原作梶原一騎、作画つのだじろうの書いた大山倍達の伝記漫画(内容は派手に脚色している)からアニメにもなった「空手バカ一代」が、大山倍達の弟子でもある千葉真一主演で実写版映画になった。そのシリーズ三部作の第一作である。
監督は山口和彦、脚本は鈴木則文、共演は多岐川裕美、成田三樹夫、石橋雅史
原作者に公開当時の劇画を担当していた影丸譲也を加えているが、このエピソードの部分を漫画に描いたのは、前任者つのだじろう先生である。

あらすじ

戦後初の全日本空手道選手権大会が、洗武館館長の中曽根によって開催された。数十人の選手の中にはボロをまとった大山倍達もいた。決勝は南部五段と大山の戦いとなったが、実戦をこなしている大山に一日の長があり圧倒して優勝した。洗武館の中曽根ら空手関係者は、大山空手を“けんか空手”と馬鹿にしてえ黙殺した。倍達は動じずひたすら稽古にはげんだ。そんな姿に感銘を受けた洗武館の若手有明は倍達に入門する。倍達は米兵にからまれた智八子を救ったことから、親しくなった。猛牛が暴れ出して周囲に害をなして困っているので、倍達が拳で倒す。これが話題となったため、中曽根らは倍達を牛殺しといって馬鹿にする。怒った有明は抗議するが、中曽根は正当防衛として省吾を射殺した。省吾の死は倍達にとってショックだった。仁科という男と盛り場で喧嘩して殺してしまう。正当防衛で釈放されるが、農業を営む、残された仁科の妻子の世話を見るために、空手の道を捨て農業に勤しむ。やがて、倍達の誠意が通じて仁科の妻から空手の道に戻って欲しいと言われる。
倍達が空手に戻ったことを知った中曽根は、南部、李東竜を引き連れて倍達に決闘を申し込む。倍達は中曽根らの挑戦を受け、死闘の末、彼らをすべて倒した。

雑感

大山倍達は寸止めが主流だった日本の空手に格闘技としての要素(フルコンタクト空手)を導入したことが有名。それが現代の異種格闘技戦、総合格闘技、K-1などに大きな影響を残している。
またこの時代はカンフーブームだったので日本の空手より足技を多用する少林寺など中国拳法に強い影響を受けている。

この映画(第一部)で大山倍達について描かれていることは、かなりデフォルメされて伝説映画というべきだが、事実も多い。戦後第一回全日本空手チャンピオンになったのも、宣伝のために記者を呼んだが素手で牛を倒したのも事実。(第二部以降はフィクション部分も多くなる)
しかし肝心の大山倍達が韓国出身で戦後も韓国籍に入ったことを全く描いていない。日本の空手界から相手にされなかったのも、戦法にテコンドー要素を含んでいたからではないか。韓国映画「風のファイター」はリアルな大山倍達を描いている。
奥さんは戦後結婚して三女を生み添い遂げたが、同じ読み方で智弥子という方だ。俳優藤巻潤の実の姉である。大山倍達死後の後継者争いにも関与した。なおこの作品で二人は結局結ばれないw。
千葉真一は極真会館の有段者で申し分のない配役だが、もう一人空手映画に忘れられないのが亡くなった石橋雅史(極真会館七段)である。他の空手映画でも出演しているが、その度に器用に型や流派を変えてくる。特に「けんか空手」シリーズは三作に役柄を変えて登場する。彼のフォームには要注意だ。

スタッフ

企画 太田浩児
原作 梶原一騎 、 影丸譲也(作画)
脚本 鈴木則文 、 中島信昭
監督 山口和彦
撮影 中島芳男
音楽 菊池俊輔

キャスト

大山倍達 千葉真一
藤巻智八子  多岐川裕美
有明省吾 千葉治郎
ムッシュ小島 由利徹
中曽根龍起館長  成田三樹夫
南部棋八郎  石橋雅史
剣鬼  今井健二
玄  内田勝正
仁科守雄 室田日出男
妻幸恵 茅島成美
村田警部補  河合絃司
ニハシ 小林稔侍
近江四段 真樹日佐夫(梶原一騎の実弟)
喜多村 日尾孝司
与那島 苅谷俊介
上林鉄舟 名和宏

けんか空手 極真拳 1975 東映製作・配給

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