1974年にアルバート・フィニーをポワロ役に、イングリット・
最近ではデビッド・
ところが2015年に早くも「オリエント急行殺人事件」
あらすじ
第二次世界大戦以前の話。中東の窃盗事件を解決した名探偵エルキュール・ポワロは、
事件当夜0時35分に美術商ラチェットが、
それから雪の中で脱線事故が起きる。これは犯人も予期しなかったことだ。
翌朝ラチェットの死体が見つかる。アーバスノット医師(黒人)
警察が雪で足止めされる中、ポワロは鉄道会社から依頼を受け、犯人特定のため検死を行い、同じ客車に乗っていた人たちを一人一人訊問していく。そして様々なトラブルを経て、二つの結論を得る。
役者の格が1974年版と比べて、著しく低いのはやむを得ない。ローレン・バコールの後釜がミシェル・ファイファーなのだ。イングリッド・バーグマンの後継者はペネロペ・クルスである。(カトリック教徒に気を遣ったのだろうか) ジュディ・デンチはどう見てもイギリス人であり、ロシア人に扮することを失敗していた。
それでも監督、主演にイギリス人でシェークスピア俳優のケネス・ブラナーを、被害者役にジョニー・デップを起用したのは良かった。それに英語が非常にわかりやすかった。
前半はまずまずだった。後半に入って証拠調べが続く映像をどのように処理するのかと考えていた。
何と老エロキュール・ポワロが怪しい人物を追ってアクション・シーンをさせられ、最後は肩を銃で打ち抜かれたのだ。ホームズのようだ。アクション・シーンを入れるのならば、鉄道会社関係者のブーク役をジュード・ロウにでもやらせて派手に動かせば良い。
もちろんこれは映画オリジナルである。しかしここまで暴れておいて、犯人が最後に許してもらおうというのは、おこがましいw。
アーバスノット大佐を黒人容疑者にするのは、ご時世で仕方ないのだろうが、1934年の原作ではもちろん白人だ。
また彼が中立的な判断をしなければならない医師にな
またラチェット殺しが密室で行われたものではないことを敢えて強調しない。その後も雪の中の密室性はプロットでほとんど利用されない。
ラストに結末を選択する場面で殺人現場がオープンスペースか否かということが重要になるのだが、脚本家はあまり考えなかったのだろう。
原作は非常にパズル性の高い推理小説だったので、当時話題となったナチスやシオニズムと言った政治問題をまるで避け、人間性もあまり描かれていない。
それを無理矢理、人間味臭い作品に仕上げたのが、2010年のデビッド・スーシェ作品だ。正直言って、あの脚本は悩める裁判官としてのポワロを描きすぎて、原作を必要以上に複雑にしている。
一方、2017年版は1974年版ほど耽美的ではないが、2010年版ほど内省的でない。2010年版の行きすぎた部分を是正しつつ、アメリカ人を含めた誰もが楽しめるエンターテイメント作品を目指したのだろう。
個人的な総合評価としては、原作が100点だとすれば、1974年版が90点、2017年版が70点、2010年版が50点だ。
「まさかポワロで泣けるとは」は日本の配給会社20世紀フォックスのコピーだが、泣ける?どこで?
エルキュール・ポワロ映画第2弾は「ナイルに死す」に既に決まっているそうだが、第1作の最後でナイル殺人事件が起きたことを示唆するのは誤りだ。だってポワロは事件が起きる以前の段階から、犯人や被害者に同行するツアー客だったのだから。
でも次回の予告編の代わりに昔からよく使われた手法である。
久々のミステリ映画シリーズの誕生なのだから、生温かく見守ろう。
監督 ケネス・ブラナー
脚本 マイケル・グリーン
原作 アガサ・クリスティ
キャスト:
ポワロ – ケネス・ブラナー
ラチェット – ジョニー・デップ
ハバード夫人 – ミシェル・ファイファー
ミス・エストラバドス- ペネロペ・クルス
ハードマン – ウィレム・デフォー
ドラゴミロフ公爵夫人 – ジュディ・デンチ
マスターマン – デレク・ジャコビ
マックイーン – ジョシュ・ギャッド
アーバスノット医師 – レスリー・オドム・Jr
ミス・デブナム – デイジー・リドリー
ヒルデガルデ – オリヴィア・コールマン
アンドレニ伯爵 – セルゲイ・ポルーニン
アンドレニ伯爵夫人 – ルーシー・ボイントン
ミシェル – マーワン・ケンザリ
マルケス – マヌエル・ガルシア=ルルフォ
ブーク – トム・ベイトマン
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