ばせている。

一方、岸に舟をよせると、アンリはアンリエットの肩を抱締め、その勢いで押し倒して唇を奪う。アンリは初め嫌がっている風だったが、二回目は彼女は観念した。体を合わせた後、彼女の頬に一条の涙が零れる。
そして大つぶの雨が、嵐にかわってゆく・・・。

 

雑感

舞台は1860年、1848年の2月革命と1870年の普仏戦争に挟まれた平和な時代。当時既にパリジャンは田舎遊び(ピクニック)を発見していた。

ロケ中に急な雨のために撮影が中断されたという偶然から、不要な部分を削ぎ落とした形になって、モーパッサンの原作以上の出来になってしまった名作中編映画

名場面はアンリエットがブランコを漕ぐシーンだろう。ロドルフはブランコに立っている時から、座って漕いでくれないかと願っていたが、その願いが天に通じたのだ。恐らくアンリも彼女の漕ぎ姿を眺めて、スカートの裾がチラチラするのを見て惚れたのだろう。

この中編映画は急な雨のおかげで、冒頭とラストをカットせざるを得なくなった。しかしその部分を字幕でまとめることによって、アンリエットがアンリとの出会いによって娘から大人になった切那の喜びとその後の悲しみをより的確に表現することができた。

ジャン・ルノワール監督はロケ地の天候の急変が気に入らず、一旦お蔵入りした。その後1940年、監督はナチス侵略を避けてアメリカに亡命した。監督の不在中にプロデューサーが、抜けている部分を字幕で埋めて戦後1946年に公開された。米国初公開は1950年である(監督は1952年にフランスに戻る)。
さらに2013年にデジタル・リマスタリングされ、2015年6月13日に日本でも公開された。

主演シルビア・バタイユは当時、哲学者ジョルジュ・バタイユの妻だった。

スタッフ

監督、脚本  ジャン・ルノワール
製作  ピエール・ブロンベルジェ
原作  ギイ・ド・モーパッサン
撮影  クロード・ルノワール
助監督  ジャック・ベッケル(第一助監督)、ルキノ・ヴィスコンティ、イヴ・アレグレ、ジャック・B・ブリュニュ、アンリ・カルティエ・ブレッソン、クロード・エイマン
音楽  ジョゼフ・コスマ
編集  マルゲリート・ユーレ・ルノワール

キャスト

アンリエット  シルヴィア・バタイユ
デュフォア夫人  ジャーヌ・マルカン
デュフォア氏  アンドレ・ガブリエロ
アンリ  ジョルジュ・ダルヌー(髭男)
ロドルフ  ジャック・ボレル(優男)
許嫁アナトール  ポール・タン
食堂の主人  ジャン・ルノワール
ウェイトレス  マルゲリート・ユーレ・ルノワール

***

数年が経ったある日曜日、アンリは想い出の河畔で、アナトールと結婚したアンリエットとばったり再会する。
「よくここへ来るよ、素晴しい想い出のために」
「私は毎晩想い出したわ」
アナトールが帰る準備をすると彼女も手伝いに戻っていく。アンリはまた一人残された。

 

 

 

ピクニック Une Partie de Campagne 1936 パンテオン・プロ製作 フランス映画社国内配給(1977)

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