ナチス・ドイツから拉致されたチェコスロバキア人の化学者とその娘を救出する英国人スパイの活躍を、コメディ・タッチに描いた戦争サスペンス映画(英米合作)である。

ゴードン・ウェルズリーの短編小説「Report on a Fugitive」を原作にして、シドニー・ギリアットフランク・ローンダーの脚本を戦後名匠になるキャロル・リード監督が映画化した。

主演はレックス・ハリソンマーガレット・ロックウッド
共演はポール・ヘンリード、ベイジル・ラッドフォード、ノーントン・ウェイン
白黒映画。
日本では、しばらく劇場未公開だったが、TVで放映され、DVDも発売されている。

ストーリー

第二次大戦前夜の1939年、ナチス・ドイツはズデーテン地方を併合した上でチェコスロバキアを解体して、優秀な科学者をナチス・ドイツに協力させた。プラハにいた化学者のボマッシュ博士はいち早く英国へ脱出したが、娘のアンナをゲシュタポは逮捕した。
収容所に入れられたアンナに反ナチスのカールと知り合う。彼らは、ナチスに反感を持つ兵士に協力してもらい収容所から脱走し英国に逃げる。
ロンドンに着いた後、カールは知人に会いに行く。それがゲシュタポのスパイだった。ゲシュタポはボマッシュ博士を連れ戻すため、娘を利用する。
アンナは新聞広告を出して保養地ブライトボーンにいる楽譜屋ガス・ベネットと連絡を取る。ガスは、実は海軍のディッキー・ランドールだった。彼のおかげでようやく父と再会できた。
しかし、博士と娘はカールに誘拐され、Uボートによりベルリンに連れ戻される。

数日後、ランドールはドイツ陸軍将校ヘルツォフ少佐の姿をして、ボマッシュ博士を救出するためにベルリンの海軍本部に現れる。ボマッシュ博士は、ナチスの尋問に対して戦争協力を強硬に拒否していた。ランドール(ヘルツォフ)は娘アンナと愛し合ったことがあると法螺を吹き、博士のことを一任してくれとハシンガー海軍中将に申し出る。カールも同席していたが、ヘルツォフに疑念を感じる。
ランドールは、一夜をアンナと過ごした振りをして翌朝、仲間の待つ郊外から空路で逃げる算段だった。しかし、夜中にドイツ海軍は、ボマッシュとアンナをミュンヘンに送ることを決定する。ランドールもカールとともに付いて行く。
ベルリン駅では、英国紳士チャーターズとカルディコットが同じ列車でミュンヘンに行こうとしていた。偶然ランドールを見かけ挨拶を交わすが、今はヘルツォフの振りをしてるので知らぬふりをする。カールはそれを見て一層疑いを深くして、ベルリン本部に身分照会の連絡をする・・・。

雑感

前半はアルフレッド・ヒッチコックの「バルカン超特急」の完全パクリである。というのも、「バルカン超特急」と本作のプロデューサーも制作会社も同じである。だから映画の権利を持っている者がその映画を再利用しようと全く自由なのである。ヒッチコックには、その権利はないのだ。

この作品は、戦争直前にデビッド・O・セルズニックに招かれハリウッドに移住して「レベッカ」を監督しアカデミー作品賞を受賞したアルフレッド・ヒッチコックがいなくても、これだけ面白い映画がロンドンでも作れるということを示しただけでも、英国の戦意高揚映画になっただろう。

筆者は、どちらを取るべきかと言われたら、「ミュンヘンへの夜間列車」を選ぶ。筆者は空想国を舞台にした話が嫌いだ。確かに「ミュンヘン」には脚本に穴がいくつもある。例えばベルリンから博士と娘が飛行機で逃げたとしてもすぐ空軍の追手が掛かり、スイスに着く前に戦闘機による銃撃で墜落するのは目に見えている。それでもランドールとカールの恋の鞘当ては、なかなか面白かった。さらに「バルカン・・・」より「ミュンヘンへの・・・」の方が国による政治や行政の姿を取り込んでいる。紅茶ばかり飲んでいる英国の政治スタイルより、ドイツの進んだ官僚政治の方が、必要な資料がどこにあるのか分からなくなるのは滑稽だった。しかし、自分の会社の書類だって、どこにあるか誰に聞くべきか分かっているだろうか。

ただし、キャロル・リードが車や戦車など動きのあるものを撮るのは苦手なのは確かなようだ。ヒッチコックの方がダイナミックだった。絵コンテからキャロル・リードは、地味な感じがする。

マーガレット・ロックウッド、ベイジル・ラドフォード、ノーントン・ウェインは、「バルカン」に続いての共演である。ロックウッドは、コンパートメントの老婦人が消えたと騒ぎを起こすが、みんなに頭がおかしいと思われる役だった。
ポール・ヘンリードオーストリア人だったが、戦前に英国に渡り演劇を学んでいた。開戦後、渡米を許され、「カサブランカ」ではイングリッド・バーグマンと行動を共にする反ナチ指導者ヴィクター・ラズロの役を演じた。(65)

スタッフ

監督  キャロル・リード
脚本  シドニー・ギリアット、フランク・ローンダー
原作  ガードン・ウェルズリー「Report on a Fugitive (1939)」
製作  エドワード・ブラック
撮影  オットー・カンツレック
音楽  ルイス・レヴィー

 

キャスト

アンナ・ボマッシュ  マーガレット・ロックウッド
ディッキー・ランドール  レックス・ハリソン
カール・マルセン大尉(ゲシュタポ)  ポール・ヘンリード  
チャーターズ(英国紳士)  ベイジル・ラドフォード
カルディコット(英国紳士)  ノーントン・ウェイン
アクセル・ボマーシュ(天才化学者)  ジェームス・ハーコート
ジョン・フレデリックス医師  フェリクス・エイルメール
チャールズ・ドライトン  ウィンダム・ゴールディー
ロバーツ  ローランド・カルヴァー
シュワブ  エリオット・メイクハム
カンペンフェルト  レイモンド・ハントリー
プラダ大尉  オースティン・トレヴァー
ハッシンガー中将  C・V・フランス

 

***

チャーターズは、偶然その電話を内線で聞いてしまった。同胞の危機にカルディコットが機転を利かせて、ランドールにトイレで危機を知らせる。ランドールは、二人に協力してもらい、ミュンヘンに着く直前にカールらゲシュタポを客室に幽閉する。そして自分たちは、ゲシュタポの制服を着て博士と娘とともに車でスイスとの国境に向かう。救出されたカールも車でランドールたちを追う。
ランドールは、山頂のロープウェイに着いた。しかし後ろからゲシュタポも追いかけてくる。ランドールは、ひとまず他の四人をロープウェイに乗せ、スイス側の駅に移らせる。その間、ランドールはゲシュタポを皆殺しにして、ロープウェイのハンドルを守らなければならない。もし逆に回されると、元の位置に戻されるからだ。四人がスイスに脱出したのを確認してから、ランドールはロープウェイに飛び込み、スイス側に移ろうとした。
しかし、カールだけは生き残っており、ハンドルを逆回転させてランドールをドイツ側に連れ戻そうとする。かなり二人の距離が近づき、再び銃撃戦が再開した。ランドールは、最後の銃撃戦でカールの膝小僧を撃ち抜いた。おかげでカールは立ち上がれなくなる。その間にランドールは、逆方向へ行くロープウェイに乗り移り、スイスとの国境に到着する。

ミュンヘンへの夜間列車 Night Train to Munich 1940 英ゴーモン=ブリティッシュ制作 20世紀フォックス製作・配給

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