1960年代後半以降世界中で吹いた学園紛争の嵐、とくにアメリカはベトナム戦争や公民権運動、要人テロ問題を抱えていたので、より先鋭化していた。

後にオバマ大統領が卒業したニューヨークのコロンビア大学では、予備役将校訓練課程の設置や近隣の黒人立ち退き問題で1966年から1968年まで学園紛争が起きた。学生の保守派と革新派が争い、最後は警官隊に加え州兵も投入されて強制的に学生は排除される。

原作者のジェームズ・クーネンはコロンビア大で当事者となった実体験を元に記録を著し、映画化されたのがこの作品である。
カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している。

 

 

Synopsis:

舞台はサンフランシスコ州立大に変えられている。

大学は学生紛争が激化して、バリケード封鎖されている。サイモンはノンポリで、ボート部に属し昼間は練習に勤しんでいる。
ある日、友人から面白そうだから革命派に少し加わってみようと言われたサイモンは、そこでかわい子ちゃんを見つける。リンダというウーマンリブ活動家はチャーミングだが、彼氏持ちだった。二人は食料係として一緒に働くうちに親しくなるが、次第にリンダは、別のBFがいる後ろめたさとサイモンが軽い気持ちで運動に加わっていることから彼を避けるようになる。
一方、サイモンは部活動で保守派のジョージに殴られたことにより、革命運動に本腰を入れるようになる。やがてリンダも戻ってくる。保守派だったジョージまでが学校側に疑念を抱き、活動に参加してくれる。
学部長の汚職も暴露されて、警官隊が見守る中ジョージが反動派の学生にリンチされて病院送りにされサイモンら革命派の怒りはピークに達する。
そのとき、州兵が講堂の立て籠もる学生目がけて催涙弾を打ち込み、警官隊が警棒で学生達を殴り付けて連行し、革命運動は幕を閉じる。

 

 

 

映画は、当時の音楽をBGMとしてほのぼのした雰囲気を併せ持つが、最後は警官隊の突入と共に悲劇として終わる。いかにもアメリカン・ニューシネマを代表する作品だ。その割に世間の評価は辛めだと思う。

たしかにハーバート・ディーン(Herbert Deane)教授(後にコロンビア大名誉教授)の言うとおり、学生の論理は苺が好きというのと同程度の甘いものだった。

それでも激辛だけが正義なのだろうか。軍隊で人を殺してきた人間だけが正義なのだろうか。

アメリカで本当の民主主義が実現していたら、ベトナム戦争なんて無意味な戦争は即撤退になっていたのではないか。

 

 

わが高校や大学でも運動は激化して一年間機能麻痺に陥った。それでも保守派(つまり体育会系部活動)が革新派を攻撃したとは聞いていない。

一方日大では、体育会が強くて、学生運動と反学生運動が対立して、さらに学生運動側が警察官を一名死なせてしまったので、警官隊に強行突入されて、学生運動は消滅して、長く体育会支配が続いている。

 

 

この映画にインスパイヤされた荒井由実バンバンのため1975年に作詞作曲したのが、「いちご白書をもう一度」である。いつまでもモラトリアムに甘えてられなくなって就職する学生の青春に対する訣別を歌って、大ヒットした。

それから40年も経って、今や親の年金を頼りにして一生「サークル・ゲーム」をしている大人も増えてきた。

 

 

 

 

監督 スチュアート・ハグマン
製作 アーウィン・ウィンクラー 、 ロバート・チャートフ
原作 ジェームズ・クーネン
脚色 イスラエル・ホロヴィッツ
撮影 ラルフ・ウールジー
主題歌 「サークル・ゲーム」 唄パフィ・ッセント・メアリー 作詞作曲ジョニー・ミッチェル

 

 

キャスト
ブルース・デイヴィソン (サイモン)
キム・ダービー (リンダ)
バッド・コート (エリオット、コックスウェイン)
マーレイ・マクロード (ジョージ)
ボブ・バラバン (エリオット)
イスラエル・ホロヴィッツ (ベントン博士)
ジェームズ・クーネン (議長)
ダニー・ゴールドマン (チャーリー)

 

 

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