(◎☆)国際健康機関の内部で極秘に研究していた生物兵器の細菌を浴びて感染症を発症しながら逃走したスウェーデンのゲリラを追う米国軍が、彼の乗った列車乗員全員を抹殺しようとする作戦を、国際的オールスターで描くパニック映画

製作はカルロ・ポンティ
ロバート・カッツ、トム・マンキーウィッツの脚本をジョルジュ・パン・コスマトスが監督し、エンニオ・グァルニエリが撮影した。
主演はソフィア・ローレン、リチャード・ハリス、バート・ランカスター
共演はエヴァ・ガードナー、マーティン・シーン、リー・ストラスバーグ、O・J・シンプソン、レイモンド・ラヴロックなど国際色豊かな顔ぶれ。カラー映画。

日本公開日はイタリアと同じで世界最速の1976年12月18日、地方での併映番組は「ラスト・コンサート」。国内配給会社は日本ヘラルド映画

 

ストーリー

ジュネーブにある国際保健機構に、過激派が乗り込みアメリカの研究室を破壊しようとした。ガードマンに見つかり一人が射たれて、研究中の薬ビンを壊してしまい、中の液体が散乱した。それは恐ろしい伝染性細菌だった。残った一人がビルの外に逃走した。
犯人を診察したスイス人研究者エレナは、ゲリラが伝染性の細菌が感染したことを確認した。アメリカ陸軍情報部のマッケンジー大佐が飛んで来た。ゲリラがストックホルム=ジュネーブ間の大陸縦断列車に乗り込んだことが判明する。スウェーデンで賞を受賞する医学者チェンバレンも同じ列車に乗り込んでいた。マッケンジーは、無線電話で彼を呼び出し、車内に潜んでいるゲリラを見つけてもらう。

千人もの乗客を検疫するために、列車をポーランドのヤノフへ向かわせた。そこに行くには、戦後使われていない「カサンドラ・クロス」と呼ばれる鉄橋が通らなければいけない。マッケンジーは、ニュールンベルグで、列車に防護服を着た警備隊と医療班を乗りこませた。乗客たちは騒然となったが、すでに感染者か現われていた。チェンバレンは、感染者を一つの車両に集めた。チェンバレンの先妻のジェニファーも、彼に協力した・・・。

雑感

イギリス映画「オリエント急行殺人事件」(1974)に刺激を受けて、ヨーロッパ特急内部のシーンをメインに描く国際オールスター映画を作ったのだろう。
最後の30分、特にマーティン・シーン演ずる登山家サンティニが麻薬中毒から覚醒して窓伝いに機関車に侵入しようとするシーンからは最後まで、手に汗を握った。その反面、前半の部分はやや冗長かと思う。

なかなか考えられない俳優の組合せで映画を作ってくれたのは、カルロ・ポンティの手腕だろう。その結果、映画は興行的に成功した。日本では、日本ヘラルドのCMが行き届いて、大ヒットした。


ただ、米国では一部の客を見殺しにしたことで批評家に強い批判を浴びた。

アリダ・ヴァリが目立たない役で出演していたことはショックである。当時56歳だから老け込むのは早すぎる。その後、「サスペリア」では教師役で活躍する。
リー・ストラスバーグと言えば、舞台ではアクターズ・スタジオの舞台監督として有名であるが、映画では滅多に見ない。


O.J.シンプソンも「正義の味方」役で登場する。彼は1994年に妻を殺した罪で、刑事裁判は無罪だが民事指板では有罪となる。
マーティン・シーンも今から考えられないほど若い。(80)

スタッフ

監督、脚本  ジョージ・P・コスマトス
製作  カルロ・ポンティ
脚本  ロバート・カッツ、トム・マンキーウィッツ
撮影  エンニオ・グァルニエリ
音楽  ジェリー・ゴールドスミス

 

キャスト

マッケンジー大佐  バート・ランカスター
ジェニファー(チェンバレンの元妻)  ソフィア・ローレン
チェンバレン博士(医師)  リチャード・ハリス
ニコール(死の商人の妻)  エヴァ・ガードナー
サンティニ(登山家)  マーティン・シーン
エレーヌ博士(IHOの研究者)  イングリッド・チューリン
カプラン(初老のセールスマン)  リー・ストラスバーグ
スタック(フォークグループの青年)  ジョン・フィリップ・ロー
スーザン(フォークグループの歌手)  アン・ターケル
ヘイリー神父  O・J・シンプソン
トム  レイモンド・ラヴロック
チャドウィック夫人(娘連れの夫人)  アリタ・ヴァリ
車掌  ライオネル・スタンダー

 

***

ユダヤ人のキャプランは、安全性に問題がある「カサンドラ・クロス」のことを、チェンバレンに教えた。チェンバレンは、マッケンジーに鉄橋前で列車を一旦停止して調査するように頼んだが、マッケンジーは無視する。
一方、エレナは高濃度酸素によって治療できることを発見するが、すでに列車の無線機は麻薬中毒のサンティニによって破壊された。チェンバレンや乗客たちが、警備隊に対してクーデターを起こし、機関車と列車だけでも切り離すように戦った。多くのものが撃たれて死んでいったが、最後はカプランが自爆して、列車後部だけ切り離すことができた。やがて、カサンドラ・クロスにさしかかり、後部の車輛の乗客だけを残して、機関車と前部列車は谷底に落下した。

何も知らないマッケンジー大佐は、上司に電話で全滅を報告した。
しかし、マッケンジーには監視が付けられていた。大統領は、ポーランドからの連絡で後部にいた乗客が続々と救出されている報告を受けていたので、全責任をマッケンジーに押し付けるのだった。

カサンドラ・クロス The Cassandra Crossing (1976) 英伊合作 ITC製作 アブコ・エンバシー配給 パニック映画の名作

投稿ナビゲーション