スウェーデン人左翼系ジャーナリストのスティーグ・ラーソン原作のミステリ小説をスウェーデンで2008年に映画として製作して大ヒットしたが、この映画「ドラゴン・タトゥーの女」はそれに続きハリウッドでリメイクしたもの。
監督はデビッド・フィンチャー、脚本はスティーブ・ゼイリアン。編集のカール・バクスターアンガス・ウォールアカデミー編集賞をとっている。
主演はダニエル・クレイグルーニー・マーラ。共演はクリストファー・プラマー

あらすじ

左翼系月刊誌「ミレニアム」で大物実業家ヴェンネルストレムの不正を暴露したジャーナリストのミカエルは、名誉毀損で訴えられ裁判で敗れてしまう。
社会的信用を失った彼は、夫公認で不倫するエリカの経営するミレニアム誌からしばらく離れることにする。極寒のへーデビー島に隠居する大富豪ヘンリックから、40年前に失踪した兄の孫娘ハリエットの謎を調査してほしいと頼まれたのだ。彼女は何かを大叔父ヘンリックに伝えようとしながら、祭りの最中に群衆の中から消えてしまった。その間、本国と島を繋ぐ橋は交通事故で通行止めになっていた。
ヘンリックの家族はアリバイのあった、ハリエットの兄マルティンら一部を除いて、古い事件を掘り下げることに抵抗を隠さなかった。しかし祭り当日の連続写真を地元新聞社が保存していて、その中にハリエットの映ったものがあった。何かを見て咄嗟に身を隠したようだった。さらにハリエットの手帳に五人の女性の名前が書かれてあるのを発見する。ミカエルはこの失踪事件と当時起きていた女性連続猟奇殺人事件が関係していることに気づく。
ヘンリックの顧問弁護士であるフルーデのアドヴァイスで、背中にドラゴンの入れ墨をした、天才ハッカーだがどう見てもアスペルガー症候群のリスベットの協力を仰ぐことにする。リスベットは、フルーデがミカエルの身元調査をする際に、ミカエルの銀行口座などをハッキングして協力していて、ミカエルをよく知っていた。
リスベットは警察のデータベースに侵入して、猟奇連続殺人事件の被害者がユダヤ人であり、手帳に残された5人の女性であることを発見する。ミカエルは森で銃撃を受け負傷する。その傷を癒すために、リズベットは介抱しそのまま一夜を共にする。
ミカエルとリスベットは別々に調査を進める。リスベットは4つの犯行現場でハリエットの父であるゴッドフリートがいたのを掴む。そして5番目の現場は息子マルティンの学校のそばであり、二人は反ユダヤ主義という共通点があった。
一方、ミカエルは例の祭りの最中にマルティンが島内にいて見物しており、ハリエットは彼を見て踵を返したことに気付く。ミカエルはリスベットの帰宅を待たず、一人でマルティン宅に出向き、彼に捕らえられる。しかし危機一髪でリスベットが戻って来て、車で逃げたマルティンを追い詰める。リスベットに煽られたマルティンは運転を誤り、事故を起こして死亡する。
マルティンはハリエットを殺していないとミカエルに言った。父親のゴッドフリートが猟奇連続殺人犯人だと知ったハリエットは泥酔した父を海に突き落として殺した。その瞬間をマルティンに見られ、乱暴されたが、一年後の祭りの日に身を隠し、寒空の下で過ごし、翌日ロンドンに住む従姉妹アニタに頼んで車のトランクで逃してもらったのだ。その後、アニタはロンドンで亡くなったが、ハリエットはアニタになりすましていた。ミカエルはハリエットを病床のヘンリックのもとに連れて行く。
リスベットは、実業家ヴェンネルストレムの口座情報を無償でハッキングしてくれる。それによりミカエルと「ミレニアム」誌は再び疑獄事件をスクープする。さらにリスベットはミカエルに内緒でヴェンネルストレムの口座を資金化してタクスヘイブンの口座に移す。そのことはすぐに司法の知るところとなり、ヴェンネルストレムはマフィアに消される。
リスベットはウキウキでクリスマス・イブを迎えた。ミカエルに彼女は生まれて初めて恋をしたのだ。プレゼントも買って彼の家に急ぐが、一足早くエリカがミカエルを誘って行ってしまった。リスベットは生まれて初めて失恋をした。

 

 

雑感

なかなかよくできたハリウッド版だったが、スウェーデン版と比べて軽い。
ハリウッド版はマルティンを殺しても良いか尋ねたとき、殺されかけたミカエルは認めてしまった。ミカエルとリスベットは同じ側の人間(クレイジー)だったことになる。なのにリスベットの気持ちを無視してミカエルはエリカとデートしてしまう。そこが人間的に軽いのだ。
スウェーデン版でミカエルは殺人を認めなかった。ミカエルとリスベットの価値観はそこに埋めようの無い溝があるわけで、二人の心が結ばれないことを暗示していた。原作もスウェーデン版と同じようだった。

他にもラストのヴェンネルストレムを陥れるシーンはやや冗長だった。彼女がやったと仄めかすぐらいで良かったのではないか。

とまれ、原作は名作であり、北欧ミステリーの頂点に立つ作品だ。この映画もラストを除いて、デビッド・フィンチャー監督らしい素晴らしい出来だった。

ルーニー・マーラは眉毛のないピアス女リスベットの役だった。胸も全くなくて、なぜ彼女がタイトル・ロールになれるのか、分からなかった。しかし最後にパットを入れて化粧をして金髪美人に化け、ヴェンネルストレムの銀行口座を操作するところで、その理由がわかった。本物のアイルランド系美人だった。眉のない方が扮装に見えた。彼女は今ではホアキン・フェニックスの奥さんだ。

 

マルティン役のステラン・スカルスガルドはスウェーデン人であり、アレクサンダー・スカルスガルド(「モーガン夫人の秘密」のルバート役)の父親である。ともにハリウッドでも活躍する。因みに息子は禿である。

 

スタッフ

監督 デヴィッド・フィンチャー
製作 スコット・ルーディン
原作 スティーグ・ラーソン
脚本 スティーヴン・ゼイリアン
撮影 ジェフ・クローネンウェス
編集 カーク・バクスター 、 アンガス・ウォール (アカデミー編集賞)

キャスト

記者ミカエル  ダニエル・クレイグ
リスベット・サランデル  ルーニー・マーラ
大富豪ヘンリック・バンゲル  クリストファー・プラマー
フルーデ弁護士 スティーヴン・バーコフ
被害者の兄マルティン・バンゲル  ステラン・スカルスガルド
ビュルマン  ヨリック・バン・バーヘニンゲン
編集長エリカ・ベルジェ  ロビン・ライト
アルマンスキー ゴラン・ヴィシュニック
セシリア  ジェラルディン・ジェイムズ
従姉アニタ  ジョエリー・リチャードソン
リスベットのレズ友達ミリアム・ウー  エロディ・ユング
アニカ  エンベス・デイヴィッツ
ハラルド  ペル・マイヤーバーグ
実業家ヴェンネルストレム   ウルフ・フリバーグ

ドラゴン・タトゥーの女 The Girl with The Dragon Tattoo 2011 コロンビア+MGM製作 ソニー・ピクチャーズ配給

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