夜になると展示物が動き出す不思議な、NYに実在する「アメリカ自然史博物館」を舞台に、夜間警備員として働くことになった主人公の活躍を描くファンタジー・コメディ映画。
原作はクロアチア人イラストレーターのミラン・トレンクの絵本(1993年発表)で、本映画の監督はショーン・レヴィ、主演はベン・スティラー。さらにディック・ヴァン・ダイク、ミッキー・ルーニーら往年の名優が出演している。
あらすじ
息子の言葉に発奮した失業者ラリーはニューヨークの自然史博物館での夜警の仕事にありつく。3人の老警備員がリストラされて、新たに1人だけ雇うことになったらしい。
夜警として働き出したラリーは、夜間にティラノサウルスの骨格標本がまるで生きているかのように博物館内を動き回っていること、石像や蝋人形が自由に動き回って話していることに気付く。
展示物が動きだすことを息子に見せようと連れてきたラリーはその日に限って蝋人形たちが動かないのに気付く。その原因が「アクメンラーの石板」と前任者セシル達の陰謀にあることを発見する。
ラリーは発動した石板によって動きだしたルーズベルト大統領に助力を求めるが、自分でやれと断られる。しかし古代エジプト王アクメンラーの助けもあって展示物を指揮してセシル達を捕まえて石板の奪還に成功する。その上、サカジャウェアの論文を書いていた学芸員レベッカにサカジャウェアを紹介する。
一旦は夜の騒ぎでラリーは館長から解雇されるが、かえって宣伝となり昼間の博物館には来場者が殺到したため、ラリーは復職する。そして展示物たちは毎夜ダンスやサッカーなどに興じるようになる。
雑感
第三作まで作られている「ナイト・ミュージアム」シリーズの第一作。原作絵本と比べて大分脚色されているが、ハートウォーミング・コメディで、最後まで見ると何故か嬉しくなる。悪人ヅラなのにいつも主役であるベン・スティーラーが苦手な人でもこの映画は楽しめる。
スティーラーに罪を着せようとしているのは大ベテラン三人組。ディック・ヴァン・ダイクは「ティキティキ・バンバン」「メリー・ポピンズ」に出演したアメリカ人俳優、ミッキー・ルーニーは1930年から1940年代前半に掛けてシャーリー・テンプルやジュディ・ガーランドと共演してきた大ベテラン、ビル・コッブスが映画に出始めたのは最も遅く1970年代以降だが「ボディガード」(1992)でのマネージャー役などアフリカ系アメリカ人の名脇役である。珍しく三人ともこの映画では悪役を演じている。
鍵を握る二人セオドア・ルーズベルト役は今は亡きロビン・ウィリアムスが演じ、古代エジプト王アーメンラー役は12年後に「ボヘミアン・ラプソディ」でアカデミー主演男優賞を受賞するラミー・マレックが演じている。
この映画を見ていると、大貫妙子が「みんなのうた」で歌った「メトロポリタン美術館」(1984)を思い出す。しかし日本語の歌が国際的に有名になって本映画の原作に影響を与えたのだろうか。
この歌の基になったのは、1967年に女流児童文学者E.L.カニグスバーグ(ケーニヒスブルク)の書いた児童小説「クローディアの秘密」である。姉弟が家出してメトロポリタン美術館で暮らすというミステリー仕立ての物語だ。ただし展示物が大騒ぎするわけではない。この「ナイト・ミュージアム」とは関係なさそうである。1973年にはイングリッド・バーグマンが出演する映画 “From the Mixed Up Files of Mrs Basil E Frankweiler (the hideways”) にもなっている。
一方、大貫のMVは映画同様に一斉に踊り出すシーンがあり、さらにホラーめいたエンディングを持っている。36年間で16回(1993年までに8回)も「みんなのうた」で再放送されていることから、アメリカのクロアチア人にも知られたのかもしれない。
スタッフ
監督 ショーン・レヴィ
脚本 ロバート・ベン・ガラント、トーマス・レノン
原作 ミラン・トレンク著『The Night at the Museum』
製作 ショーン・レヴィ、クリス・コロンバス、マイケル・バーナサン
製作総指揮 マーク・ラドクリフ、トーマス・M・ハーメル、アイラ・シューマン
音楽 アラン・シルヴェストリ
主題歌 アース・ウィンド&ファイアー「セプテンバー」
撮影 ギレルモ・ナヴァロ
キャスト
博物館の夜警ラリー ベン・スティラー
案内人レベッカ カーラ・グギノ
前任者セシル・フレデリックス ディック・ヴァン・ダイク
前任者ガス ミッキー・ルーニー
前任者レジナルド ビル・コッブス
第26代セオドア・ルーズベルト大統領 ロビン・ウィリアムズ
フン族アッチラ王 パトリック・ギャラガー
古代エジプト王アーメンラー ラミー・マレック
先住民の通訳サカジャウェア ミズオ・ペック
ローマ皇帝オクタヴィウス スティーヴ・クーガン
アメリカ西部探検家ジュディダイア オーウェン・ウィルソン
息子ニッキー ジェイク・チェリー
先妻エリカ キム・レイバー