子供の頃、「スーパーマン」と言えば、再放送だったが、眼鏡で冴えないクラーク・ケントを演ずるジョージ・リーブスだった。ドクター・スランプのスッパマンもクリストファー・リーブもジョージ・リーブスが作ったイメージを踏襲している。ヒロイン役のノエル・ニールは映画時代から続けてロイス・レーンを演じていた。ジョージ・リーブスは番組開始時に既に38歳、開始当初から30代の老けたコンビだった。それだけに番組が白黒からカラーになると、メイクも大変になる。そして1958年に第6シーズンで打ち切られる。
ジョージは仕事を失い、その後1959年に謎の自殺を遂げたと言われる。その謎にメスを入れたのが、この映画である。
 

テレビドラマの演出をしていたアレン・コールターの初映画監督作品、主演はエイドリアン・ブロディ、重役夫人役にダイアン・レイン、ジョージ役にベン・アフレックヴェネチア国際映画祭男優賞受賞)。

あらすじ

 
テレビドラマ「スーパーマン」のスタア、ジョージ・リーブス(ベン・アフレック)が銃殺死体として発見された。婚約者レオノア・レモン(ロビン・タネイ)と友人たちと自宅で飲んだ後、自室に戻った時銃声がしたのだ。
探偵ルイス・シモ(エイドリアン・ブロディ)には別居中の妻ロリと息子エヴァンがいた。エヴァンはスーパーマンの死にひどく傷ついていた。ジョージ・リーブスの母ヘレン(ロイス・スミス)は、息子が殺されたことを立証してと依頼する。シモは事件が自殺だとする警察の認定を覆すため、報道機関に情報をリークする。
 
ジョージにはトニー(ダイアン・レイン)というVIPのパトロンがいた。彼女の夫エドガー(ボブ・ホスキンス)はMGMの重役だったが、日本人の愛人が持っていた。しかし二人はカトリックだったために離婚することは許されず、妻の浮気も亭主公認だった。
ジョージは「スーパーマン」終了後、トニーに仕事を貰えるように頼んだが、ダメだった。そこで彼はNYで個人事務所を立ち上げ、トニーに別れを告げる。レオノア・レモンという若い女優に出会い、ジョージとレオノアは婚約し同棲して、事件に遭う。
 
調査するとレオノアはどうも犯人ではないことが分かる。それでは誰が・・・。そんな時シモはマフィアから暴行を受ける。おまけに母ヘレンは、エドガー・マニックスから慰謝料の提供があり、依頼を取り下げる。そのうえ、抱えていた浮気調査を放置したせいで、浮気を疑っていた夫が妻を殺害してしまう事件が発生する。
 
真相を探るため、シモはトニーに会わなければならず、マニックス邸に忍び込む。しかしエドガーに見つかり、手下のマフィアにつまみ出される。
ジョージのマネージャーだったアートから、プロレス団体に参戦するために撮った8ミリフィルムをシモは見せられる。40歳を過ぎた彼は柔道着を着ていたが、体力的にもめっきり衰えて、見ていて痛々しくなるものだった。やはり自殺だったかも知れない。シモは事件のことは全て忘れて、スーツに着替えて妻子に会いに行く。

 

雑感

映画としては、フィルム・ノワール要素がタップリ詰まった良作だと思う。しかし結局謎は解けなかった。だからこの映画は、答が見つからなければ面白くない人には向かない。
 
この映画で探偵以外は実名である。
ルイス・メイヤーの右腕でありMGMのGMだったエドガー・マニックスはマフィアと繋がっていて、多くの未解決事件を起こしている。再婚相手のトニー・マニックスは「ジークフェルト・フォリーズ」の一員であり、同名映画にも出演した美人だった。二人は戦前から公然と付き合っていたが、結婚したのは1951年であり、その直後からジョージとの情事が始まる。トニーの尽力だと思われるが、1952年から「スーパーマン」がテレビ放送で始まり、世界中で大人気になる。しかし1958年に番組は終わり、二人の間で次の仕事についてトラブルがあったのだろう。二人は別れ、1959年にはジョージはレオノアと婚約し、結婚式の予定日の早朝に亡くなった。
 
ジョージは「スーパーマン」のギャラを、新たな映画企画につぎ込んだが、どれもものにならなかった。したがって生活は豊かでなく、若いレオノアを養うのに不安を抱えていた。そんな中で自殺説は出てきた。自殺説でも単独自殺説とレオノア自殺幇助説があった。
一方でエドガー・マニックスはMGMの汚れ仕事担当だったので、妻からその情報がジョージに流れていたと考える人は、エドガーとマフィア犯行説を採った。またこの映画のように、嫉妬したトニーがマフィアに依頼した説も考えられる。ジョージの母親も弁護士を立てて警察の自殺認定に異議を申し立てたが、一か月の追加捜査の結果、弁護士は異議を撤回した。おそらくトニーが金でもみ消したのだろう。
エドガーは1963年に心不全で死亡し、事件は藪の中に入ってしまう。トニーは1982年にアルツハイマー病が基で亡くなるが、庭の一部にジョージの記念碑をつくり、一生弔って過ごした。晩年カトリック神父にジョージの死は私に責任があると懺悔していたそうだ。
 
映画宣伝ではジョージはまるでマフィアに殺されたことになっているが、実際の映画を見ると、自殺をほのめかす描写になっている。実名を使った以上、この程度しか表現できなかったのだろう。
 
問題は最初に警察が現場に到着するまで、空白の時間があり、多くの証拠が消されていたことだ。警察が銃を調べても、指紋は残っていなかったようだし、硝煙反応も調べていなかった。だから謀殺の線は決して消えない。芸能界ではアラン・ラッドとギグ・ヤングが自殺説に否定的な立場だったそうだ。

 

スタッフ・キャスト

監督      アレン・コールター
製作     グレン・ウィリアムソン
製作総指揮 ジェイク・マイヤーズ 、 J・マイルズ・デイル 、 ジョー・ピチラロ
脚本     ポール・バーンバウム
撮影       ジョナサン・フリーマン
衣装デザイン    ジェリー・ウェイス
音楽        マーセロ・ザーヴォス
音楽監修     ダン・リーベルスタイン

 

配役
探偵ルイス・シモ   エイドリアン・ブロディ
トニ・マニックス   ダイアン・レイン
ジョージ・リブス   ベン・アフレック
重役エドガ(エディ)   ボブ・ホスキンス
母ヘレン・ベッソロ   ロイス・スミス
婚約者レオノア・レモン   ロビン・トゥーニー
依頼人チェスタ・シンクレア    ラリー・シーダー
アト・ワイスマン    ジェフリー・デマン
キット・ホリデ     キャロリーヌ・ダヴェルナス
妻ロリ・シモ       モリー・パーカー
キャロル・ヴァン・ロンケル    キャサリーン・ロバートソン
ハワド・ストリックリング    ジョー・スパーノ

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