東宝怪獣映画シリーズ23作目。(ゴジラ・シリーズ第11弾)
当時、社会問題になっていた公害をテーマにした作品。
脚本は「怪獣総進撃」の馬淵薫、撮影は真野田陽一で、長年助監督としてこき使われていた坂野義光が念願の初監督を飾った。
主演は山内明
共演は柴俊夫、麻里圭子、川瀬裕之(子役)。

ストーリー

研少年は、ヘドロが堆積する駿河湾岸でオタマジャクシに似た生物を見つけた。父親の生物学者矢野博士は、何か海中で良くないことが起きているのではないかと危惧する。
数日後、オタマジャクシが巨大化した怪獣が、駿河湾に現れ、大型船を真っ二つに引き裂いた。この怪獣は、研少年により怪獣へドラと名付けられた。海のヘドロを主食としているヘドラの正体は、ヘドロニウムという地球にない金属を中心とする物質だった。
やがてヘドラは田子の浦から静岡県に上陸して、排ガスやガソリンを吸い込み、実に全長60mに達した。ジェット噴射による飛行も可能となり、高速で移動し始めた。硫酸ミストを発生するので、上空を飛んでいる時、地上にあるビルの鉄骨は腐って崩壊した。ヘドラは、体の中からヘドロを飛ばし、光線を眼から放ったので、生物を一瞬にして白骨にすることができた。東京は、そして日本は一体どうなるのか・・・?

雑感

ゴジラ映画の中でも、最も大人向けの社会派作品。
当時は大企業の吐き出す煙害など公害が地域の問題から国全体を巻き込んだ形となり、住民訴訟が起きて連日ニュースになっていた。今はSDGs(持続可能開発目標)の時代だが、おそらく環境問題自体は、ジェンダーや格差問題などに薄められ、効果を上げることはできないだろう。何しろ世界の人口が多すぎるのが問題なのである。

子供の頃、万博の次の年だったと思うが、この夏休み映画は新聞広告を見て、今までの単純な怪獣と違うグロテスクさを感じて映画館で見なかった。次回作「地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン」は楽しみに劇場に見に行ったが、もう面白く無くなっていた。案外、ませていた筆者は「ゴジラ対ヘドラ」を見ていた方が、これが新しいゴジラ像だと腑に落ちたかもしれない。

眞鍋理一郎は、フォゴット奏者兼映画音楽家で伊福部博に作曲で師事している。映画音楽家としての彼は、どんなジャンルでもこなす万能屋で、この作品ではヒッピー風のサイケ・ロックと現代音楽の不協和音を合わせたような主題歌を作った。
歌った麻里圭子は、演歌歌手デビューだが、すぐ大橋巨泉にポップス向きだと太鼓判を押され、転向した。「V・I・C・T・O・R・Y サインはV」と「サインはV」主題歌も歌っている。メジャー・レーベルで活躍した期間は長くないが、いまだに歌っている。

ゴジラが飛ぶシーンは、社内で問題になった。田中プロデューサーの入院中に坂野監督が強行突破で撮ったお陰で、「空飛ぶゴジラ」は世間にお目見えになって、子供には評判はまずまずだったと覚えている。しかし、これがあって坂野監督は東宝ゴジラから降ろされた。晩年、彼はゴジラ企画をハリウッドに持っていく。そして「ゴジラ」(2014、出演渡辺謙)のエクゼクティブ・プロデューサーに就任する。

TBSの協力を得ていて、ニュース・アナウンサー役に岡部達(後に城戸真亜子と共に「3時に会いましょう」司会)、インタビュワー役に渡辺謙太郎(巨人贔屓のスポーツ・アナ)を起用している。

柴本俊夫改め柴俊夫は、1971年秋からテレビドラマ「シルバー仮面」に主演として抜擢される。

スタッフ

製作  田中友幸
脚本  馬淵薫
脚本、監督、原案  坂野義光
特殊技術  中野昭慶
撮影、特殊撮影  真野田陽一
音楽  真鍋理一郎
主題歌  「かえせ!太陽を」 歌:麻里圭子 作詞:坂野義光 作曲:真鍋理一郎

キャスト

矢野徹(生物学者)  山内明
矢野敏江(妻)  木村俊恵
矢野研(長男)  川瀬裕之(子役)
毛内行夫(妻の弟)  柴本俊夫(柴俊夫
富士宮ミキ(歌手)   麻里圭子
伍平爺さん(漁師)  吉田義夫
自衛隊幹部将校  鈴木治夫
自衛隊技術将校  勝部義夫
巡査  大前亘
学者  岡部正
アナウンサー  岡部達
アナウンサー  渡辺謙太郎
スーツアクター(ゴジラ)  中島春雄
スーツアクター(ヘドラ)  中山剣吾

 

***

その時、研少年のテレパシーによりゴジラが太平洋から出現した。ゴジラとヘドラは、東京湾で相見えるが、そのときは痛み分けとなる。
富士山頂上付近で、不景気風を吹き飛ばそうと、研少年の叔父毛内が音楽フェスティバルを開催する。研少年と歌手のミキも参加する。しかし、エネルギー源を感知したヘドラは、魔手を伸ばす。毛内らはヘドラの硫酸ミストによって殺されるが、研少年とミキは脱出を図る。研少年の危機を察知したゴジラが富士山に現れる。ヘドラに体内からヘドロを打つけられたゴジラは左眼を潰され、富士山頂をのたうち回った。

矢野博士の研究により、ヘドラの弱点が高圧電流だと明らかになっていた。自衛隊により大型電極板が富士山に設置される。ゴジラがヘドラに倒されたときに電極板の送電線を切断して、停電になる。ところがゴジラが放った放射熱線が電極板に反応し、高圧電流がヘドラの体を貫く。ヘドラが倒れたのを見たゴジラは、ヘドラの体内から二個のヘドロニウムの塊を抜き出す。ヘドラは小型化して脱出しようとした。だが、ゴジラは背を向けるやいなや放射熱線を吐いて、何と後ろ向きに空を飛びヘドラに追い付く。そして再び、電極板の間にヘドラを連れて行き、高圧電流を浴びせると、ヘドラ本体は無機質のように崩れ去る。
敵を倒したゴジラは、太平洋に帰った。

ゴジラ対ヘドラ (1971) 東宝製作・配給 ゴジラ・シリーズのカルト作品

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