上海帰りの裕福な夫人と知り合ったばかりに殺人事件の被告にされる男を描くミステリー映画

製作・監督・脚本はオーソン・ウェルズ、原作はシャーウッド・キングの「If I Die Before I Wake」。
撮影は「決断の三時十分」のチャールズ・ロートン・ジュニアの他にはクレジットされていないが、「裁かるるジャンヌ」のルドルフ・マテと「ヒズ・ガール・フライデー」のジョセフ・ウォーカーを起用している。

主演は、撮影当時夫婦だったリタ・ヘイワースオーソン・ウェルズ(上映前に離婚した)。
共演はエベレット・スローン、グレン・アンダース、テッド・デ・コルシア

全米公開は1948年。優秀な映画として、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存されている。
日本初公開は1977年で、配給は水野晴郎のIPインターナショナル・プロモーション)。
白黒映画。

ストーリー

ニューヨーク、夜のセントラルパーク。一人で散歩をしていたマイクは、馬車に乗ったエルザとすれ違う。その後、暴漢に襲われたエルザを助けて、二人は気安くなり身の上話を少しする。彼は、彼女が有名弁護士バニスターの妻であることを知ってガッカリする。

翌日、就職斡旋所にバニスターがやって来た。カリブ海からメキシコを通ってサンフランシスコに行く船旅の船員として、妻エルザがマイクを推薦したのだ。バニスターはその依頼に気が乗らなかったが、引き受けた。航海は順調に続き、マイクとエルザは親密になる。バニスターの共同経営者であるグリズビーと探偵ブルームの存在が気になり、手を出さなかった。

サンフランシスコでグリズビーに会ったマイクは、「グリズビーを殺したのは私です」という書類にサインすれば5千ドル与えると言われる。グリズビーは世事が嫌になり死んだことにしてアメリカから脱出したいからだと言う。死体さえ上がらなければ、マイクは逮捕される心配がない。マイクは、エルザと駆け落ちする資金が必要だったため書類にサインした。そして夜の港で再び、グリズビーと落合う約束をする・・・。

 

雑感

一流のフィルム・ノワールだ。ファム・ファタールがリタ・ヘイワースで、事件に巻き込まれる男がオーソン・ウェルズだ。
原作の犯行動機がいささか複雑なので、初めは結構裏を掻かれる。ディレクターズ・カットは百五十五分あったそうだが、配給のコロンビア映画が怒って八十八分に縮めたそうだ。そのため、映画はカットだらけで、ラストの三十分に至っては急展開になる。そのために、置いてきぼりを喰らう感じがある。

撮影に凝っていてカメラ・ワークがなかなか素晴らしい。鏡の間のリタ・ヘイワースのアップ・シーンが、ジョセフ・スタンバーグ監督の「上海特急」でのマレーネ・デートリッヒ並に凄い。このアップの撮影は、ルドルフ・マテだろう。他のシーンについては一体どういう風に三人のカメラマンを使い分けたか知らないが、これを使い分けるオーソン・ウェルズ監督もすごい目利きだ。

唯一、勿体ないと思わせるのは、赤毛を金髪に染めて短髪にしたリタ・ヘイワースが若く見えない。撮影当時、リタはウェルズとの間に一子をもうけたとは言え30歳前の女ざかりだった。しかし、オーソン・ウェルズは、被写体である妻に対して美しく撮りたいという思いは無かったのだろう。
それでもアップ・シーンに耐えるリタ・ヘイワースも女優根性を見せた。特に死ぬシーンは、さすがのウエルズ監督も気合が入っただろう。彼女の演技人生の中でも三本の指に入るものだった。大根女優なんて言われるのは、監督が下手だからなのだ。

 

スタッフ

製作、監督、脚本  オーソン・ウェルズ
原作  シャーウッド・キング
撮影  チャールズ・ロートン・Jr(ルドルフ・マテ、ジョセフ・ウォーカーはノン・クレジット)
特殊効果  ローレンス・バトラー
音楽  ハインツ・ロームヘルド

キャスト

エルザ・バニスター(妻)  リタ・ヘイワース
マイケル・オハラ(船員)  オーソン・ウェルズ
バニスター弁護士  エヴェレット・スローン
グリズビー弁護士(共同経営者)  グレン・アンダース
シドニー・ブルーム(探偵)  テッド・デ・コルシア

 

***

グリズビーが港に行こうとすると、ブルームが突然現れ脅迫する。しかし、グリズビーは構わず射殺してしまう。それからマイクに会い、弾丸を海に一発打たせた後、グリズビーはボートで沖に出た。しかしマイクの知らないところで、再び上陸してバニスターの前に現れんとする。
マイクはエルザの元へ急ぐが、警察が道路を封鎖していた。グリズビーが殺されたのだ。そこにサインした書類が出てきて、マイクが逮捕される。殺人犯として裁判を受ける彼は、死刑宣告の日に裁判所を脱走しチャイナ・タウンに逃げ込む。エルザと京劇の劇場に隠れているときに、急激に眠くなる。
彼が気づいたとき、遊園地の鏡の間にマイクは倒れていた。やがてエルザが現われた。そもそもエルザがグリズビーと組んで、バニスターを殺し彼の財産を自由にするはずだった。しかし、探偵ブルームがグリズビーの魂胆を見抜いたために、グリズビーがブルームを殺してしまった。それを知ったエルザは、グリズビーを生かしては危険と判断し、グリズビーを射殺したのだ。
やがて、鏡の間にバニスターも現われ、エルザと射ち合いになる。結局二人は、相撃ちになって共に死んでしまう。マイクは、バニスターが地方検事に残した手紙によって無罪となり、苦い思い出と共にサンフランシスコを去った。

上海から来た女 The Lady from Shanghai (1947) オーソン・ウェルズ製作 コロンビア配給

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