エルンスト・ルビッチ監督の1940年映画「街角/桃色の店」を楽器店に置き換えたスクリューボールミュージカル映画(リメイク)。
監督は「巨星ジークフェルド」のロバート・Z・レナード、脚本は「街角/桃色の店」のサムソン・ラファエルソン、製作はジョー・パステルナーク
主演はジュディ・ガーランド、ヴァン・ジョンソン。共演はS.Z.サコール、バスター・キートン

あらすじ

舞台はシカゴ。ベロニカはハンガリー人オットーの楽器店に開店前にやってきて、職を求める。ラーキン主任は追い出そうとするが、なかなか引き下がらず、開店し客が入ってくる。そこでベロニカは売れ残ってネリーが返品して下さいと言っていたミニ・ハープを見事な喉でしかも高値で売ってしまう。オットーは彼女を気に入り、入社させる。
それからも彼女は看板娘となり、見事なのどで楽器や楽譜を売りまくる。
ラーキンは近所に住むバイオリニストのルイーズと友人だったが、いくら相手からモーションを掛けられようが、一線を超えることはなかった。
なぜならラーキンは文通している女性がいた。まだ会ったことはないが、昇進したら求婚するつもりだった。実はその相手はベロニカで彼女も手紙の人といつか会いたいと思っていた。しかし職場での二人はというと犬猿の仲でいつもツノを付き合わせていた。
クリスマスも近いある日、ラーキンは文通相手とついに会う約束をする。その日はベロニカも朝からそわそわしている。ところがちょっとしたことでネリーがオットーの誘いを断ったために喧嘩してしまい、全員残業して在庫調べをさせられる羽目になる。ネリーは若い連中が気の毒になり、彼らを解放してくれたらオットーと付き合うと言う。オットーは喜んで彼らを解放する。ラーキンは同僚ハンセンに着替えを手伝ってもらって、勇んで約束の店に出かけるが、そこにいたのはベロニカだった。ラーキンは悪戯心を出して知らぬふりをして店に入り、ベロニカを揶揄う。結局、ベロニカは文通相手と会えなかったと思い込み、落ち込んで帰った。
オットーとネリーは婚約し、婚約披露パーティーを行う。ベロニカが二曲歌うが、その席上でオットーは自慢のストラディバリウスで演奏するつもりだった。しかしラーキンがそのストラディバリウスをルイーズのオーディション用に貸してしまったことで解雇される。ルイーズはおかげでオーディションに合格して欧州に留学することになった。
翌日、未払い給与をもらいに来たラーキンを皆は残念に思い、ネリーが代表してオットーにラーキンの復職を訴える。オットーは不満タラタラだったが、自分よりルイーズが使う方がストラディバリウスも喜ぶと考えを改めて、ラーキンの支配人昇格を決める。ラーキンは仕事が引けた後、ベロニカに自分が文通相手だったと告白し、改めて求愛する。ベロニカも最近ラーキンの態度が軟化していたので、気になっていて一も二もなく受諾する。

雑感

「イースター・パレード」の後の作品だが、本来ならクリスマス映画なのに、クランク・インが遅くて夏の公開になってしまった。ジュディ・ガーランドはウェイト・キントロールが効かないのか、お腹が出ている。ライザ・ミネリを産んでから二年後だから二人目かと思われたが、彼女自身の薬の乱用問題だったようだ。

ヴァン・ジョンソンの演技は、前作ジェームズ・スチュアートのものよりかなりギスギスしている。最後に急転直下でジョンソンとジュディの二人が結ばれることが不思議に思えたほどだ。ジュディ・ガーランドの遅刻欠席癖に腹が立っていたのだろうか。

ジュディ・ガーランドは五曲歌っている。楽器と楽譜の宣伝用に三曲、婚約パーティーで二曲だ。全般にバラードが多く、五曲目の「I Don’t Care」がもっとも乗りが良い。

バスター・キートンは表舞台から遠ざかっていたが、当時ギャグ監修をしていてベロニカとラーキンがぶつかるシーンを演出していた。。パーティーでバイオリンを壊すシーンを試しに演じてみると、スタッフからバイオリン破壊はキートンにしかできないと言う声が上がったので、16年ぶりのMGM映画登場となった。最初から地味な役だが、ベロニカへの想いを視線に込める渋い演技を見せている。

ルイーズ・パカー役は本物のバイオリニストであるマルシア・ヴァン・ダイクが演じて、ヴァイオリンの演奏も実際にして楽器による音の違いを表している。
ラスト・シーンで母親ジュディ・ガーランドに連れられてよちよち歩きする三歳の幼女はのちのライザ・ミネリ(実の娘)である。

 

スタッフ

製作 ジョー・パステルナーク
監督 ロバート・Z・レナード
ギャグ監督 バスター・キートン
原作戯曲 ミクロス・ラズロ
脚本 サムソン・ラファエルソン (「街角/桃色の店」と同様)
音楽 ジョージ・ストール
撮影 ハリー・ストラドリング

キャスト

ベロニカ・フィッシャー ジュディ・ガーランド
アンドリュー・ラーキン  ヴァン・ジョンソン
店主オットー   S. Z. サコール
経理ネリー    スプリング・バイイングトン
ハンセン   クリントン・サンドバーグ
店主の甥ヒッキー   バスター・キートン
バイオリニストのルイーズ・パーカー  マルシア・ヴァン・ダイク
叔母アディー  リリアン・ブロンソン
幼女      ライザ・ミネリ(三歳、クレジット無し)

 

 

 

 

 

 

 

 

 
グッド・オールド・サマータイム In The Good Old Summertime 1949.7 MGM製作・配給(日本未公開)

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