“神軍平等兵”と名乗る奥崎謙三が、終戦直後に味方兵士を敵前逃亡で処刑した元上官を訪ね、真相を究明し、ついには銃を放つドキュメンタリー映画。
監督は「極私的エロス・恋歌1974」の原一男。
あらすじ
1982年兵庫県神戸市。奥崎謙三はニューギニア戦線で1943年に捕虜になり生き残った。その後1969年に天皇にパチンコを発射したアナーキストである。
奥崎が所属していた独立工兵第36連隊で、終戦後何日もたってから敵前逃亡罪で兵士が上官に処刑された事件を知った。その兵士二人の遺族とともに、処刑した五人を訪ね、当時の話を聞く。だが、処刑に立ち会ったことを認めたが、誰も直接撃っていないと語る。さらに彼らは飢えたので原住民の人肉を食したと証言する。遺族は奥崎が暴力を振るうことから、奥崎を遠ざけるようになる。奥崎は暴力をもって、元軍曹に事実をありのままに白状させる。二人の兵士も食べられたのだろうか。そのために敵前逃亡をでっち上げたのではないか。その後、奥崎は古清水中隊長宅を訪ねたが、不在で居合わせた息子に向かって銃を発射し、逮捕される。1987年1月奥崎は殺人未遂罪で徴役12年の実刑判決を受ける。
雑感
初めて見たときは、戦争で日本人同志で殺し合いをして食べてしまうなんて事が本当にあったのだなあと驚いた。
二回目に見て、本物のアナーキストっているんだなと思った。アナーキーというバンドがいて、パンクロックを演奏していたが、セックスピストルズやクラッシュの真似と言われ、やがてメンバーの一人が元妻に対する殺人未遂で実刑判決を受けて、改名したが事実上解散した。(2018年にオリジナルメンバーで復活した)アナーキズムに対する理解はその程度あるいは学生運動の生き残りだった。
でも奥さんが生きていた頃の奥崎こそは真のアナーキーだった。
奥崎謙三がアナーキストになった理由は、戦争での悲惨な体験を基にしているのだろうが、戦争によってたがが外れて本性が発露したとも考えられる。
これに気付いて以来、人間は本来性悪なものだと考えるようになった。
従って戦争に至らないようにするためのストッパーが大切なのだ。
スタッフ・キャスト
監督・撮影 原一男
製作 小林佐智子
構成 鍋島惇
企画 今村昌平
出演
奥崎謙三