他の宣伝文句はなかったのかw?映像体験がしたくて戦争映画を見る時代になってしまったようだ。
英国が1940年フランスでドイツと戦って敗れて、ダイナモ作戦によりダンケルクから逃げ出したときの悲劇を映画化した。
ダンケルクの悲劇は以前にも少なくとも二度映画化されている。1958年のジョン・ミルズ主演英国映画「激戦ダンケルク」と1964年のジャン・ポール・ベルモント主演フランス映画「ダンケルク」である。
2017年版「ダンケルク」は英国版「激戦ダンケルク」の焼き直しであり、イギリス軍から見たダンケルクの悲劇である。当然、イギリスが友軍であるフランスを軽視していたことも描かれている。
ただし最終的には英国軍19万人とフランス軍12万人を退却させることに成功し、バトル・オブ・ブリテンやノルマンディー上陸作戦を成功させる原因となった。
この映画はIMAX65で撮影されており大画面対応でありながら、CGIの使用をできる限り縮小した作品として記憶されるべき作品である。たしかに迫力はあるから、アカデミー編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞している。

Synopsis:

1940年ドイツ軍に追い詰められた英仏連合軍はドーバーを渡ってイギリス本土に戻るため、ダンケルクという漁港に集結していた。英国軍は本土決戦に余力を残さなければならないから、ピストン運航している駆逐艦に上級兵士を乗せて帰り5万人も退却できれば成功だと思っていた。しかし現実にフランスに取り残された英仏連合軍は40万人いた
これからは三つの出来事がタイムスケールをずらして起きる。最終的に一つにまとまる話だが、三つの事柄をある程度解して述べた方がわかりやすい。

1週間前:

ダンケルクの海岸では陸軍の若き二等兵トミー、キブソン、アレックスは目の前に40万人もの兵士が行儀よく並んで艦船に乗れるのを待っていた。順番を少しでも早くするため、傷病兵を運んでいき同乗は拒否されるが、桟橋の下に隠れどさくさに紛れて海軍の艦船に乗り込む。しかし魚雷や機雷網にかかり敢え無く沈没。結局ダンケルクの浜辺へ打ち上げられる。次に見つけたのがオランダの商船だ。座礁して浜辺に打ち上げられているが、満潮になれば浮くはずだ。船底に隠れているとドイツ兵も気づき船腹をマトにして射撃訓練を始めた。横穴を開けられたことと軽くするため誰が降りるかで揉めて結局沈没。

1日前:

英国側の漁港では民間船を海軍は徴用して一人でも多くの兵士を帰らせるつもりだ。ドーソンさんは遊覧船のオーナーだが徴用されて次男のピーター、ピーターの友人で少し頭の弱いジョージを同乗させた。ダンケルクへ向かう途中で転覆した船に乗っていた英国兵を救出した。彼は恐怖のあまり戦争神経症を患い、暴れてジョージが頭を強打する。素早い治療が必要だったがドーソン氏はダンケルクの兵士救助を優先する。
さらに進むと、ダンケルクに向かったスピットファイアが不時着している。ドーソン氏の長男も英国空軍の飛行機乗りで戦死していた。ドーソン氏はガラスカバーを叩き割り、コリンズ操縦士を救助しもてなした。

1時間前:

三機のスピットファイヤがダンケルクに向けて出発した。ドーバー海上で早速敵機と遭遇し、撃墜するがベテランの隊長機だけが行方不明となる。ファリアの機体は燃料計が故障してしまい、頼りのコリンズは機体が撃たれて海上に不時着してドーソン氏に救助される。ファリアは一人になってしまい、帰りの燃料も分からなくなり、大きな決断をする。
ダンケルクにて:
ボルトン海軍中佐ウィナント陸軍大佐は撤退現場で絶望的な状況に追い込まれたが、そのとき霧の彼方から民間救助船団が近づいてきた。
ドーソン氏の遊覧船もその中にいた。多くの将兵を救助したが、ジョージの死亡も確認された。ドーソン氏もピーターも黙々と救助活動を続けた。
トミーとアレックスは沈没船から救助船に移った。ギブソンは沈没騒ぎに巻き込まれて、海中に沈んだ。
ファリアは救助船団に襲いかかるメッサーシュミットを全て撃ち落とし、燃料切れとなって自分は砂浜に不時着する。そして飛行機を燃やしてから、ドイツ軍の捕虜となる。
ボルトン中佐もフランスに残り殿を務める覚悟だ。
トミーとアレックスは英国に戻る。アレックスは敗残兵だと馬鹿にされることを最も恐れていた。しかし人々は優しく彼らを受け入れた。
ピータージョージの話を新聞社に持ち込んだ。ある日、一面にジョージが英雄として讃えられた。それは彼の遺言だった。

Impression:

一度に三つの立場の視点から描く手法をトリプティックと呼ぶ。しかも時間をずらして並行的に進めながら、徐々に時間差を小さくして、最終的に同じ時点に行き着くという、普通でないトリプティック手法である。
頭を使う映画」になってしまったので、評論家にウケが良いが一般客の評価が下がってしまう。
とくに情けないのは、歴史に疎い国日本での収入が極めて低いことだ。配給したアカデミー賞候補の呼び声が高いと、授賞式の一年も前から評判を高めておいて、いざ式では編集賞など非主要部門しか取らなかったので、駄作呼ばわりされている。内容については前もって予習しておけ。
この映画は、戦争の是非を云々するわけでない。何を訴えるかではなく、いかに表現するかである。「バットマン三部作」も「メメント」「インターステラー」も一貫しているのだ。ただいつもと違う点は今回が実録物のサバイバル映画だったことだ。
ただ、目新しさだけを云々されるのも違う。「激戦ダンケルク」の際は過小評価されていた空軍の働きを正当評価している。実は当時空軍は何をしていたと非難が殺到した。しかし厚い霧の上空でメッサーシュミットやフォッケウルフ、ハインケルとスピットファイアは交戦して戦況を有利に回していたのだ。この点だけは英国空軍から表彰されても構わないと思う。

Staff/Cast:

監督 クリストファー・ノーラン
製作 クリストファー・ノーラン 、 エマ・トーマス
製作総指揮 ジェイク・マイヤーズ
脚本 クリストファー・ノーラン
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
衣裳 ジェフリー・カーランド
音楽 ハンス・ジマー
美術 ネイサン・クローリー
編集 リー・スミス
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出演
フィオン・ホワイトヘッド トミー
ハリー・スタイルズ アレックス
アナイリン・バーナード ギブソン (仏)
トム・グリン=カーニー ピーター
マーク・ライランス ドーソン氏

トム・ハーディ ファリア 飛行士
ジェームズ・ダーシー ウィナント大佐

ケネス・ブラナー ボルトン中佐
ジャック・ロウデン コリンズ飛行士
キリアン・マーフィ 漂流していた謎の兵士
バリー・コーガン ジョージ 少年

ダンケルク (DunKirk) 2017 ワーナーブラザーズ配給 「究極の映像体験がここにある」

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