1940年にブロードウェイでヒットしたエルマー・ブラニー・ハリスの舞台劇を、アレン・ビンセント、アーマ・フォン・クーベが脚色しジーン・ネグレスコが監督して当時話題になった映画。
「赤毛のアン」の故郷プリンス・エドワード島で実際に起きたレイプ事件を基に描かれている。当時、映画の中でレイプを扱うことはヘイズ・コードで禁じられていたが、この映画の公開でセンセーショナルな議論を呼び、映画の成功で結果的にヘイズ・コードは緩められることになった。おかげで映画は大成功を収める。そこまで計算していたプロデューサー、ジェリー・ウォルドの計算勝ちだ。
主演は「失われた週末」「子鹿物語」のジェーン・ワイマンで共演はリュー・エアーズ、チャールズ・ビックフォード、アグネス・ムーアヘッド(「奥さまは魔女」の母エンドラ)。
 

 

あらすじ

 
カナダ東部にある半漁半農の無医村に、戦争で傷ついた心を癒やすため、医師ロバートが赴任して来た。看護助手には若く美しいステラが立候補して食事の世話まで見ていた。彼女は財産家でもあり、乱暴な漁師ロッキーが口説いている。
粉挽きを生業にしているマクドナルド家の牛の出産を手助けしたとき、聾唖の娘ベリンダに出会った。父ブラックと叔母アギーは迷信を信じ聾唖者=白痴と考えて彼女を学校に行かせていなかった。ロバートは彼女が利口そうに思えたので、手話を教えた。それ以来彼女は何でも興味を持ち、文字を教えると読唇術までマスターした。ある日、ベリンダが身振り手振りで父に「お父さん」と呼びかけると、父は生まれて初めて彼女を胸に抱いた。
ロバートはベリンダに演奏中のヴァイオリンを触らさせた。彼女は音楽を知り、足でリズムを取りだした。楽しそうにしているベリンダは美しかった。その様子を見ていたのが、ロッキーである。その夜の内に、ロッキーは製粉所に押し入りベリンダをレイプした。しかし性教育を受けていなかった彼女は自分が何をされたのか分からなかった。
ロバートが久しぶりにマクドナルド家を訪ねると、ベリンダは別人のようにやつれていた。ロバートは彼女を大きな町の専門医に診せると、妊娠していると告げられた。激怒した父もベリンダが生んだ男子ジョニーを見ると、祖父の顔になった。
しかし父無し子の誕生によって、ブラック一家は村八分に遇う、出入りしていたロバートも村民から診察を拒否され、失職する。
祖父ブラックしかいないときに、ステラと結婚することになったロッキーが、子供の顔を見にやって来た。そこで「俺に似ている」とつぶやいた。聞き逃さなかった祖父はロッキーと取っ組み合いになって、断崖絶壁から突き落とされた。嵐の夜ベリンダが遺体を発見したが、損壊が酷くて事故として処理された。
ロバートはトロントの病院に職を得て村を離れた。やがてトロントに小さい家を手に入れた。早速彼はベリンダ母子を呼び寄せる手紙を送る。間もなくベリンダがロッキーを射殺したという事件を聞く。彼はベリンダの裁判にのぞんだが、検察官からは「彼こそ父親であり責任に一端がある。医師免許を剥奪すべきだ」と告げられる。そのとき、ロバートを憎からず想っていたステラが真実を告白する。ロッキーとステラの夫婦はジョニーを養子に取るため、ベリンダに同意をもらいに訪ねた。そこでロッキーは実は俺がジョニーの父だから権利があると告白したのだ。そしてベリンダを押しのけて二階にいるジョニーの部屋に入ろうとしたところを背後からベリンダに撃たれた。陪審により被告は子供を守るために止むなくロッキーを射殺したと見なされ、ベリンダは無罪となった。
 

雑感

 
今だったら、どうと言うことはない話なのだが、19世紀のキリスト教社会で女性の権利を認めた画期的な事件だった。
映画「失われた週末」からのジェーン・ワイマンの女優としての成長ぶりは神がかっていた。「夜も昼も」「子鹿物語」「ジョニー・ベリンダ」(アカデミー主演作品賞)「舞台恐怖症」と立て続けに大作に出演する。テレビ時代に入ってもバーバラ・スタンウィック同様に冠番組を持っていた。(バーバラ・スタンウィックとは友人だった)
演技派なのでてっきり女芸人上がりかと思っていたが、歌手出身だった。そう言えばコール・ポーターの伝記?映画「夜も昼も」でも数曲歌っていた。ロナルド・レーガン(元米国大統領)とB級映画で共演して1940年に結婚したが、何時まで経っても亭主はB級俳優兼司会者のまま。それに比べて妻は子供を産んで、あっという間にアカデミー賞まで取ってしまうのだから、よほど気が長くない限り、そりゃ別れるわな。
 

スタッフ・キャスト

 
監督:ジーン・ネグレスコ
製作:ジェリー・ウォルド
原案戯曲:エルマー・ブラニー・ハリス
脚本:イルムガード・フォン・クーベ、アレン・ヴィンセント
音楽:マックス・スタイナー
撮影:テッド・マッコード
 
配役
ベリンダ・マクドナルド:ジェーン・ワイマン
ロバート・リチャードソン医師:リュー・エアーズ
ブラック・マクドナルド:チャールズ・ビックフォード
アギー・マクドナルド:アグネス・ムーアヘッド
 

ジョニー・ベリンダ Johnny Belinda 1948 ジェリー・ウォルド製作 ワーナーブラザーズ配給 セントラル(進駐軍)国内配給

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