「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズが製作・監督にあたった名作ホラー映画である。
原作はシャーリー・ジャクソンの怪奇小説「山荘奇談」で、ネルソン・ギディングが脚色した。
1999年には36年ぶりに映画「ホーンティング」としてリメイクされている。
主演は舞台女優で、「エデンの東」にも出演していたジュリー・ハリス、共演は、「ライムライト」のクレア・ブルーム、英国人のリチャード・ジョンソン、「ウェストサイド物語」のラス・タンブリン。
やはりホラー映画は、闇の深みを感ずる白黒映画に限る。
あらすじ
ニュー・イングランドの村に、古い屋敷が立っていた。「ヒル・ハウス」と呼ばれるその屋敷は、何十年も前ヒュー・クレインによって建てられたが、まず入居初日に自動車事故で妻が亡くなり、幼い娘と二人だけの生活が始まった。その後、後妻を娶るが、彼女も原因不明の転落死で亡くなる。当主ヒューも亡くなるが、娘アビゲールは何年経っても育児室から出てこなかった。看護婦として村の娘があてがわれたが、アビゲイルが危篤のとき、男と会っていたため、アビゲイルは亡くなる。そして看護婦も首を吊って死ぬ。
住む者が全て不可解な死に方をしたせいで、「ヒルハウス」は呪われた家と噂されており、所有者サナーソン夫人は売りに出したが、買い手が付かなかった。
人類学者マークウェイ博士は、幽霊屋敷こそ心霊研究に適していると考えた。屋敷の賃貸契約を格安価格で結んだ博士は、霊感が強いと言われるエレノア(ネルが愛称)とセオドラ(愛称テオ)の女性2人を被験者として選んだ。サナーソン夫人も資産管理の観点から甥のルークをマークウェア博士に同行させた。
一行が初めてこの建物で顔を合わせた夜、女たちは大音響がするポルターガイストに驚かされる。
翌日、建物の中心部に財産目録に載っていない石像を発見する。それはヒュー・クレイン、前妻、後妻、娘アビゲール、それに看護婦の像だった。その看護婦にエレノアが生き写しだった。彼女と何か血縁があるのだろうか。
翌々日、博士の夫人グレースが突然やって来た。博士に仄かな想いを寄せていたエレノアは、ショックを受けた。
怪奇現象など全く信用しないグレースは、この夜育児室に1人で寝た。
夜中に予感がしてエレノアが育児室に行くと、夫人の姿は既になかった。博士が、どこを探しても行方は分からなかった・・・。
雑感
2000年の映画「ホーンティング」は、この映画のリメイクと言うより第二弾で後日譚とも言える。どちらもホラー映画だが、こちらの方がはるかに格調が高くて良い。
結局、謎はわからないままだったが、ネルは、ヘルパーの身内とか子孫だったということだろうか。それともただ似ているからあの世へ引っ張り込まれた?
ネル役のジュリー・ハリスの憑依した演技が飛び抜けている。さすが、「エデンの東」のヒロインだ。
テオ役のクレア・ブルームにも霊能力が備わっていた。その辺りは、「ホーンティング」と異なる。
博士役のリチャード・ジョンソンは、エルキュール・ポワロのようなメイクだった。後年頭も薄くなるのだから、ベルギー訛りを真似たら、ポワロを演じられたのではないか。
博士の妻グレースの存在が、「ホーンティング」との大きな違いである。
スタッフ
製作、監督 ロバート・ワイズ
脚色 ネルソン・ギディング
原作 シャーリー・ジャクソン「山荘奇談」
撮影 デイヴィス・ボウルトン
美術 エリオット・スコット
キャスト
エレノア ジュリー・ハリス
テオドラ クレア・ブルーム
マークウェア博士 リチャード・ジョンソン
ルーク ラス・タンブリン
博士の妻グレース ロイス・コルオトン
***
エレノアはグレースの失踪は自分のせいではないかと思い込むようになる。そして看護婦が首を吊った螺旋階段を登り始める。しかし階段は古くなって今にも崩れそうだった。彼女はそこを上り詰めると、奥の扉からグレース夫人の顔が見えた。エレノアは絶叫して、博士に保護された。しかし博士には夫人が見えない。
博士は、エレノアを実家に帰るように説得する。博士はエレノアを無理矢理車に乗せ、ルークに同乗させるつもりだった。しかし車は勝手に発進して、猛スピードで大木に激突し、エレノアは死んでしまった。その大木は、以前クレイン氏の前妻が事故で死んだのと同じ木だった。そのとき、グレースがひょっこり顔を出した。屋敷の中で迷った、途中で扉を開くとエレノアに出会ったと語った。
一体、何がヒルハウスで起きたのか、いまだに謎のままである。