インド・カルカッタを舞台に、貧しい人々に無償の愛を注いだマザー・テレサの生涯を描く伝記テレビ映画。
監督はファブリチオ・コスタ
主演は「ロミオとジュリエット」のオリビア・ハッセー
共演はミハエル・メンドルセバスティアーノ・ソマ

ストーリー

1946年、独立直前のインド・カルカッタ。
ここの修道院は、裕福なイギリスやインドの子女を教育する女学校を経営している。修道女をしているシスター・テレサは、困っている人は誰でも手助けする人だった。大怪我をしたヒンズー教徒を修道院に入れて院長を怒らせて、ダージリンの修道院に黙想に行かされる。
しかし、街へ出たシスター・テレサは、初めてカルカッタの貧困に喘ぐ姿を見る。当時のカルカッタは、イスラム教徒による東パキスタン(バングラデシュ)の分離独立運動によりヒンズー教徒の難民が到来して混乱を来していた。
カルカッタ修道院に戻ったシスター・テレサは、貧困層の救済活動を認めてほしいとローマ教会に願い出る。シスターの良き相談相手だったエクセム神父たちの努力でバチカンから許可が下りる。
シスター・テレサは、パトナの病院で足を切断されそうになっているアトゥル青年と、彼を救ったグプタ医師と知り合う。

修道院の女学生もスラムでの救済活動に興味を持つ。特にヴァージニアは、シスター・テレサを敬愛し、彼女の仕事を手伝う。シスターは、グプタ医師らにも協力してもらい、孤児教育や貧困病人の救済を開始する。シスターの地道な活動は徐々に世界中の人々に広まり、活動協力者や資金援助者が増えていく。
シスターはこの際、上流階級を相手にするカルカッタ修道院から分離して、新たな修道院を作りたい、と考えるようになる。その件は、エクセム神父を通してバチカンに申し出る。彼女の申し出を受け、セラーノ神父がバチカンから監察官として派遣される。
続いて、シスターは、宗教によらず瀕死の人が最期を迎えるためのホスピスを街の真中に作ろうとする。ところが、宗教の違いやカーストの違いに拘るヒンズー教徒市民からさまざまな嫌がらせを受ける。
シスター・テレサは、「神の声を聞いた、自分は神が持つペンに過ぎないと悟った」とセラーノ神父に語る。セラーノ神父は、この告白を好意的に受け止め、肯定的な報告をバチカンに送る。これによりバチカンから「神の愛の宣教者会」という修道院の設立許可が降りる。セラーノ神父は、マザー(修道院長)となったテレサを助けるために、カルカッタに残る・・・。

雑感

マザー・テレサと言う人は、スラブ系の北マケドニア人である。修道院で大人しくすることができず、隠者として引きこもることもできない人だった。彼女は、苦しんでいる人に直接、手を差し伸べて救済したかった。
そういうことをしたくても、お金が必要だ。ただの修道尼には予算が与えられない。しかし、彼女の類い稀な行動力は状況を変えていく。彼女の協力者や資金援助者が現れる。
しかし、旧体制の修道院に属していると彼女に対する寄付金は、修道院全体に対する寄付金と見なされてしまい、彼女の活動資金に回るお金はわずかである。
そこで、彼女はバチカンに働きかけて、自分が主催する修道院を作ってしまう。そして、孤児院、施薬院、ホスピスに加えてハンセン氏病患者の療養所まで作ろうとする。
ここが彼女の欲張った(強欲な)点である。彼女には、実行力はあったが、思いつきだけで計画性が根本的に欠けていた。従って、この肥大化した組織の中でさまざまな問題が起きる。

そのおかげで、エクセム神父は亡くなるし、助手のイギリス人アンナは病に倒れる。またローガン事件では愛弟子も離反していく。セラーノ神父は、彼女の一途さに危うさを感じたからこそ、右腕として手腕を振るったのである。そうやって彼が作ったアメリカ信徒会も1995年には彼女が解散騒動を起こす。

