レコンキスタ(1492)以前、11世紀のスペインでは、キリスト教徒とイスラム教徒が共存していたが、スペインのカスティージャ王国とアラゴン王国などの衝突と混乱につけ込み、北アフリカのムーア人ベン・ユサフが大軍を連れてイベリア半島に攻め込む。その時代にカスティージャの王直属の戦士として活躍したのがロドリゴ・ディアス(愛称エル・シド)である。

彼はスペインにいるイスラム教徒を全て敵だとは見ていなかった。話を通じるムータミンらは捕虜にしても釈放し、同盟を組んだ。フェルディナンド1世の死後、サンチョ2世に仕えたがやがてウラカ王女の陰謀によりサンチョ王は暗殺される。そして弟アルフォンソ6世が即位するが、サンチョ2世に付き従っていたエルシドとは反りが合わない。ベン・ユサフに落とされたバレンシア城を取り戻す好機が到来する。ムータミンは進軍を勧めるが、アルフォンソ6世はエルシドの勝手な軍事行動が気に入らずシドの家族を牢獄につなぐ。

東方ではキリスト教徒の十字軍がイスラム教徒と戦っていたが、西方では全く別の組み合わせで戦いが行われていた。つまりアフリカ系ムーア人とイベリア半島に定住したムーア人の覇権争い、そしてスペインの小国同士の度重なる衝突,王位争いだ。異教徒であっても義と利を共有するもの同士が手を結んでいる。それが叙事詩「わがシッドの歌」となって現在まで伝えられていることはエルシドがキリスト教とイスラム教を越えたスーパーヒーローだったことを意味している。キリスト教徒とイスラム教徒はただ憎み合い戦うものとすり込まれている我々の世界観を大きく修正しなければいけない。この事実を知るだけでもこの映画を見る意味はある。

但し,上映時間は長いしチャールストン・ヘストンらしくロマンスもあまりない。その点は覚悟されたい。

監督 アンソニー・マン
脚本 フレドリック・M・フランク、フィリップ・ヨーダン
音楽 ミクロス・ローザ

製作 サミュエル・ブロンストン
出演者

チャールトン・ヘストン
ソフィア・ローレン

 

エル・シド 1961 コロンビア

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