(☆)アガサ・クリスティは、離婚後の1928年に年下の考古学者マックス・マローワンと出会って熱烈な恋愛関係に墜ち再婚する。
その際にイラクでマックスの同僚が殺されてアガサがその謎を推理する、というフィクション(ミステリ映画)。
 
脚本は前作同様にトム・ダルトンが担当し、新たにサム・イェイツが監督した。
撮影はキャサリン・ゴールドシュミット
 
第一作から変わってこの作品で主演クリスティ役は、リンゼイ・マーシャルが演じている。
共演はマックス役にジョナ・ハウワー・キング
他にスタンリー・タウンゼント、ジャック・ディーム、キャサリン・キングスリー
 
 

雑感

 
この映画の事件は、トリックや動機にやや荒っぽさがある。アガサ・クリスティなら、こんな作品にはしなかっただろう。
さらに配役にも難がある。英国の黒人女性は、アメリカより早く出世していたが、医大卒のパールが戦前に中近東で秘書として働くのは無理がある。歴史の改竄だ。
総じて、惜しい出来になった。
 
離婚が成立したアガサ・クリスティマックス・マローワンと出会い、年の差がありながら情熱的な恋に落ちた時代を描いている。
史実でアガサは、マックスと1930年9月11日に再婚し、彼女が亡くなるまで連れ添った。
マックスのおかげでクリスティが中近東地方を舞台にする推理小説を得意とするようになった。
特にこの映画は、彼女の推理小説「メソポタミアの殺人」などを彷彿とさせる。
 
「探偵アガサ」シリーズは作品毎に主演が変わる。前作から二年後の話なのだが、主演が交替してイメージはがらりと変わってしまった。
この作品のリンゼイ・マーシャルは、前作のルース・ブラッドリーと比べて、お世辞にも美人とはいえないが、なぜか濡れ場は多かった。
 
事件解決後に帰国したアガサが出版社に「ポワロ」の続編「青列車の秘密」(かな?)と、恋愛小説「愛の旋律」を渡すシーンがある。
そこでアガサは、「愛の旋律」の作者名を「メアリ・ウェストマコット」という別ペンネームで出版することを提案したことになっている。
実際、初版時はその名で発行されていた。
 
実際は、「愛の旋律」の執筆にもう少し時間がかかり1930年に出版された。
また、1928年出版の長編推理小説「青列車の秘密」は旧作の単なる焼き直しで、原型になった短編小説「プリマス行き急行列車」の方がはるかに出来が良かった。
当時は、熱愛でお忙しく「愛の旋律」は、後回しにされたのだろう。
 
 
 
 

キャスト

 
リンゼイ・マーシャル  アガサ・クリスティ
ジョナ・ハウワー・キング 考古学者マックス・マローワン
スタンリー・タウンゼント  コンスタンス・バーナード卿(大師)
ジャック・ディーム  大英博物館員レオナルド・ウーリー
キャサリン・キングスリー  妻キャサリン・ウーリー
ワジ・アリ  警備員エゼルキエル
ローリー・フレック・バーン  富豪マーマデューク
ブロナー・ウォー  ルーシー・バーナード(大使夫人)
クリスタル・クラーク 黒人女性パール・サルー
 
 
 

スタッフ

 
脚本 トム・ダルトン
監督  サム・イェイツ
音楽  オリバー・コーツ
撮影  キャサリン・ゴールドシュミット
 
 

ストーリー

 
1928年のイラク・バスラで英国人考古学者マックス・マローワンは、同僚パトリックが瀕死でいるところを発見する。ダイイング・メッセージなのかパトリックは、マックスに「イシュタルの呪い」と書かれた石板を示して亡くなった。
 
その頃、アガサ・クリスティは、夫アーチボルトとの離婚が成立したので、恋愛小説を書いて新境地を開きたいと思っていた。考古学者レナード・ウーリーの妻キャサリンにロマンス小説の執筆場所として、発掘跡でもあるイラクのウルを紹介してもらう。
 