これは、マザー・テレサに状況を評価し計画する力が欠けていて、周りの人々を過度に巻き込んでいったことの暗喩である。
彼女は「組織なき幸せ」を説いた。その意味は「自律的な組織」を指しているが、自律性組織は彼女の意に沿った組織にならない。国や時代、状況によってニーズは違うのだから。

だから、彼女は何か一つの事業に打ち込むべきだったのである。
この映画を見て、彼女の闇の部分が描かれていないという人が何人かいるが、筆者はそんなことは全く感じない。彼女に対する否定的意見を理解した上で、両面から見られる映画として製作されたと信じる。

オリビア・ハッセーは、アルゼンチン生まれのイギリス美人女優だ。美貌の割にイタリア映画「ロミオとジュリエット」以後の出演作品に恵まれたと言えない。だから、美貌も枯れかけた52歳でこの作品に出演して、非常に喜んでいたという。個人的にも、名演だったと思う。彼女は、テレビ映画「ナザレのイエス」で母マリアも演じている。

スタッフ

監督  ファブリツィオ・コスタ
製作総指揮  アンセルモ・パッリネッロ、マイケル・コーワン、ピエトロ・ディオーニ、ジェイソン・ピエット
製作  ルカ・ベルナベイ、ピート・マッギー
脚本  フランチェスコ・スカルダマグリア、マッシモ・チェロフォリーニ
撮影  ジョヴァンニ・ガラッソ
音楽  ガイ・ファーレイ
衣装デザイン  フルヴィア・アメンドリア

 

キャスト

マザー・テレサ  オリヴィア・ハッセー
セラーノ神父(ヴァチカンからの監察官)  セバスティアーノ・ソマ
マザー・スナークル(カルカッタ修道院長)  ラウラ・モランテ
ヴァン・エクセム神父(マザー・テレサの相談相手)  ミハエル・メンドル
ヴァージニア(シスター・アグネス)  イングリッド・ルビオ
アンナ(助手、のちにロンドンに帰る)  エミリー・ハミルトン
グプタ医師  ケネス・デサイ
ローガン(平和の村のための資金提供者)  フィリップ・ジャクソン

***

1965年マザー・テレサは、カルカッタのテイタガール地区にハンセン病患者療養所「平和の村」を建設しようとする。そのために、莫大な資金を必要とした。ところが、資産家ローガン氏がその資金を全額寄付してくれる。
ところが教会への申請書類に不備が見つかり、マザー・テレサはローマへと飛ぼうとする。航空運賃は足りなかったが、かつての教え子が航空会社部長をしていたため、フリー・パスをもらう。マザー・テレサは教皇と直接面談し、書類を揃えてもらうことができる。
しかし、日々の苦労のせいでマザー・テレサは心臓病で倒れる。退院した彼女は、安静を医師に望まれるが、休もうとしなかった。

「平和の村」の建設作業は再開された。セラーノ神父は、活動を組織化して利便性を追求すべきだと考える。しかしマザー・テレサは、シンプルな方法を好んで「組織なき幸せ」を唱える。
ローガン氏がマザー・テレサを利用して詐欺事件を起こした。「幸せの村」への寄付金は、被害者から集めたお金であることが判明する。マザー・テレサは、マスコミから追われて苦しみ、古参のシスターも辞めていく。
さらに、マザー・テレサは孤児院で里親との養子縁組を行なっていた。子供の名前が実際のものと一致しなかったため、人身売買疑惑が持ち上がる。警察も介入して騒ぎが大きくなるが、単純な誤解だとわかる。
マザー・テレサは、1979年にノーベル平和賞を受賞する。しかしその後、再び過労による心臓発作で倒れ、緊急手術を行う。エクセム神父は「代わりに自分の命を差し出す」と神にひたすら祈り続ける。その結果、マザー・テレサは助かるが、エクセム神父は亡くなる。
結局、1997年にマザー・テレサは亡くなりインド国葬によって葬られ、2003年にローマ教会から聖人として列聖された。

 

マザー・テレサ Mother Teresa (2003) LSGプロ製作 伊テレビ映画 東芝エンタメ国内配給[2005] 52歳のオリビア・ハッセー主演作

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