ヘレン・ヘイズ主演のアメリカ制作のミス・マープル
彼女は、1930年代の美人女優(代表作「武器よさらば」、共演ゲイリー・クーパー)であり、1970年ユニバーサル映画「大空港」でアカデミー助演女優賞を獲得した。セルマ・リッターと並んで、我が愛する老女優さんである。

 

 

以前にテレビ朝日で日曜洋画劇場で彼女の出演するクリスティ作品を二つ見たが、そのうちの一つはビル・ビクスビーと共演していた。それもてっきりミス・マープルものだと思っていたら、今回調べると、「殺人は容易だ」(邦題・ロンドン殺人事件)であった。この「カリブ海の秘密」は当時、見落としたようだ。それだけに、このドラマを生きているうちに見られるとは思わなかった。

 

 

するとスタッフ欄に
脚本 スー・グラフトン、スティーブ・ハンフリー
と書いてある。放映は小説家スー・グラフトンが、女性探偵小説の名作「アリバイのA」(1982)を書いた後である。アガサ・クリスティーに憧れている新進女流作家を脚本に起用したわけだ。今まで興味がなかったグラフトンだが、急に親近感が湧いてきた。ちなみに「アリバイのA」の訳者あとがきによると、スティーブ・ハンフリーは彼女の夫だそうだ。

 

 

出演
ヘレン・ヘイズミス・マープル
バーナード・ヒューズ(レイフィル氏)「真夜中のカーボーイ」
ブロック・ピーターズ(グラハム医師)「アラバマ物語」
シーズン・ヒュブリー(モリー)カート・ラッセルの別れた妻、この作品一の美人。
スージー・カーツ(秘書ウォルター)ジム・キャリーの「ライアーライアー」
スティーブ・マハト(グレッグ・ダイソン)「スタートレック・ネクストジェネレーション」

 

 

 

アメリカ(ヘレン・ヘイズ)版とイギリス(ジョーン・ヒクソン)版の大きな違いは、アメリカ版でポールグレイブ少佐が皆から愛されていたことだ。嫌みな爺が真っ先に殺されるというイギリス的プロットは、アメリカでは受けないものらしい。
また、彼は義眼ではなかったから、左か右かなんて関係ない。こういう脚本の単純化は必要だろう。興味深い点は、ヒクソン版は犯人○○○○がいかにも外国人の悪党なのに、ヘイズ版は金髪のイケメンだった。
唯一残念な点は、米国版は英国版と比べて捜査陣が貧相である。
総じてこのドラマは、英国ミステリと比べて、レベルの差を感じさせなかった。米国のミステリドラマが一般にハードボイルドに偏りがちなのに、この作品はバランスがとれている。やはり、脚本の出来が違う。
このカリブ勝負、ヘレン・ヘイズとジョーン・ヒクソンは引き分けだろう。
はたして二代目ジェラルディン・マクイーワンは、どんな「カリブ海」を演ずるだろうか。

本はこちら。

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ミス・マープル「カリブ海の秘密」 1983 アメリカ(TV)

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