アガサはウルに到着後、頭から血を流しているマックスを発見する。マックスは、パトリックを殺した犯人を探していて、誰かに銃で撃たれたのだ。ウーリー夫妻の屋敷は、遺跡発掘に携わる関係者や、マックスら考古学者が寝泊まりする宿舎でもあった。アガサは、若いマックスが心配なのでウーリー家に滞在し、パトリック殺害犯人を追う彼と行動を共にする。
 
キャサリンが可愛がっていた猿が首を吊って死んだ姿で見つける。アガサは、キャサリンから犯人を探すように依頼される。まず彼女は、屋敷の住人と面会する。
・マーマデューク氏:裕福でウル遺跡の所有者。
・先述したウーリー夫妻。
・エセキエル:イラク人警備員。
・若い黒人女性パール:医学博士号を持つインテリだが、輸出担当者でもあるキャサリンの助手を務める。
・英国大使コンスタンス・バーナードの妻ルーシー。
 
アガサは、「殺人の真相」同様にコナン・ドイルにアドバイスを求めて電報を打った・・・。
ドイルは、猿の死因を毒殺だと推理したため、アガサは猿の肝臓を取り出して硫酸と重クロム酸カリの混合液に浸すと、ストリキニーネが発見される。犯人がパトリックを殺すために用意したストリキニーネを猿が誤飲して死んだのだ。
アガサは、ウルに派遣された英国大使コンスタンスに捜査協力を要請する。その代わりにコンスタンスは、妻のルーシーが不倫していると訴え、アガサに仲裁を依頼する。
 
翌日、アガサはマックスと共にウル遺跡の宝物保管室へ行く。
アガサとマックスは互いに愛し合っていることを確認して、今にも結ばれようとする。しかし、保管室に爆発物が投げ込まれた。幸い、不発弾だったので、アガサとマックスは助かる。
 
アガサは、ルーシーが盗掘の手助けをしていたことに気付き、「あなたは殺人の共犯者よ」と告げる。そのまま、ルーシーは消えてしまう。
コンスタンスからパトリックの遺体が取り違えられて、すでに火葬されていたことを告げに来る。
さらに埋めたはずの猿が掘り返されていたことを知ったアガサは、屋敷の庭に埋葬されたはずの猿の棺桶を掘り返す。そこには、ルーシーの遺体があった。
 
マーマデュークは、不祥事が続く遺跡を閉鎖することにした。ところが、遺跡閉鎖は油田開発のためだと判明する。
アガサは再び、大英大使館にいるコンスタンスの元を訪れ、彼に不倫相手で盗掘していて目撃者パトリックを殺害したのはマーマデューク本人であることを告げる。
 
アガサは、保管室でマーマデュークを詰問し解放した途端に、爆発を起こしてマーマデュークは死ぬ。マーマデュークの銃からはマックスを撃った弾丸と同じものが出てきた。マーマデュークがマックスを射った犯人に違いない。ルーシーも邪魔になったマーマデュークが殺したに違いない。
 
しかし、マーマデュークの単独犯だろうか?
ウーリー夫妻は、事件は解決したと思い込み、これで発掘が進むと言って祝杯を挙げていた。
翌日、アガサは再び関係者を一堂に集める。そこで、コンスタンスはウーリー夫妻に遺跡発掘の中止と英国系石油会社による油田開発を宣告する。
コンスタンスに代わり、アガサがマーマデューク殺害事件の真犯人を推理する。この事件で最も利益を得たのは、ウルの石油開発で役人として出世することになったコンスタンスであり、一連の盗掘事件の首魁も彼だったのだ。
コンスタンスは、名誉の死を選び、隠し持っていたストリキニーネを飲んで自殺した。
 
 
 
アガサとイシュタルの呪い Agatha and The Curse of Ishtar 2019 ダーロウ・スミスソン・プロ製作 キューメディア配給 – 名探偵アガサ・シリーズ第二弾

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