2009年「このミステリーがすごい!」海外翻訳部門で第1位となったトム・ロブ・スミス のミステリ小説「チャイルド44」がリドリー・スコットの製作で映画化された。
監督はスウェーデン人のダニエル・エスピノーサ、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に主演したイギリス人トム・ハーディを主演に起用。
スターリン時代のソ連では「楽園に殺人は起きない」という建前のため、殺人捜査が不可能だった。そこで起きた連続少年猟奇殺人事件を追う捜査官は上司の怒りを買い左遷されてしまう。しかし左遷先でも同様の手口の殺人事件にぶつかり、同様に田舎に左遷されてふて腐れていた将軍とともに事件を捜査する。
あらすじ
1933年ホロドモールと呼ばれるウクライナの大飢饉で親を失った少年は、ソ連の軍人デミドフに養子にされレオという名前を与えられた。12年後の1945年ベルリンでレオ(トム・ハーディ)は戦友アレクセイ(ファレス・ファレス)、部下ワシーリー(ジョエル・キナマン)とともにドイツ軍との戦いに勝利した。レオはソ連国旗をドイツ国会議事堂に掲げてその様子は新聞に掲載され英雄となった。
1953年、MGB(ソ連国家保安省)の捜査官となったレオ、アレクセイ、ワシ-リーは、ブロツキー(ジェイソン・クラーク)を逮捕するため、農家を訪ねる。そこで逃げ出すブロツキーを発見したレオは、ナイフを持つブロツキーと格闘した後、逮捕する。その後ワシーリーが、農家の夫妻を子どもたちの前で射殺するのをレオは見て、ワシーリーに激怒する。
そんなある日、アレクセイの息子が線路の端で裸体のまま遺体で見つかる。解剖すると胃が切除され溺死していた。しかしスターリンの言葉「殺人は資本主義の病である」に縛られて、上司のクズミン少佐(ヴァンサン・カッセル)は事故として処理する。
何故かレオは、最愛の妻ライーサをスパイとして告発せよと命じられる。しかしレオは告発せず、その結果妻ともどもヴォルスクへ左遷される。
その後も前の事件と同様の手口の遺体が見つかった。連続殺人事件だと直観したレオは、左遷先のネステロフ将軍(ゲイリー・オールドマン)に協力してもらい、同様の事件が既に44件起きていたことを知る。殺人事件は共産主義国家に存在しない建前のクズミン少佐は、秘密を知ってしまったレオとライーサに刺客を向けるが失敗する。
レオは被害者が集中しているロストフ付近のトラクター工場の帳簿から、事件現場と出張先が重なるマレヴィッチ(パディ・コンシダイン)が犯人だと推理する。ところがマレヴィッチを駆けつけたワシーリーが射殺する。ワシーリーは事件全体を闇に葬るため、レオも手に掛けようとするが、返り討ちに遭う。マレヴィッチは戦時中ドイツ軍の捕虜だったため、事件はナチスの陰謀と言うことで決着した。
レオとライーサは、ブロツキー事件で両親を失った子供たちの元を訪れ、二人を養子にしたいと申し出る。
雑感
この事件は当時ソ連であったウクライナで起きた実話だ。これが元で国家保安省(MGB)が改組されて、後にKGBになったそうだ。ただし、ロシアはこの映画を上映禁止にしている。何故か?
映画の評価と興業成績は惨憺たるものだが、個人的には欧米で大ヒットした小説を、ここまで映像化できただけで合格だったと思う。確かにサスペンス性の欠けた演出だったが、これ以上に上手く撮るのは必要以上に血生臭くなって無理だったろう。
トム・ハーディのロシア語訛りの英語発音に違和感を感じた。ヴァンサン・カッセルのようにフランス人は普通に出来るのだが、生粋のイギリス人に巻き舌はは難しいと見える。またワシーリーを叱る場面で”Fuckin'” を連発するのだが、ロシア人が言うと思うと変に聞こえる。それでも映画の最後の方の台詞はかなり良くなった。
スタッフ
監督 ダニエル・エスピノーサ
脚本 リチャード・プライス
原作 トム・ロブ・スミス 『チャイルド44』
製作 リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、グレッグ・シャピロ
撮影 オリヴァー・ウッド
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配役
レオ・デミドフ捜査官 – トム・ハーディ
ネステロフ将軍 – ゲイリー・オールドマン
ライーサ・デミドワ(レオの妻) – ナオミ・ラパス
ワシーリー捜査官 – ジョエル・キナマン
クズミン少佐 – ヴァンサン・カッセル
マレヴィッチ – パディ・コンシダイン
ブロツキー獣医 – ジェイソン・クラーク