敵陣を抜け単騎のアメリカ戦車が北アフリカ戦線の英国軍に合流する。その獅子奮迅ぶりを描き、リーM3戦車の砂漠でのドイツ軍戦車に対する優越性を見せつけるための戦争映画だ。
監督はゾルタン・コルダ(「ジャングル・ブック」)で、主演はハンフリー・ボガード。共演はブルース・ベネット、ダン・デュリエ、さらに若き日のジェフ・ブリッジスなど。
女性の出演者はいない。白黒映画。

あらすじ

北アフリカ戦線で米軍ガン軍曹率いるリー戦車ルル・ベル号(隊員ウェイコとジミー)は退路を絶たれて、リビア西部の荒地を南に向かう。途中で英国軍から逸れた衛生部隊六名を救出する。さらに南へ行くと、友軍スーダン兵タンブルと伊人捕虜ジュゼッペを発見し、タンブルを道案内にオアシスに向かって進む。
途中、ドイツ軍戦闘機と遭遇する。敵の機銃掃射で英軍戦士が一名死ぬが、戦闘機を見事に撃ち落としパイロットのシュレトウを捕虜とする。

やがてオアシスを発見して一息つくが、やがて水も枯れ果てる。そこへドイツ軍の自動車を持って来る。攻撃して難なく二人を捕虜にするが、ドイツ軍が機動部隊でなく歩兵部隊であり水の補給にやってきたと悟ったガン軍曹は、南方にいる友軍にウェイコを送り、水があるフリをして捕虜を放ち、敵の隊をおびき寄せる。
すると中隊級のドイツ歩兵が水欲しさに現れる。両軍の死闘となり、英米軍は四人を残すだけとなった。一旦独軍は休戦して、将校ファンケルが最後通牒を突き付ける。フレンチーはそれを無視して戻ろうとすると、独軍将校は卑怯にもフレンチーを背後から射殺する。怒ったガン軍曹が将校を撃つと、ドイツ軍は総崩れとなり、最後は銃を捨て降伏する。不思議なことにオアシスからは、再び水が溢れ出た。

ウェイコが英国軍の斥候と出会い大軍を引き連れて来たとき、英軍オジーとガン軍曹がたった二人で、ドイツ軍兵士たちを捕虜としていた。一方で英国第八軍はエジプトのエルアラメインを落としたそうだ。ガンは死んでいった仲間にもそのことを知らせたかったと言う。

今日のセリフ

Seargent Gunn: [Speaking about the tank’s engine that won’t start] Well, you don’t feed her enough. It’s like a dame. You don’t feed’em they won’t do nothin’.

ガン軍曹が動かなくなった戦車のエンジンについて話す: 「ガス欠だな。女みたいなものだから、エサを与えなきゃ動かんよ

雑感

完全に戦意高揚映画で、貴い犠牲こそが「自由」を守ることをテーマにしている。なにしろシャーマンM4全盛の時代に、古いリーM3だけでドイツ軍を振り回すのだからw。
登場した連合国軍(米軍3名、英軍6名、スーダン軍1名)10名の内、激戦のため米軍2名(ハンフリー・ボガード、ブルース・ベネット)と英軍1名(パット・オムーア)だけが生き残った。

この映画はソ連の東部劇映画十三人」にインスパイヤされて、フィリップ・マクドナルド(本職は推理作家)が原案を考案し、ジョン・ハワード・ローソンが脚色した。映画「十三人」自体は、やはりフィリップ・マクドナルド原作「Patrol」をジョン・フォード監督が映像化したアメリカ映画「肉弾鬼中隊」(The Lost Patrol, 1934年)を見たスターリンがミハイル・ロンム監督に命じて作らせたリメイク映画で、「東部劇」とは西部劇をもじったもの。ソ連大衆がアメリカ映画を見ることはなかったが、リメイクされたソ連映画は一般に上映された。一方、スターリンは自慢のホーム・シアターでオリジナルのアメリカ映画上映会をたびたび開き、見に来いと言われた相手が断ると粛清したという。(”Patrol”の映画化は二度目で、最初は1929年英国映画「Lost Patrol」)

映画は第二次世界大戦におけるイタリア降伏後に公開されたため、イタリア軍捕虜ジュゼッペに対して好意的に描いている。

この映画のリメイク作品としては、西部劇としての「Last of the Comanches」(1953) と 戦争映画としての「Sahara」(1995, ジム・べルーシ主演)がある。

スタッフ

監督 ゾルタン・コルダ
原案 フィリップ・マクドナルド (「レベッカ」脚色)
脚色 ジョン・ハワード・ロウソン 、 ゾルタン・コルダ
撮影 ルドルフ・マテ
音楽 ミクロス・ローザ

キャスト

米軍ガン軍曹 ハンフリー・ボガート (生き残る)
米軍ウェイコ・ホイト ブルース・ベネット (英国軍に連絡する)
米軍ジミー・ドイル  ダン・デュリエ (戦死)
英軍フレッド・クラークソン ロイド・ブリッジス (戦死)
スーダン軍曹タンブル  レックス・イングラム (脱走した独捕虜を殺したが戦死)
伊捕虜ジュゼッペ  J・キャロル・ナイシュ (独捕虜に殺さる)
英軍オジー・ベイツ  パット・オムーア (生き残る)
英軍ステグマン ガイ・キングスフォード (戦死)
英軍医療部隊ハリデー大佐 リチャード・ニュージェント (戦死)
英軍マーティー・ウィリアムズ カール・ハーボード (戦死)
仏義勇兵フレンチー ルイ・マルシェ (戦死)
独捕虜フォン・シュレトウ大尉 カール・クルーガー (戦死)
独軍歩兵大隊フォン・ファルケン少尉 ジョン・ウェングラフ (戦死)

サハラ戦車隊 Sahara 1943 コロンビア製作・配給 セントラル映画国内配給 ハンフリー・ボガード主演戦意高揚映画

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