40歳を前にして無職独身のダメ男と鬱病のシングルマザーを母にもつ少年の友情をアメリカ人監督が描いた英国コメディー映画。
アカデミー脚本賞にノミネートされた。
ニック・ホーンビーの原作小説を「ギルバート・グレイブ」のピーター・ヘッジスが脚本化し、青春映画「アメリカン・パイ」のポール・ウェイツ、クリス・ウェイツ兄弟が共同監督した。
主演はだいぶ目の下の皺が目立ってきたヒュー・グラント。
共演はニコラス・ホルト(子役)、トニ・コレット、レイチェル・ワイズ。
日本国内でも上映された。
ストーリー
ノース・ロンドンに住む38歳のウィル・フリーマンは、気ままな独身主義者であり亡父の遺産だけで暮らしている。ウィルは女性と付き合っても2ヶ月で嫌になり、しかも別れ方が下手と来ている。親戚は、ウィルにそろそろ大人になれと忠告していた。しかし、ウィルはシングルマザーのアンジーとの交際を通して、シングル・マザーと付き合うと後腐れのない別れ方ができると思い込む。
ウィルはシングル・ペアレントの会に潜り込み、相手を漁る。スージーという女性と知り合い、ネッドという仮想の息子を作って近付く。
12歳の中学生マーカスは、鬱病を病むシングル・マザーのフィオナと暮らしていた。フィオナとスージーは親しい友人である。スージーに預けられていたマーカスは、ウィルとのデートに同行する。マーカスは誤って公園のカモを死なせるが、ウィルが機転を利かせて切り抜ける。マーカスはウィルを信頼し始める。スージーとウィルがマーカスを彼の家まで連れて帰ると、フィオナが自殺未遂を起こして倒れていた。ウィルは、フィオナを急いで入院させる。
フィオナは無事に退院するが、マーカスは家族は三人いないといけないと確信していた。彼は、フィオナとウィルを結婚させるつもりだった。彼は、ウィルを尾行して実は彼に子どもがいないことを突き止める。彼は、口止め料として毎日ウィルのアパートを出入りする。
ある日、マーカスは虐められながらウィルの部屋へ逃げ込んだ。そこでウィルは、マーカスにスニーカーをプレゼントした。しかし、翌日マーカスはそのスニーカーを学校で盗まれて、フィオナの前で泣いた。フィオナが詰問すると、マーカスはウィルとの関係を告白した。
ウィルがお洒落なレストランで食事を注文しようとすると、貧しい身なりのフィオナが怒って現れた。彼女は、ウィルをペドフィリア(小児愛者)と誤解していたのだ。仕方なく、ウィルはマーカスが虐められている事実を説明する。フィオナは、マーカスを助けるために側にいてほしいと言う。
ウィルも考え直して、マーカスに今風のラップ音楽を教えて学校に溶け込めるようにしてやった。すると、彼は憧れの上級生エリーに声をかけられる。
ウィルは、またまたシングルマザーのレイチェルと知り合う。胸がときめいた彼は、シングル・ファーザーで12歳の息子がいると嘘を吐く。ウィルはマーカスに手伝ってもらい、2人でレイチェルの家を訪問する。レイチェルの息子はマーカスを虐めていた同級生の一人で、マザコンの彼はマーカスにウィルを追い出せと脅迫する。
ウィルはレイチェルとデートを重ねるうちに、愛情らしきものを感じ出し、ついにマーカスは子どもでないことを打ち明ける。レイチェルは呆れ返り、ウィルを罵倒した。人生初めて打ちのめされたウィルは、今までの人生の虚しさを思い知らされる・・・。
雑感
原作のラストは、歌手のカート・コバーンが死んだこと(1994年)にショックを受けたエリーがレコード屋の窓を壊すが、マーカスの両親、ウィル、エリーの母親がレコード屋と話をつけたことになっている。
しかし、遺族の意向でカート・コバーンを出せなくなったのか、出さないほうが良いと判断したのか知らないが、やや陳腐な、しかし子供にもわかりやすいエンディングをウェイツ兄弟監督は選んだ。
意外や意外、ヒュー・グラントがクズ男の役でスケコマシにしか見えない。この映画の目的は、遊び人だった彼が美女と結ばれるまでを描いているのではない。
その彼と共に大人の階段を上がるのが子役時代のニコラス・ホルトである。まさかこのポッチャリした子が英国映画界の大スターになるとは思わなかった。
今後、息子マーカスにはくっついて欲しいと切望されるが、フィオナ演ずるトニ・コレットはウィル演ずるヒュー・グラントに恋人として靡かない。フィオナは貧しくともポリシーのあるタイプで、ウィルはまだまだ無節操タイプである。水と油の二人のようだ。
イラストレーターのレイチェル・ワイズの方が、可能性はまだ残されている。このようにウィルの将来は、読者や視聴者に託されている。
スタッフ
監督、脚本 ポール・ウェイツ、クリス・ウェイツ
製作 ジェーン・ローゼンタール
製作 ロバート・デ・ニーロ、ブラッド・エプスタイン、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー
製作総指揮、原作 ニック・ホーンビィ
製作総指揮 リン・ハリス
脚本 ピーター・ヘッジス
撮影 レミー・アデファラシン
音楽 デーモン・ゴフ
キャスト
ウィル ヒュー・グラント
フィオナ トニ・コレット
マーカス ニコラス・ホルト
レイチェル レイチェル・ワイズ
スージー ヴィクトリア・スマーフィット
エリー ナタリア・テナ
クリスティーン シャロン・スモール
アリ オーガスタス・プリュー
***
フィオナは、再び鬱病が酷くなってきた。彼女を元気づけるために、マーカスはスクール・ロック大会の出場する。一方、ウィルはフィオナに会いに行く。フィオナは、今日のスクールロック大会でマーカスがフィオナの大好きな歌「やさしく歌って」を歌うと自慢げに話す。ところが、フィオナは先天的な音痴でマーカスの歌唱力の酷さをわかっていない。ウィルは、マーカスがまた学校中の笑いものになると考え、急いで学校に向かった。
学校では、マーカスはアカペラで歌を披露している。一瞬会場は冷え切った。その時にウィルがギター伴奏して登場する。そしてマーカスと一緒に歌うと、意外と受けて会場から笑い声と拍手が漏れる。それを会場で見ていたフィオナもレイチェルもウィルを見直す。
またクリスマスがやってくる。ウィルのアパートでは、マーカス、フィオナ、レイチェル、エリーたちが集まってパーティーの準備をしていた。ウィルは利己主義を改めてより周りに人を集める様になり、マーカスは先輩エリーに対しても対等に接するほど男らしくなっていた。