マララ・ユフスザイは教育家の父を持ち、パキスタン女性としては先進的な思想を持ったがために、結果故郷を追われる。彼女は祖国の女子が教育を受ける権利を持たないことに疑問を持ち、訴えは大きなうねりとなって彼女の人生を変えていく。少女の命を賭けた戦いの記録を綴ったドキュメンタリー映画。

あらすじ

パキスタン・タリバンの一味が、一人のイスラム系少女を撃った。少女は当時15歳のマララ。マララとアフガニスタンの歴史に残る勇敢な女性の名でもある。彼女はタリバン批判ブログを書いていたのだ。
彼女は重傷を負い、英国まで救急搬送され大手術が成功して一命を取り留める。

2013年、イギリスのバーミンガムでマララは家族と一緒に暮らしていた。普段はおてんばな一面を見せる普通の女の子である。
イギリスに渡って一年が経過してマララはマスコミの寵児となり、父ジアウディンがマネージャーのようにいつも付き添っている。

故郷パキスタンには、まだ帰還することができない。タリバンは入国したら命は無いと脅迫していた。
2007年にタリバンが戦車でパキスタンのスワート地区に進攻し、指導者ファズルッラーが地方政権を掌握した。それに対してパキスタン政府は見て見ぬふりをしたのだ。

ファズルッラーは、当初女性の立場に寛容だった。
しかしスワートに独裁政府が出来てから、ファズルッラーは市民の生活を束縛し始めた。外国製品の購入、使用の禁止を命じた。

父ジアウディンは、子どもの頃から吃音がコンプレックスだった。が、演説家の父のバックアップで人前で吃ることに恐れを抱かなくなった。自信を得たジアウディンは、タリバンの独裁政治に異論を唱える。しかしともに抗議した仲間は、タリバンに次々と粛清される。

2013年タリバンは女子教育に激しく反対し、何百もの学校を破壊する。当時スワートに居住していたマララはBBC記者の依頼で日記をつけ始める。彼女が伝えるスワートの惨状は、イギリスのマスコミを通して世界に報じられた。

タリバンは、女子の通学を完全に禁止し、政府軍との対立が激化した。父の学校に通っていた女性生徒は教育の場を失い、国内難民となる。3ヶ月後、ユスフザイ一家がスワートに戻ったが、廃墟で生活した。
マララは人のいない民家で、スワート全土に向けた、ファズルッラーを名指しで批判する映像を収録した。映像はインターネット上で世界中に広まる。

学校からの登下校のバスをタリバン一味が奇襲し、マララが標的にされ周りの友人も撃たれた。顔面に銃弾を受け、少女は意識不明の重体となる。危険なパキスタンから国外の病院に移され、英国で集中治療が施された。

マララは無事に意識を取り戻し、まだ混乱している状態でジアウディンに激情をあらわにした。父が自分の活動を止めてくれれば、こんなことにならなかった。長く懸命なリハビリの末、マララは回復した。

ニューヨークの国連本部でマララは16歳の誕生日にスピーチを行った。「銃撃され、私の中の恐怖と絶望は死にました。私の志は変わっていません」とマララは語った。そして「1人の子ども、1人の教師が、一冊の教科書とペンを持てば世界は変えられます」と続ける。

インタビュアーにマララは父親の操り人形ではないかと聞かれる。彼女は、父は名を与えただけで、この人生は私自身が選んだものだと答えた。
2014年、マララは史上最年少17歳でノーベル賞平和賞を受賞した。マララは「私の声は世界中の女の子たちの声だ」と記念スピーチした。

 

 

雑感

その後、故郷スワートで恐怖政治を敷いていたタリバンの首領マウルナ・ファズルラーは2018年に米軍の攻撃によって死亡した。彼はブット元大統領の暗殺犯だったと目されている。

映画のはじめはマララユスフザイ家の人々の他愛のない日常話だったが、途中からマララ銃撃事件の回想、ノーベル平和賞受賞の模様、その後のパキスタン大衆のマララに対するゾッとするほど冷たい態度が描かれて、宗教や閉鎖社会の恐ろしさを感じた。

彼女は長生きできるだろうか?顔面を撃たれた後遺症も心配だし、彼女の命を狙う人間もいるだろう。1990年代ブット大統領の時代にパキスタン男児債務労働(借金の形に子供を奴隷として働かせる制度)を訴えて国際的に活躍し始めた途端に射殺されたイグバル・マシーのように暗殺されることもある。

ドキュメンタリーならではのテクニックとして、素朴なタッチのアニメーションを多用して回想シーンを描いていた。

スタッフ

監督 デイヴィス・グッゲンハイム
製作総指揮 ジェフ・スコール
製作 デイヴィス・グッゲンハイム 、 ローリー・マクドナルド 、 ウォルター・F・パークス 、 デヴッッド・デイリーバート 、 シザ・シャヒード
撮影監督 エリック・ローランド

キャスト

(すべて本人)
マララ・ユスフザイ
ジアウディン・ユスフザイ
トール・ペカイ・ユスフザイ
クシャラ・ユスフザイ

わたしはマララ He named me Malala 2015 イマジネーション・アブダビ製作 フォックス・サーチライト配給

投稿ナビゲーション