カンザス州での一家惨殺事件が発生し、それを取材して、犯人の一人の過去に自分を重ねたトルーマン・カポーティは、再審請求を続けたが結局死刑が執行されてしまい、ノンフィクション小説「冷血」を書いた。その経過を描いたのがこの映画。
主演はフィリップ・シーモア・ホフマンでアカデミー主演男優賞受賞、監督はベネット・ミラー。
あらすじ
カンザス州で一家四人惨殺事件が起きる。人気作家カポーティは早速事件を取材にカンザスへ幼馴染の作家ハーパー・リーとともに向かった。現地に入って旺盛な行動力で人脈を作った。そして犯人二人(ディックとペリー)が逮捕された。そのうちのペリーと面会したカポーティは、昔の自分との共通点を知ってもっともっと深く事件について知りたいと思った。彼は一方で再審請求を行ってくれる弁護士に依頼して、一方でペリーに近付き書籍になるようなことを教えてくれるように頼む。ペリーはなかなか口を割らなかったが、ディックだけは信用するなと言い続けた。ラチがあかぬと思い、カポーティはスペインに仕事で出かける。
ところがその間もペリーは、新しい弁護士を紹介しろと電話を掛けてくる。何度かの再審請求棄却の後、カポーティは遂に犯行の真相についてペリーに尋ねる。ペリーもカポーティに心を許したのか、つい教えてしまう。最初はディックが乱暴しようとして、ペリーはそれを止めた。しかしペリーは縛られて横たわる主人を見ているうちに、衝動的に喉を掻っ切っていた。苦しむ主人を見て、射殺したのだ。そして三人とも生かしておくわけに行かず、続けて射殺した。それを聞いた時、カポーティはホッとした。これで本を書き終えることができる。
そして結審から4年後の春になり、彼らの絞首刑は執行された。カポーティは形状に立ち会い、複雑な気持ちで彼らの最後を見届けた。
雑感
ここで登場する作家ハーパー・リリーは「アラバマ物語」の原作者である。小説にも映画には、トルーマン・カポーティも作者(主人公である人権派弁護士の娘)の幼馴染として登場している。
カポーティは「冷血」を発売してから、筆が進まなくなった。生活のために書くという作業が、二人の命を奪ったように思われたのだろう。物書きとは人を殺すことができる!
最後の長編の1章を短編として発表したが、それが自らの社会的生命を断つことになる。1955年名門であるウッドワード家の主人が低い身分出身の妻に射殺された事件は、当時センセーショナルなものだった。裁判で誤射ということで無罪決着したが、20年後に書かれたカポーティの小説はそれが殺人だったと暗に問題提起していたのだ。それにより未亡人は自殺してしまう。(息子二人もその後自殺する) それ以来カポーティは社会的に抹殺される。
実は上流社会に対してカポーティは複雑な感情を抱いていた。カポーティの義父と母は上流社会に入りたがった。二人は罪を犯して得た金でパーティーを開いたが、義父が逮捕され母は自殺してしまう。だから小説の発表は、上流階級その中でもウッドワード家への復讐の側面があったのかもしれない。
彼の原作映画「ティファニーで朝食を」(1961)の成功は意識的に無視している。カポーティはオードリー・ヘップバーンの起用に批判的だった。
スタッフ・キャスト
監督 ベネット・ミラー
製作 キャロライン・バロン 、 ウィリアム・ヴィンス 、 マイケル・オホーヴェン
製作総指揮 ダン・ファターマン 、 フィリップ・シーモア・ホフマン 、 ケリー・ロック 、 ダニー・ロセット
原作 ジェラルド・クラーク
脚本 ダン・ファターマン
音楽 マイケル・ダナ
配役
トルーマン・カポーティ フィリップ・シーモア・ホフマン
ペリー・スミス クリフトン・コリンズ・ジュニア
アルヴィン・デューイ クリス・クーパー
ネル・ハーパー・リー キャサリン・キーナー
ジャック・ダンフィー ブルース・グリーンウッド
ウィリアム・ショーン ボブ・バラバン
ディック・ヒコック マーク・ペレグリノ